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全プレママ&パパに届けたい、妊娠・出産とマイクロバイオーム全まとめ(腸内細菌、膣細菌を中心に)

このページでは、妊娠・出産とマイクロバイオーム(主に腸内細菌や膣細菌を中心に)についてわかりはじめていることをまとめていきたい。

これから妊娠を希望する人、妊娠している人、身近に妊娠している人がいる人に届くことを祈って。

今日から5回にわけて、順番に公開していきます。ちょっとずつ、読んでください。


・本文中のカッコ付き番号は、記事下部の参考文献の番号を表しています。
・用語解説はこちら(随時更新)
・主要記事マップはこちら(随時更新)

はじめに

私たちヒトは動物の一種である。
その事実は当たり前のようでもあり、驚くべき事実であるようにも思える。
今の私たちは、ヒト以外の生き物をほとんど見ないままに一日を終えることすらできる。

けれど、私たちはやはり動物であり、だからこそほとんど自然な流れとして妊娠と出産を繰り返してきた。

危険の多かった妊娠と出産

子孫を残すこと。
それはごく当たり前の行為であり、長いあいだそこに理由はいらなかった。それよりも、妊娠や出産に伴う危険のほうがより大きな関心ごとだった。

出産は母親にとって文字通り命がけだ。
ヒトは他の哺乳類と比べて難産だと言われるが、その理由には直立二足歩行であることや脳が大きいことが知られている。平安時代には、出産に臨んだ女性の半数近くが命を落としたという。

難産であることと同じ理由で、ヒトの赤ちゃんは未熟な状態で生まれてくる。
本当はもっとお腹の中にいるほうがいいのだけれど、それ以上妊娠を継続することが不可能なのだ。他の哺乳類と比べると、かなりの早産といえる。

赤ちゃんが未熟な状態で生まれるということは、生まれてから命を落とす危険もそのぶん大きくなるということだ。
赤ちゃんが生後一年のあいだに死亡する確率は今では考えられないほど高かった。
結果として、狩猟採集時代のヒトは繁殖可能年齢のあいだにできるだけたくさんの子どもを産み、その期間が終わった女性も子育てに加わることで命をつないできた。そのような協力関係が、そのまま社会の形成につながった。

厚生労働省による日本国内のデータでは、1940年時点での乳児死亡率は10%もあった。おじいちゃんやおばあちゃんには、7人も8人もきょうだいがいて、そのうち1人か2人は子どものうちに亡くなったというエピソードを聞いたことがある人もいるかもしれない。

妊娠と出産は安全になり、選択肢に変わった

その後、乳児死亡率は1977年に1%を下回り、現在では乳児死亡率が0.4%、新生児(生後一ヶ月以内)死亡率が0.2%となっている。
出生率は戦後急速に低下した。これは、たくさん子どもを産まなくても、産んだ子が無事に育つ確率が上がったからだと言えるかもしれない。

もちろん、胎児が子宮内で死亡したり、分娩時や産後すぐに赤ちゃんが亡くなるケースもある。
筆者自身、子宮内胎児死亡を経験している。

現代では世界人口が指数関数的に増え続ける一方、日本を含む先進国では出生率が低水準で推移している。
子どもを持つことによる経済的、社会的なコストが上がり、出産の高齢化による不妊などの要因が重なって「産みたくても産めない」時代になった。子どもを持つことをお金持ちの特権だと考えている人すらいる。
さらに、生き方が多様化することにより、ポジティブな理由から子どもを持たないことを積極的に選ぶ人も増えている。

妊娠や出産は、多くの危険を孕んだ動物としての当たり前の営みから比較的安全な営みに変わり、さらには生き方の選択肢の一部にまでなった。

妊娠や出産が安全になった理由は、医療の発達によるところが大きい。妊娠中の母親はかつてより栄養状態がよく、丁重に扱われるようになった。
出産は衛生的に行われ、リスクがあれば帝王切開や出産時の抗生物質投与が行われる。
早産でも助かる子どもが増え、生後2ヶ月からあらゆる感染症へのワクチン接種がはじまる。

このようにして、ヒトの出産はとても効率が良くなったのだ。
もはや、産んだ子どもが死んでしまう前提で子をたくさん産む必要はなくなった。どちらかといえば、ヒトが増えすぎて困っているくらいなのだから。

ここで質問。
もはや妊娠と出産は飛行機旅行と同程度には安全なものであり、現代医療の介入するデメリットはどこにもないのだろうか?
この質問に対する答えは、動物たちの出産にヒントを得ることができる。

来週から1つずつ公開していきます。
ヒトの腸内細菌は、乳幼児期が基礎になります。
どうか、どうか、ちょっとでもいいので読んでください。

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