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[書評] プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える -6/6-

THE STORY FACTOR(6/6)

前回に引き続き、ビジネス書籍の プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える を紹介していきます。この最終回ではこれまでに紹介した内容を踏まえて、全体を通じて重要だと感じたポイントを中心に総括していきます。

ストーリーを語るには土台が必要

相手と話すときに最も重要なのは、説明や説得をする際の言葉の選択や、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングのようなテクニックに頼りすぎないことだと思います。これらのスキルセットよりも、話す相手に興味を持つことや、自分と異なる考え方を認められなくても理解だけはできるようにすることが大切です。
人間も動物なので、他の動物と同様に自分以外の生き物には少なからず警戒心を持っています。まずはこの警戒心を和らげるために、ストーリーのきっかけになる情報をしっかり収集して、相手との信頼関係という土台を築くことが重要です。この信頼関係という土台が無いままでは、どれだけ説得力のある内容でストーリーを語っても受け入れてもらえないことが多いです。それほどに信頼関係という土台は大事なものです。

信頼関係を形成する要素

信頼関係を形成する要素は様々です。家族のような血縁に依るところもあれば、先生と生徒、上司と部下のような関係性に依ることもあると思います。このような立場的な関係性はアドバンテージにもディスアドバンテージにもなりえますが、信頼関係はさらに複雑な要素がたくさん絡み合ってきます。お互いの精神的な成熟度が関係することもあります。子供の頃に仲の悪かった知人同士が大人になってから仲が良くなるケースも、お互いの成熟度に依るものです。
信頼関係を良くするためのヒントは、話す相手に興味を持つことが全てであるといっても過言ではありません。子供の頃にどのような生活をしていたか、趣味や嗜好は何か、最近どのような出来事がその人にあったかといった情報から、その人の価値基準を類推することもできます。
また、信頼関係は「好き」「嫌い」とは必ずしも直結しません。つまり、人として好きだからといって全面的に信頼できるわけではなく、逆に嫌いだからといって全く信頼できないわけではありません。「人は良いけど、仕事は任せられない」というタイプが前者の典型的な例です。
相手が自分の性格と合わないと嫌いになってしまうことはある程度は仕方がありませんが、たとえ嫌いな相手であっても観察と興味だけは怠らないことがとても重要です。良く知ることで意外な共通項が見つかって、相手のことを好きになる可能性もあります。信頼関係は短期間で形成されることはほとんどありません。始めて出会った人でも、お互いを良く知ろうとし合うことによって少しずつ信頼関係が形成されていきます。
ストーリーを語るときも土台がしっかりしていない状態では相手に上手く伝わらないことが多いので、まずは信頼関係という土台を自ら築きにいくことが、何よりも大切だと思います。

自分と相手のストーリーを同期させる

信頼関係という土台が形成していくためには、相手の考えと自分の考えをシンクロナイズ(同期)させることが重要です。シンクロナイズの手がかりは、言うまでもなくお互いの共通項です。同じ土地、同じ学校、同じ趣味、共通の知人といった、共通の価値観を見出していきます。
初対面の会話で天気の話をするのはシンクロナイズが不十分になる例です。これは、両者が理解できる内容ではあるものの共通の話題には発展しづらいからです。これに対して、初対面で共通の話題、例えば同じ出身地の話をすると会話がはずみます。さらにお互いの共通項を連鎖的に発見する手がかりにもなります。私自身も、同じ出身校、共通の知人、共感できる出来事といったような共通項を次々と見出すことで、良好な信頼関係を築いた実体験があります。共通項で同期された信頼関係は持続力を持ち続けるので、ストーリーを受け入れてもらえる可能性が格段に上がることが実感できます。
共通項で同期する機会を増やすためには、ストーリーテラー自身の興味も増やしておく必要があります。出身地や出身校は容易に増やすことができませんが、趣味や興味を増やすことは比較的簡単です。すぐに飽きてしまっても構わないので、日々色々なことに興味を持ったりチャレンジしたりすることで、相手とシンクロする機会を増やせるようにしておくと良いと思います。

おわりに

ストーリーテラーは信頼関係の構築が重要であることを繰り返し述べましたが、常に自分以外の人に対して敬意を持ち続けたり、興味を持ち続けたりすることは実践してみるととても大変で苦労すると思います。また、すべての相手に対してストーリーを伝えることを成功させることも事実上は困難です。話し手も聞き手も同じ人間なので、一定の歩み寄りがない中で話し手ばかりが信頼関係の構築の努力をして気苦労するのもフェアでは無いように思います。
ストーリーテラーを目指す皆さんは、気を遣い過ぎたり無理をし過ぎないように、自分自身のメンタルケアを最優先に考えながら目指してい欲しいと思いますし、私自身もバランスを崩さないようにこれからも精進していきたいと思います。


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