見出し画像

読書メモ|ロボットとは何か

実在の人物、とくには自身そっくりのアンドロイドを作ったことで有名な研究者、大阪大学教授 石黒浩氏の著。人間型ロボットをつくる理由。これまで(本書の発行は2009年)どのようなロボットをつくり、何がわかってきたか。

“製品の開発と人間に対する理解が同時に進行する”(p.21)のとおり、人間らしいロボットをつくる技術は、「人間とは」「心とは」という哲学の問いと密接に絡む。ロボットをつくることつかうことは、ロボットを介して人間を知ろうとすることでもある。

“自分の体の反応を解釈するのは、他人の表情を見て、他人の感情を推察するのとよく似ている。”(p.139)

自分のことも他人のことも表面的にしか認識できない。自分について、何を知覚してどう解釈しているのか考えるとぼんやり、感覚ははっきり。それでも確かに「自分」を疑わず実感できるし、推察された自分の感情からは逃れられない。ふしぎに思うような、とうぜんと思うような。

他人については、何を知覚しているかは意識しやすく、まだ想像しやすい。それでもどうして「嬉しそうに」見えたか、「怒っているように」見えたか、よくはわからず、やはりふしぎにも思う。

“ロボットが心を持たないとしても、その仕草に心を感じることはできる。”(p.5)

平田オリザ氏の演技指導が興味深い。オリザ氏は“心があるように見える動作”を指導する。指示通りに動けば心を表現できる。

嬉しいことを伝えるには、嬉しいと思うことより、嬉しそうに見える動作をすることが有効。自身の動きがどう見えるか、どう見せるべきか。客観視できると有利そうである。

画像1

その他おもしろかったところメモ
・自分の動きとそっくりの動きをするロボット、ほかの人はそっくりと言い、自分はそうとは思わない話。
・自分の声を0.5秒遅れで聞かされると喋れなくなる。0.5秒遅れの声と遅れのない声とを重ねて聞かされると喋れる。後者だけ聞く。
・アンドロイドの頬をつつかれたときのその操作者の感覚。操作者を知っているときに起こりうる反応。

・p.136あたりの、二台のロボビーの話。LOVOTを連想した
・p.170“「人間として最低限の見かけを持っていれば、…人間関係を媒介できる可能性がある。”“目と口と少しだけ動く手のようなものがあれば、あとは必要ない”、OriHimeを連想した
(本書は2009年刊行、OriHimeの約5年前、LOVOTの約10年前)


この記事が参加している募集

読書感想文

猫殿のおもちゃ、食べ物。たまに人のお茶や資料代になります。ありがとうございます!