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本屋が急に閉店するということ

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2002年2月から2023年まで上野の本屋で働いてきた書店員が閉店してからの心境や環境の変化を綴った日記のようなエッセイです。
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#閉店

本屋が急に閉店するということ

本屋が急に閉店するということ

「働いていた本屋が閉店するらしい」
2022年3月23日
社長が「大事な話がある」と店に顔を出した。いつも大事な話があると言ってもたいしたことではないので(コラ)いつものように気楽にS店長とハードロックでコーヒーを頼み3人座った。「5月で店を閉める。6月からJRの耐震工事が入る。契約は先だが採算が取れなくなったので閉める」という内容。寝耳に水…うそでしょ!?冷静を装いつつ納得出来なかった私も店長も

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本屋が急に閉店するということ(4)

本屋が急に閉店するということ(4)

何度確認してもダメでした…

4月6日…そうこの日は本屋のお祭りの日…

2022年本屋大賞受賞は『同志少女よ、敵を撃て』
逢坂冬馬さんでした(おめでとうございます)

閉店するなんて夢にも思っていない文芸スタッフが
「…〇〇〇冊注文したんだけど…」と愕然としていた。

仕方ない…仕方ないよ…こうなれば売るしかないじゃない?
誰もこんな状況読めないよ…重版からの出荷だもんね。

そういえばこの時に

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本屋が急に閉店するということ(5)

本屋が急に閉店するということ(5)

とうとうお知らせをする日になった

4月上旬JRの耐震工事の調査が入る…。天井の水漏れ対応は遅いのにこういう時は早いんだな…とぼんやり考えていた。コロナも勢いが凄くスタッフも自宅療養者がいたり心配することが多かった。

4月18日月曜日はお休みだったがTLがざわついてる。私のSNSのDMも荒れ狂っていた…。

atre 公式から閉店が発表されたからだ。

しかし明正堂からのアナウンスは19日と決ま

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本屋が急に閉店するということ(7)

本屋が急に閉店するということ(7)

2022年5月10日営業最終日

朝礼で閉店まで頑張ろうという内容の挨拶があった。

9日もお世話になった方が沢山来店されたので忙しくなりそうだ。    寂しい気持ちと本当に閉店するのかと信じられない気持ちがあった。

そして閉店しようが新刊は発売される。
文春文庫ディーヴァーの『死亡告示 トラブル・イン・マインドⅡ』の発売

瀬尾まいこさん『傑作はまだ』

佐伯泰英さんの『風に訊け空也十番勝負七

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おまけ 撤去作業

おまけ 撤去作業

閉店で悲しむ間もなく我々が一番恐れている撤収作業が始まる…初日。

閉店のお知らせから時間がなく在庫もあまり返品出来ずこの日を迎えた(実際にはお客様が沢山ご購入してくださったので段ボールが余りました)

店は速やかに囲われ解体するぞ!という気概が感じられる…寂しいけど仕方がない。

【1日目】
5月11日は終日、棚詰めからの地下スペースへ下ろす作業を分担で行った。
お弁当は美味しかった。自分が思う

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本屋が急に閉店するということ(8)

本屋が急に閉店するということ(8)


独立系書店まさかのバッドエンド!?

5月10日に閉店し6月から明正堂と独立系書店を立ち上げるために専務の所に行ったりオンラインで打ち合わせをしたり事業計画書を作るためにステキブンゲイチームや椹野先生にもご助力をいただき本当に本当に頑張った。

しかしどうしても専務の課題をクリアできず(収益を上げるシステム作り、物件探し、事業計画書、モノに価値を付けるには)クリアしてもクリアしても新たな課題を出

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本屋が急に閉店するということ(9)

本屋が急に閉店するということ(9)

クレイジー京都編①(前回までのあらすじ)
明正堂と独立系書店を目指していたが収益を回す仕組みを作ることが出来ず泣く泣く断念し絶望で心が疲れてしまった鬼瓦だった…

とにかくその時は、独立系書店が出来ない!という焦りと不安から混乱しており色々な人の意見を聞いてはそれを実行しようとしていた。

私はもう一度一人で独立系書店を開業しなければと躍起になっていた。

そんな中、以前声をかけてもらっていた神保

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