強い「文化」が無ければ、寄せ集めのスター軍団はワークしない。|レアル・マドリードの文化
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強い「文化」が無ければ、寄せ集めのスター軍団はワークしない。|レアル・マドリードの文化

Kenji Tomita | Runtrip取締役

スペイン屈指のフットボールクラブチーム
「レアル・マドリード(Real Madrid)」
の名を聞いたことがない人はほぼいないだろう。

当然その名声は、クラブチームとして次のような圧倒的実績に裏付けられている。

・チャンピオンズリーグ優勝回数:11回(1位)
・スポーツチーム収益ランキング(2014):751億円(1位)
・ユニフォーム売上ランキング(2013-14):158万枚(1位)
・ソーシャルメディア人気度ランキング(2015):総フォロワー数約1億人(1位)

そんな唯一無二のクラブチームの、アウトフィットを如実に表しているのが「銀河系スター軍団」というコピーだ。

このコピーに恥じぬ通り、彼らは常に、時に強引で膨大な移籍金のやりとりで名だたるスター選手を獲得してきた。

では彼らが世界で勝ち続ける理由、世界ナンバーワンのスポーツチームであり続ける理由は、銀河系と称されるスター軍団のおかげなのだろうか?

そんな素朴な疑問に、初めてレルマドリードに長期密着を許され、その強さとブランドの源泉を解き明かした本書「THE REAL MADRID WAY」は力強くNOを突きつける。詳細を語る前に、核心を引用しよう。

資金力はもちろん重要だ、才能溢れるスター選手たちも然り。
しかしそれらはすべて「脇役」にすぎない。
マドリードの首脳陣はピッチ内外で最高のパフォーマンスに寄与するのは「チームの文化」だと信じている。
彼らにとって「文化」とは、共通の使命のもと、全員が無私無欲に尽くし、同じ目標を見据えて邁進することを意味する。

名だたるスター軍団の採用、チームビルディングに育成、ブランド構築とファンマーケティング。イマドキの企業が向き合うあらゆる企業/組織課題に「文化」という強力な接着剤を武器に結果を出し続けているのが"レアル・マドリードという組織"なのだ。このnoteでは本書のエッセンスを紹介をいくつか紹介しつつ、詳細はぜひこちらを熟読頂きたい。

先ずミッションとバリューを明確にする

卓越した多くの企業がそうするように、フットボールクラブチームであるレアル・マドリードもまた、その果たすべきミッションと、それを実現する上での価値観を明確にしている。近代レアル・マドリード繁栄の立役者、フロレンティーノ会長はサッカー経験者では無かったが、ACSという大企業の経営者だ。暗黙には存在していたミッション&バリューを可視化し、すべてそれに基づいて背骨を通したのが彼の功績だという。

ミッション
オープンで多文化的なクラブを目指し、競技における成功とクラブの価値観によって、世界に認められ、評価を得られるよう、ピッチ内外で卓越性を追求し、ソシオとサポーターの期待に沿うべく貢献を続ける。

バリュー
・スポーツマンシップ
・卓越性と資質
・チーム哲学
・育成
・社会責任
・経済責任

そしてクラブのリーダーたちはこう断言する。

文化こそが複雑な組織を結束させる接着剤であり、コミュニティの価値観の上に成り立つ文化が、強靭な絆とインスピレーション、パワー、パッション、アイデンティティの源泉だと信じている。

ミッション&バリューは、彼らにとって「組織のプレーブック」だとも表現しているのが彼ららしい。

ただ勝てば良い、ではない。

強い文化は、山の登り方を選ぶ。

目指す頂上は一つでも、価値観に合わないルートは決して選ばない。

レアル・マドリードは勝ち方を選ぶ。ただ勝てば良い、とはチームもファンも思っていない。彼らが大切にするのは攻撃的でエレガントなサッカーであり、それを体現した上で勝つ。対戦した相手には最大限のリスペクトを持って接する。

クラブが何より重要視するのはコミュニティメンバーに対する奉仕であり、彼らが求める価値観の体現だ。その理想を体現し、実現し続けるからこそ、より深い情熱と愛情で世界中にファン(コミュニティ)が広がっていくと信じている。

レアル・マドリードの首脳陣は、コミュニティメンバーとファンの価値観と期待を戦略の中心に据えた。

この「文化」に対する一貫性はそう簡単に真似できるものではないが、彼らの実績や歴史が証明している。

どんなスター選手でも、カルチャーフィットしなければ採用しない

「銀河系スター軍団」という響きからは一見想像がつかないが、実はスキルや実力だけでは彼らは採用をしない。むしろ高いポテンシャルと実力は大前提、その上で最重視しているのが彼らの価値観、文化にフィットするかという点だ。

監督とテクニカルスタッフは選手の人格と価値観を精査し、レアル・マドリードにふさわしい人材かどうかを判断する。確かな実績を前にすると、価値観の不適合も正当化し、獲得に踏み切ってしまう恐れがあるため、会長には豊富な人事経験を求める。

当然、移籍後どんなに高いパフォーマンスを発揮しても、文化にそぐわなければ放出の対象となる。

ピッチ内外にかかわらず、選手の行動がコミュニティの価値観から逸脱していると判断された場合、高い確率で「交代」の処置がとられる。好ましくないのは、労働倫理の欠如、クラブの顔としての自覚の不足、ドレッシングルームでの諍い、クラブに脅威となる行動や要求だ。

もちろん、それでも「スター選手獲得」の価値が下がることはない。彼らは優秀なスター選手ほど、重圧のかかる大一番で得点できると信じている。サッカーにおける得点の希少性を考えれば、莫大な移籍金は妥当な投資であると判断しているのだ。

つまり優秀なだけでは採用しないが、大前提高いパフォーマンスを期待できる選手でないと、世界一のクラブチームでは重要なピースを担うことはできない。パフォーマンスにも、文化にも、とにかく妥協しないのが世界一のクラブチームの強さの源泉と言えるだろう。

文化の伝承者は移籍するスター選手ではなく、生え抜きのヒーロー

多くの企業が新卒採用を通じてカルチャーを構築していくように、レアル・マドリードも文化の伝承において所謂「生え抜き」選手の育成と雇用を徹底している。

レアル・マドリードには「カンテラ」と呼ばれる下部組織が存在する。多くが10代前半で入団し、そこで育った生え抜き選手がチームメイトに対する規範となるのだ。

2014年のチャンピオンズリーグ決勝に挑んだ25名(28%)のうち7名はカンテラ出身だ。彼らはクラブが新しく迎えたメンバーたちと、レアル・マドリードの精神と期待を共有し、クラブの歴史と真髄をピッチの上で体現する。

彼らが目指すのはカンテラ出身者と新参選手との融合であると断言する。「カンテラ出身者と世界のトッププレイヤーの共演」というコンセプトがぶれることはなく、「文化のベテラン」がいかに強い組織を作る上で重要かを熟知しているのである。

そして、生え抜きの活躍にはこんなおまけがついている。

地元から排出された才能は、コミュニティの情熱に火を点ける。

報酬は、文化の体現に報いる。

クラブチームの選手は当然パフォーマンスに依存するが、一般従業員においてもクラブチームのミッション&バリューの実行と献身度において評価される。

バランススコアカードに基づき、組織の目標達成度も当然重要な指標となるが、他の卓越した企業と同じく、彼らも「文化の体現者」に対して報いるという強い意志を目に見える仕組みや報酬体系として導入しているのだ。

「タレント過剰性」と向き合う

興味深いデータが引用されている。コロンビア大学の研究によると、NBAにおける2002年から2012年までの統計分析、チームの協調性観点などにおける定量分析の結果、

「スター選手投入によるチームパフォーマンスの上昇には限界があり、その限界を超えるとチームの協調性が乱れて障害を起こす」

というのだ。この「タレント過剰性」に対して、レアル・マドリードも実体験として失敗を経験し、向き合ってきた。そのリアルな学びの本質も、、やはり「文化」が打開の突破口となった。

組織内に確固たる文化と共通の価値観があれば、「タレント過剰性」を最小限に抑え、解消できる。共通の文化は、ステータスを巡る争いから当事者の注意をそらし、包括的な組織の目標に集中させる役割を果たす。

つまり、スター選手にありがちな自己顕示欲によるマウンティングが減り、協調性が生まれるという論理だ。また、特に次の3つがこの「タレント過剰性」の抑制の繋がるともまとめている

1.監督の資質を見極める(ディレクターのカルチャーフィット)
2.スター軍団を牽引するリーダーを育てる
3.会長は一貫して価値観を忠実に守る (トップマネジメントのカルチャーフィット)

最後に

同種、同質で身近な成功事例は心理的にも取り入れやすいが、異種、異質な業界や組織にも存在する「共通項の本質」を見つけ出す方が、個人的には意義深く、学びの深さとして腑に落ちる。

世界一のスポーツクラブから学べることは、まだまだ奥深いかもしれない。





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