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人生初の献血をシドニーで

いきなりだけど、ワタクシ、ただいま53歳のおじさんです。っていうか、あと一ヶ月で54になる。信じられん!

…ということはどうでもいいのだが、献血をしてきた。

この歳になるまで、実は献血をしたことがなかった。もちろん献血は必要とされているのは知っているし、ここシドニーでも広告や呼びかけがメディアを通して流れてくる。

なぜ今まで献血をしなかったかというと、いくつか理由がある。

一番の理由は、シンプルに関心がなかった、ということ。
幸いに、家族や友人で輸血をしたり、重病になった人がいないので、直接にその恩恵にあずかった人が身近にいなかった。なので、そのありがたみを直接感じたことがなかったし、特に僕がやらなくてもなあ…と思っていた。なんかこのあたり、選挙に行かない人の気持に似通っているような。

また、ちょっとおっかないなあ…。という気持ちもあった。
誰でもそんなものかもしれないけど、血を見るとちょっとクラクラしてしまうというか、頭がスッと軽くなるような気持ちになる(あれ、何なんでしょうね?)。
そんな血、しかも自分の血をそれなりの量取られるなんて!本当に大丈夫かいな、とビクビクするのは、まあ仕方ないのかな…。

また、僕はけっこう痩せているので、少しでも血を抜かれたら困る!貧血でひっくり返るんじゃない?という不安もあった。

とまあ、そんなこんなで献血というものとは縁なく、のうのうと半世紀以上生存していたのだが、なぜ今になって献血をしようと思ったのだろうか。

…実はさしたる理由はない。
ただ、自分がリスペクトしている友達が定期的に献血をしているのを知り、それに触発されたというのもある。

また、五十路を過ぎた身としては、死ぬ前になるべく多くのことを体験しておこう…なんて考えを時々持つようになった。ちょっと大げさ?

ともあれ、エキゾチックな国へ旅したり、新しいスポーツにチャレンジしてみたり、といったアクティビティとは違い、献血は、少し自分の時間プラス自分の血を取られるけど、それ以外はお金がかかるわけでもないし、特に何かのスキルや技能が必要なわけでもない。「人生初」のアクションとしては、まあハードルはとても低い。

とはいっても、事前の準備ゼロでは献血はできない。実際にオーストラリアで献血するには、まず赤十字の献血サイトに行く。Lifebloodという名前です。

もちろん英語サイトだけど、献血の種類、献血が必要な理由などが載っているので、知りたいことがあれば事前にリサーチできる。

献血をする場合、まず自分が献血できるかどうかをチェックするページに行き、いくつかの質問に答える。当たり前だけど、健康な人ではないと献血できませんので。
あ、そうか。献血をしたくても健康事情でできない、という人も世の中にはいるので、その意味でも自分みたいな健康な人はこういうことをすべきなのか…。

献血ができる、となれば自分のアカウントを作成し、このサイトから献血センターの場所、日時を指定して予約をする。オーストラリアでは、通常は予約をしないと献血はできないようなのでご注意を。

それから、献血にも色々種類があるのだが、僕は今回プラズマ(血漿)を献血することにした…といっても、特に理由はなかったのだが、プラズマのほうが大事らしい?ちょっとよく分かりません。
ただ、下に載せた日赤のサイトによると、プラズマのような「成分献血」の方が、身体にかかる負担は少ないらしい。

さて、当日。僕はシドニーの街のど真ん中にあるセンターに行くことにした。お昼前の予約だったので、朝ご飯をしっかり食べ、水分をいつも以上に多めに摂ってから出向いた。これ、大事らしい。

最初に受付でIDを提示して本人確認をする。そしてタブレットを渡され、いくつかの質問に答える。質問は40問くらいあって結構長いけど、既往症とか、最近の渡航歴、あとは最近タトゥーを入れたか、みたいな質問もあった。やはり血の成分に問題があるとえらいことになるので、このあたりは大事なんだなあ、と再確認。

質問に答えると、しばらくして係の人に呼ばれるが、すぐに献血…とはいかず、個室に連れて行かれて、少しだけサンプルの血液を指の先から取り、血圧を測った。その後は簡単な面談。これは自分が一回目だからかもしれないが、先ほど答えた質問を丁寧に確認された。

もちろん特にに問題無しとなったので、今度は献血ルームに案内された。オープンスペースの大きな部屋に、献血をするための機材と椅子があり、10名ほどの人がすでにゆっくり座って献血をしていた。
平日のお昼間というせいか、中年の人、そして女性が多かった印象だ。

採血をする人が来て、また生年月日の復唱を求められる。この辺りは念には念を入れ、というところか。

今回はプラズマを631ml採取するとのこと。なんか下一桁までしっかり決まっているが、これは僕の身長体重…といったデータから決められるそうだ。

…っていうか、631ml って、結構な量じゃない?僕はビール飲みなのですぐビールのグラスサイズで換算してしまうけど、1パイントが570mlなので、それより少し多いじゃないの!
あのビールに匹敵する量の液体が体内から取られるのか…と思うと、すこし頭がクラクラしたが、もはやここで引き下がるわけには行かぬ。

そして遂に腕に結構太めの針が刺さる。その時はやはり痛みがあるのだが、一度血が流れていくと、余り痛みや違和感は感じない。

血流を保つため、渡されたゴムボールを手のひらで転がす。これをサボっていると機械が警告を出すので、ボールを少し強めに握って血の流れを取り戻す。成分献血の場合、ただ血を取るだけではなくて、成分を取った後の血をまた体内に戻すので、普通の献血よりは時間がかかる。
自分の血液が取られ、遠心分離機にかけられ、しばらくしたらプラズマを抜かれた血液が体内に戻され…という過程をボーッと見ているだけ。

ここでしくじったのは、腕に針が刺さる前にイヤフォンでも付けて音楽や動画を見る体制を整えておくべきだったのだが、もう片手しか使えない状態だとそれもちょっと難儀なので、SNSを見たりして時間を潰す。本も持ってきたのだが、紙の本だとページをめくるのが面倒なので、これも使えなかった。次回の参考にしよう。

ま、のんびりしてればいいか…

時々係員の人が巡回してきて声を掛けてくるので気は紛れるが、どうやら僕の血の流れがよろしく無いようで、他の人より経過が遅いようだ。

「ちょっと時間がかかってるわね~」と何人かの係員に言われ、ヒートパックを腕と肩に追加された。

あ、そうか。体が冷えていると血の巡りが悪くなって、あまりスムーズに行かないんだ。僕は普段からその傾向があり、冬などになると手がとても冷たくなりがちなので、そういうことなんだなあ。

この日は別に予定もなかったのでまあゆっくり構えていればいいや、となるべくリラックスすることに努めた。

結局1時間ほどかけて規定の631ml 、いやおまけが付いて正確には632mlの献血が終わった。ただこれで終わりではなく、なくなったプラズマの分だけの生理的食塩水(だと思う、ちゃんと聞いてなかった)が体内に注入される。

その後、無事に針が腕から抜かれ、そこにバンデージを巻いて、献血終了!係員が、「これがあなたのプラズマよ!」と、透明な袋に入ったちょっと褐色がかった液体を見せてくれる。おお、これが誰かの役に立てばいいなあ…。

念を入れるために5分ほど動かず同じ椅子に座っているようにと伝えられる。
ここで、身体が少し、いやかなり寒くなり、足を中心に細かい震えが来た。アレ、大丈夫かな?と心配したけど、しばらく安静にしていたら徐々に震えは治まってきたので、冷たい液体が身体に直接入ってきたことへの反応だったのだろう。

5分経って、椅子から立って、待合室で水分と何か食べるように言われた。ここにはフルーツ、スナック菓子、コーヒーや紅茶など結構食べ物があって、もちろん何を飲食しても良い。なんとカップラーメンや、ミートパイのような温かい食べ物もおいてあった。これだったら一食分浮かせられるなあ…なんてケチくさいことを考えていたが、こちらも腹ペコ。

え、なんでだろ?別になんにもしていなかったのに?プラズマが抜かれたからすぐに空腹になるわけでもないだろうし、多分心理的なものだと思う。

とにかく、その辺りにあった食べ物を手当たり次第に食べた…。飲み物は、アイスコーヒーとホットコーヒー。食べ物はまずポテチと小さなパックに入ったミックスフルーツ、そしてミートパイをむさぼり、最後にビスケットを食べた。まだまだ食べれそうだったけど、まあこれくらいにしておこう。

体調的にはやや疲労感が残っている程度だったので、献血センターを後にした。っていうか、まだお腹が空いていたし、鉄分多いものを食べたほうがいいのかな、と思ったので、近くのパブでステーキを食べ、ビールはさすがに止めておいた(当たり前か)。

さて、次回はあるのだろうか?

スタッフの皆さんに"Thank you for doing this" (献血してくれてありがとうね!)みたいなことを何回も言われてうれしく思ったし、これが誰かの役に立つのなら、ちょっとまだおっかなさはあるものの、また献血をしてみようと思う。

次回は暖かい服装で臨み、それから献血の後はカップラーメンを食べてやるぞ!


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