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[読書メモ] 日本型プラットフォームビジネス / 小宮昌人、楊皓、小池純司

日本型プラットフォームビジネス

海外メガクラウドのプラットフォーマーから遅れをとっている日本のプラットフォームビジネスにおいて、ゼロからプラットフォームビジネスを構築するだけではなく連携と協創も含めたビジネスモデルの基本型パターンが掲載されている。国内の大企業におけるプラットフォーム戦略の進め方の事例や、中小企業のプラットフォームビジネスの事例などは特に参考になる。

プラットフォーマーとは、「需要者であるユーザーに対して直接サービスを提供するのではなく、ビジネスの基盤となるサービス・システムを供給側に提供するプレイヤー」のことである。

日本型プラットフォームビジネス|P.16

説明本書におけるプラットフォーマーの定義。プラットフォーマーは、需要者と供給者をマッチングするための基盤(プラットフォーム)を提供するプレイヤー。

プラットフォームビジネスについては、<中略>「供給者(サプライヤー)やその他ステークホルダー(エコシステム)による、需要者(ユーザー)へのビジネス提供の基盤を担う存在」と定義する。

日本型プラットフォームビジネス|P.22

プラットフォーマーというプレイヤーの関係者(ステークホルダー)には、供給者(サプライヤー)、需要者(ユーザ)に加えて、エコシステムを形成するパートナーが存在するということ。
自然界で受粉する花の周りには、太陽や風、昆虫などの様々なステークホルダー(パートナー)が存在することと同じ。

成長段階においては、むやみに量を追うのではなく、サプライヤーの質の担保が重要になってくる。

日本型プラットフォームビジネス|P.25

供給者自身の質、あるいは供給側のサービス品質の向上が重要ということ。例えば、YouTubeであればコンテンツの提供者とコンテンツそのものの質が高くなければ、需要者は増えないし継続的に利用しない。APIやデータを提供するプラットフォーマーであれば、魅力的で価値の高いAPIやデータの質が重要になる。

① 自社プラットフォーム展開
 セグメンテッド・プラットフォーム戦略
② 既存プラットフォーム連携
 (1)製品・サービス連携(チャネル連携)
 (2)製品・サービス連携(顧客化連携)
 (3)アプリケーション・機能連携

日本型プラットフォームビジネス|P.45

大企業のプラットフォーム展開の発想は、①しかないと思いがちだが、エコシステムの作り方次第では②の戦略も有効に機能する。一方で、②の戦略は参入の仕方を間違えると、既存プラットフォーマーと従属関係が生じてしまう恐れがある。

想像を超えるスピードと規模で拡大・成長するメガプレイヤーに対し、規模や投資力で勝負するのは限界がある。<中略>彼らと同じレイヤー(階層)で戦うのではなく、自社が競争力を持てる領域、メガ企業とのすみ分け領域を定め、戦略的に展開していくことが求められる。

日本型プラットフォームビジネス|P.53

・GAFMA(ガフマ):Google、Amazon、Facebook、Microsoft、Appleの頭文字をとった米国のメガ企業のこと。GAFAM(ガファム)ともいう
・XaaS(ザース):X as a Serviceの略。クラウドによって提供されるサービスの総称

メガ企業(GAFMA)は良くも悪くも特定の業界にフォーカスせずに、業界レスで汎用的なXaaSを提供している。つまり、汎用型と特化型(例えば業界特化型)の中間点に位置する機能やサービスを提供できるプラットフォーマーであれば十分生き残ることが可能。

価値提供の方向性の探索アプローチの視点に触れたい。
・コアと捉える顧客層の課題は何か
・それは自社と顧客の関係性のなかで解決が可能なのか。業界全体の複数プレイヤーにまたがる課題なのか。
・その課題において存在している各プレイヤー間の「ギャップ」「分断」は何か
・それを解決するために必要な情報・データは何か
・これらの必要な情報・データを提供する手段は何か

日本型プラットフォームビジネス|P.65

・セグメント(Segment):グループや部分に分けること

セグメンテッド・プラットフォーム(特定領域のプラットフォーム)では、特定領域におけるプレイヤー(供給者、需要者、エコシステムパートナー)の見極めが最重要。さらにそのプレイヤー間のギャップをつなげる触媒として「データ」が存在している点に着目したい。

プラットフォームビジネスは、需要者が増えれば増えるほど供給者が集まり、同様に供給者が増えるほど需要者が集まるサイクルが生まれるビジネスである。

日本型プラットフォームビジネス|P.78

供給するモノ・サービスがなければ需要者は集まらないから、起点となるのは供給者である。また、供給者は需要者が居なければ集まらないから、必然的にプラットフォームビジネスの初期フェーズではプラットフォーマ自身が供給者を兼ねる必要がある。

日本企業は往々にしてコア技術やアイデアを囲い込みがちである

日本型プラットフォームビジネス|P.88

・オープン戦略:自社の独自技術を標準化・規格化し、他社に自社技術の利用を積極的に促す戦略
・クローズ戦略:自社の独自技術を秘匿化し、競争優位性を確立する戦略の

モノ売り主体の経済圏ではクローズ戦略が機能することが多かったので、モノ作り大国の日本ではクローズ戦略の方が馴染み深い。コト・サービス売りが主体の経済圏、特にプラットフォーマーは自社技術の積極的な利用を普及させるためにオープン戦略を主軸にした方がうまくいくことが多い。

プラットフォームビジネスは必ずしもサービスの需要者(ユーザー)から収益を得る必要はない。誰から収益を得るかを設計する際のポイントは、誰が最も資金を持っていて、プラットフォームから得られる便益に対価を支払う財力があるかを見極めることである。

日本型プラットフォームビジネス|P.100

プレイヤー(供給者、需要者、エコシステムパートナー)のどこから収益を得るかのビジネスモデル設計が重要。特に需要者に関しては、プラットフォーマーから見たときに「直接的な需要者」と「間接的な需要者」が存在する。一般的に、直接的な需要者に財力があるとビジネスモデル設計がシンプルになるが、直接的な需要者にとっての価値や便益まで含めてビジネスモデルを設計しないと、プラットフォームビジネスが継続できなくなる恐れがある。

ドローンサービスは各国において規制の強弱が異なり、かつ産業特性・ニーズが異なる。

日本型プラットフォームビジネス|P.116

国内においても、過疎化地域などの無人区間においてドローン飛行の規制緩和が進められている。規制緩和された地域で実績・ノウハウを蓄積して、徐々に日本全土に適用されていくことが期待される。

参考資料:ドローンのレベル3.5飛行制度の新設について:国土交通省

顧客のニーズに合わせてカスタマイズすることは、日本企業の強みではあるが、その共通項を見つけて標準的なソリューションに仕立てることを苦手とする企業は多い。個社に合わせたカスタマイズに力を入れすぎるあまり、コストが高くなってしまったり、複雑なオペレーションにより横展開が難しくなってしまうことがある。

日本型プラットフォームビジネス|P.120

この日本企業の強みが裏目に出て、ソリューションやサービスのサイロ化(情報やシステムが孤立し共有・連携できていない状態)が散見される。
プラットフォームビジネスは技術が「普及」し展開されることが重要なので、サイロ化してしまったシステムではプラットフォームビジネスは出来ない。

各国における主要ECプレイヤーをチャネルとして押さえることは、今後の展開において重要なアクションとなる。

日本型プラットフォームビジネス|P.137

・EC(Electronic Commerce):電子商取引のこと

プラットフォームビジネスを海外展開する際に考慮すべきポイント。資生堂がアジア展開する際には中国のアリババと戦略業務提携し、EC事業のチャネルを活用している。

プラットフォームを顧客として捉え、製品・サービス展開を行っていくうえでのポイントとしては次の3点が存在する。
ポイント① 圧倒的な購買力を活用せよ
ポイント② バリューチェーンの徹底分析で提案余地を見つけよ
ポイント③ コアサービスを作り込み、横展開せよ

日本型プラットフォームビジネス|P.155

既存のプラットフォーマーを需要者(顧客)と捉えた場合、プラットフォーマーにとって需要のあるものは、プラットフォーマーが持っていない機能とデータである。ポイント②では、その機能とデータを特定し、ポイント③でその機能とデータを展開可能な形にする。具体的には、データの品質を上げたり機能をAPI化して利用しやすくする。

コアとなるプラットフォームと連携の「標準型」を作り込む必要がある。多くのプラットフォームとの連携ができるように標準化を行い、その標準型を横展開していくのだ。

日本型プラットフォームビジネス|P.169

プラットフォーム連携の「標準型」は、連携したい側が「標準型」に合わせる必要がある。従って、必然的に連携したい側は複数の「標準型」の接続方式(インターフェース)をサポートしなければならない。
複数の接続方式をサポートするための開発には莫大な工数とコストが必要になるため、最初に連携するコアプラットフォームを定めて連携したのち、ビジネスが軌道に乗ってから次のアクションを考えるのがよい。
ビジネスが軌道に乗ってくれば、複数の接続方式をサポートしなくても相手側が接続方式を合わせてくれる可能性もある。

多くの企業でモノ売りからコト売りへの転換、サービス化が求められている。その手段として有力なのが、自社ノウハウをアプリケーションとして他社に提供することである。

日本型プラットフォームビジネス|P.175

需要者やプラットフォーマーにとって価値のあるものは、他社にはない機能とデータである。自社ノウハウをアプリケーション化、すなわち機能やデータとして提供できればビジネスが成功しやすい。

シーメンスのマインドスフィアにおいては、エコシステムのカテゴリーを<中略>定義している。各カテゴリーのプラットフォームが相互にウィンーウィンになる形で機能することにより、マインドスフィア全体が高度化していくことを目指している。

日本型プラットフォームビジネス|P.186

エコシステムパートナーのカテゴライズ(分類)はとても参考になる。コンサルティング/戦略提案するパートナーや、共同開発者など、プラットフォームに関わるステークホルダーにとって如何に価値を提供できるかがプラットフォームビジネス成功のカギとなる。

プラットフォームビジネスは新しいコンセプトであるため、従来のビジネスと比較して明確な判断軸が少ない領域である。全社としての意思決定権限がない担当者が、各種の調査・分析を行っても、結局、方向性を打ち出せず、頓挫するということが頻発している。

日本型プラットフォームビジネス|P.206

これは中小企業、大企業を問わず起こりうる事象。意思決定権限のある経営者自らがプラットフォームビジネスを推進する企業だけが、新たなコンセプトを実現するための第一歩を踏み出すことができる。

重要なのは何を実現したい(V:提供価値)と考え、誰と(S:エコシステム)、どのような形態(P:プラットフォーム展開/連携)でビジネスを「行いたいか」という意思なのである。

日本型プラットフォームビジネス|P.220

端的に重要なことは「何を実現したいか」という「意思」であるということ。誰とどの様に行うかは手段であり、「何かを実現する」ためにプラットフォームという形態を利用することが強力な触媒になりうる。

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