Whispers
いつもと違う短編、2編目です。稚拙で読みにくいと思うので、『まぁ、暇だし読んでやってもいいかな。』という時に見ていただければ幸いです。暇さえ無駄遣いさせてしまうかもしれませんので、あらかじめお詫び申しあげます。ごめんなさい。
甘ったるい香りの静かな朝が、街全体を包んでいる。風の吹かないその街は、水面が揺らぐこともない。静かさが透き通るほどなので、鳥も鳴くことを恐れているかのように、ただ枝木にたたずんでいた。
僕の肌にペッタリと貼りつく木綿のシャツは、もはや心地よさなどとは無縁のもののように思える。君のヘンプ製の上着が紡ぐ微かな衣擦れの音が、鼓膜をさらさらと刺激していた。
『昼間はバイクが通るのにね。』
わずかに開いた唇から、優しく漏れる君の音を聞いて、気をとられた僕はただ『うん。』としか言えなかった。
ただ歩いた。ふたりで歩いて、どこに行くのかさえ曖昧な雰囲気を、宝石のようにまとっていた。
僕は池に反射する光を、浮かんでいる蓮の花が吸い込んでくれやしないかなと考えている。だって、あまりに野暮で失礼じゃないか。こんな所にまで、ついて来なくたっていい。
(いつだって良いとこ取りなお前が、本当に憎らしいよ。)
光にはかすりも刺さりもしない思いを、苦々しく左目頭から右目尻まで満たして、キラキラする水面に投げつけてやった。
いつも歩道橋の下から、君と光の交わりを見せつけられているのは僕なんだ。反射なんて卑怯な真似をしないで、たまには僕らのかするほどの触れ合いを、遥か上から見つめていればいい。
君の首からかけられているカメラのファインダーの中、平然と収まる光に我慢ならなくなった僕は、囁くように髪に触れた。
『なに?どうしたの?』
振り返る君の下まつげあたりに向かって、出来るだけ小さく、でもはっきりと伝えた。
“光が消える瞬間を撮って”
そんなことを考えて、生ぬるくなったホットミルクを少し強引にのどに流し込んだ。もう、寝るかな。
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