紅組から青組へ
…といっても、紅白歌合戦の話ではない。
パスポートの話だ。
今年(2022年)の2月にオーストラリアの国籍を取った僕は、着々と(?)オーストラリア人らしい行動をしている。
オーストラリアの国会議員を決める選挙にも行って投票したし。ってか、しないと罰金取られちゃうんだけどね、この国は。
ホントは駄目なのだが、7月の日本参議院選挙にも行った。だって、ただでさえ投票率が低いんだもん、ニッポン!
あとはもう、オーストラリアのパスポートを取るだけだなあ…。
正直な話、そんなに急いでパスポートを申請しなくてもよいのである。
だって、世界でも最強を誇る日本のパスポートはまだ保持していて、有効期限はあと5年ほどある。
(ほんとは、豪国籍を取った時点で日本国籍を離脱しないといけないんだけど、めんどうなので放ったらかしている。っていうか、こんなことをこういう場所で暴露してもいいんだろうか?)
そして、別に外国に行く予定も今んとこないしな~。
でもさ、よもや自分が日本以外のパスポートを取得することができるなんて、思いもよらなかったわけで。
これも、二重国籍が割合と普通のヨーロッパ人ならそんなに珍しくもないのかもしれないが、がっちがちに伝統主義のニッポン人のオレが、ですよ…。
ならば、取るしかないよね?ということでやってみた。
取得手続き
取得手続きは、それほど大変ではなかった。
だいたい、オーストラリアのもろもろの「手続き」ってやつは、オンラインでほとんど出来る。
パスポートの場合も、政府のウェブサイトに行き、自分の名前や生年月日などといった、よくある所定事項をどんどん入力すればいいので、簡単だ。
入力完了すると申請用紙のフォーマットができるので、それを印刷する。
そしてその後は、身分確認、住所確認のための書類を用意する。
オーストラリアで産まれた人(=もともとオーストラリア人だった人)は出生証明書になるわけだが、僕の場合はついこの間受け取った、市民権証書になる。
住所氏名の証明は、運転免許証、メディケアカード(保険証)両方。それがない人は、他の書類の組み合わせでも可能である。
あとは、顔写真2枚。
この準備が整ったら、然るべき場所に行って申請をしなくてはいけない。
日本だとパスポートセンターがあるけど、オーストラリアの場合、なんと郵便局で申請の受付をしてくれる。
郵便局が、お役所の機能を兼ねているわけだ。この辺のちょっといい加減なところは、さすがオーストラリア。
混雑を避けるためか、いちおうこれもウェブで予約をしないといけない。
そしてその期日に自宅近くの郵便局に行った。
なんといってもパスポートというめちゃくちゃ大事な書類なので、郵便局長みたいな偉い人が書類を厳正に確認するのかと思いきや、普通のクラークがざざっと僕の書類を確認してコピーを取り、支払いをして終わり。
「2ヶ月位で出来るはずで、パスポートオフィスからメールが来るからね~。」ということだった。
ちなみに現在の料金だが、10年パスポートでA$308だった。
パスポートは郵送もしてもらえるが、僕はパスポートオフィスから歩いて行ける場所に住んでるので、そこで受け取ることにした。
パスポートが出来た!
そして言われた通り、だいたい2ヶ月後に
「パスポートができました。取りに来てね」というメールが来た。
おお、ついに!
でもここで少々問題が起こった。
パスポートオフィス長蛇の列問題である。
要は、過去2年間の国境封鎖やロックダウンにより、パスポートを更新しなかった(できなかった)人が、昨今の国境開放に伴い、「あ、じゃあオレも海外行くか!」となるが、
「あ、パスポート切れてた…」
となるケースが大量に発生したのだ。
しかもいまオーストラリアは、未曾有の人不足。
パスポートオフィスには、パスポートの早期発給を願う人が押し寄せ、想像を絶する待ち時間になっているというニュースがあちこちで流れていた。
ひどい場合だと、丸一日待った人もいたそうな。そして、行列代理人というか、代わりに並んであげますよ!というビジネスも出てきたそうだ。
そら、緊急の旅行でパスポートが必要、でも並ぶ時間ない、仕事もたまってるし…なんて人だったら、お金払っても並んでもらうよなあ。
僕の場合、別にパスポートオフィスの係員と交渉するわけでもなく、単にもう出来ているパスポートをピックアップするだけなので、そんなに待つことはないだろうし、怖いもの見たさで行ってみたくもなったが、まあ急ぐわけでもないのでしばらく行かずに待っていた。
パスポートオフィスも、流石にその状態を放置しているわけにもいかないので、人海戦術でスタッフを増員したり、オフィススペースを広げたりしたようだ。
その結果、待ち時間はかなり短くなったというニュースも聞こえてきたので、ある日オフィスに出向いた。
行ってみると、建物の外で並んでいる人は10人程度だったのでホッとした。これで、中に入ったら長蛇の列とか、激混みだったら嫌だなあ…と思って待っていたが、意外と列はスルスルと進み、ほどなく建物の中に入れた。
中もそれほど混んでいなく、いたってノーマルで落ち着いている。
しばらくすると名前を呼ばれ、身分証明書(運転免許証)を出し、顔の確認。
しばらくすると、「はいではこれ、パスポート。名前や生年月日を確認してね」と係員が、青いパスポートを手渡してくれた。
晴れてパスポートをゲットした!
ちなみに最初に並んでからパスポートをゲットするまでの時間はトータルで25分だった。な~んだ、オーストラリアもその気になればできるじゃん。
やはり、真新しい、外国の…じゃないな、日本のではないパスポートに、自分の不細工な顔写真と名前が載ってるのを見るのは、不思議かつ感慨深いものがあった。
市民権授与式の時にも同じようなことを感じたけど、簡単に言えば、
「あ~あ、オレ、どんどん日本人じゃなくなっていくなあ…」という気持ち。Mixed feeling っていうやつですね。
でもそれは同時に、
「もうオレはオージーなんだ!ここでやっていかなきゃならないんだ!」
という決意を新たにするということでもあり、その儀式も兼ねて、最寄りのパブに行ってビールを飲んだ。
あまり公共の場所でパスポートをさらして写真なんぞ撮るのは保安上どうかと思うが、まあいいよね。
オーストラリアのパスポート、その中身
さて、オーストラリアのパスポート。
色は青だ。日本の5年パスポートと似た色合い。
表紙に国の名前、国章、Passportと書いてある点は、だいたいどこの国も同じなのかな。オーストラリアの場合、国の紋章がカンガルーとエミューだから、どこの国かすぐ分かるよね。
顔写真、パスポート番号といったいちばん大事なページには、ホログラム加工がされていて、透かしも入っている。
その後は旅券の取り扱い方、海外旅行についてのアドバイスを書いたページがある。
そしてビザや出入国のスタンプを押すための白紙が続くのだが、最近はスタンプ無しで済ませる国も多いので、ほぼ余白のまま年月が経ってしまうのだろうな。
日本のパスポートの場合、ここのページは無機質だけど、オーストラリアのは、なにやらたくさんのイラストというか、模様が入っていてページをパラパラめくるだけでも楽しい。
どのページにも、ユーカリの葉と花、オーストラリアの動物、そしてオーストラリアらしい情景のイラストが描かれているようだ。
最後に、細かい話
皆さんも(たぶん)ご存じの通り、日本は二重国籍を認めていない。
(なのでオーストラリア国籍を取った時点で、僕は日本国籍を失うわけだが…ちょっと放置しておこう)
オーストラリアは、それを認めている。
その場合、海外に行く場合はどうするのか?ということが気になったので調べてみた。するとシンプルに、
と書いてあった。オーストラリアでは、日本のパスポートを使ってはいけない、ということなんだろうね。
ということは、(もし日本が二重国籍を認めた場合)オーストラリアを出国する際はオーストラリアのパスポートを出国カウンターに提出し、日本に入るときは日本のパスポートを出すわけになるのかな?
これに加え、航空会社には、どちらのパスポートを提出すればいいのだろう?なんかややこしいなあ…。
ともあれ、青いパスポート保持者となってしまったわけだが、はてさてこれを持って最初に入国する国は、いつ、どこになるのだろうか?少し楽しみだ。