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コロナ禍に対する世界の4つの方針比較分析〜世界の封鎖解除模索と取り残される日本〜

はじめに

昨日、山中教授の「1/500死亡事故を起こす、乗り物に乗りますか?」という新型コロナのリスクについて紹介しました。

それは誇張でもなく、今、例えばニューヨークで実際に起きていることです。

死者数はニューヨーク市民500人に1人の割合に相当する。コロナ患者500人に対し1人ではなく、全市民500人に対し1人だ。よく考えて欲しい。これは、平均的な高校で複数の両親か祖父母、職場で同僚が1~2人死亡する可能性があるということだ。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ここまで感染者と死者が拡大した理由を「人口密度、貧困水準、公共交通への依存」等を上げていますが、珍しく力弱い分析に留まっています。

専門家ですら未知とのウイルスとの闘いであり、しかもそのウイルスは短期間(2週間)でどんどん変化します。

どの選択肢が正しいのか、誰も本当の答えはわかりません。

医療崩壊、私権制限、経済不況、財政危機、それぞれのマイナス要因とリスクを考慮し、それらを回避しつつ、感染拡大による死者数の抑制を達成する複雑な方程式です。

全世界の全政府と全国民が戦っています。

日本人は(日本政府もですが)グローバルスタンダードとは違う日本独自の戦略(仕様)を採用する傾向があります。

今回は海外の状況とそれぞれの国の施策を整理し学べるところはないか検証したいと思います。


1.世界を見渡して見えてきた対応方針は4つ


①「個人の自由と責任路線」 - スウェーデン方式

個人の自由の尊重と責任ある行動を徹底し、経済活動と日常生活をできるだけ維持し、その結果としての感染拡大と死者増を許容しつつ集団免疫獲得を目指す
・死の運命に対して強い国民となり、個人の自由と今を生きている時間の質を大切にする

「スウェーデン社会では、「自制心」と「責任感」という2つが重要視されており、1人1人が自身に対して、そして社会に対して責任を負うという考え方が浸透しています。なので、政府の打ち出す政策に対しては、「大人の対応」で臨むことが当たり前だとされています。






(解説)北欧3国で比較しても明らかにスウェーデンだけ死者数が突出して多いですが、未だ政府による強い規制はありません。

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研究者は政策の見直しを求めていますが、政府保健当局の疫学者は、数理モデルで5月中には集団免疫を達成し、このままの自由と個人の責任路線で収束するとの見通しを示しています。

②「強制ロックダウン短期封じ込めからの経済再開」-中国、欧米スタンダード

・短期間で感染拡大を徹底して押さえ込むために、あらゆるPCR検査体制を整備して感染状況の現状把握を行う
・必要な法律を整備し、国境封鎖、都市封鎖、経済封鎖ロックダウンに入る

・ITを駆使し国民のSocial Distancing の状況を期間限定で細かく監視コントロールする

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(出所:日経BP)

(解説)ドイツ、フランス、シンガポール等、国際スタンダード方式です。昨日紹介した橋下徹氏の法治国家としての政治のリーダーシップ論も同じです。


②-1. ヨーロッパの中でも、スイス、オーストリア、デンマークの小国を中心とした「即決即断型」

「動きの早さが目立つのが、人口1000万人以下の小国だ。代表格がオーストリアとデンマーク、スイス。移動制限や活動制限の決定も早ければ、緩和の決定も早く、「即断即決型」と言える。」(日経BP)


②-2. イタリア、スペイン、フランスといった感染爆発が起きてしまってから、一気に強めのロックダウンに踏み切らざるを得なくなった「追い込まれ型」

ロックダウン3週間のイタリアで感染者数、死者数ともに減少…「我々の行動が命を救っている」「より厳格になるべき理由」(4/1)


②-3. 集団免疫論でEUとは別の独自施策を取ろうした最中、ジョンソン首相自身が入院し、封鎖対応が遅れ1万人の死者を出した「後手後手型」

②-4.PCR検査を徹底し、ITを駆使し、コロナファーストの医療体制を整え医療崩壊を避け、他国の緊急搬送を受け入れる余裕をみせる「優等生型」

「やはり現状のファクトを知る目的で、いち早くPCRと血清のW検査を実施し、最悪を想定して人工呼吸器と病床を確保したことを、メルケルが決断し実行号令したということでしょうか。」



各国とも対応の速さで結果に差はでていますが、法的強制力を持ったロックダウンと休業補償のセットがグローバルスタンダードです。

私も4/1時点では、「緊急事態宣言ということは、必要な法整備をおこない法的強制力持った緊急封鎖を行って、その後徐々に解除していく」のかと思いました。

国の緊急事態宣言の根拠である新型コロナウイルス対策特別措置法に「補償」の規定がなく、グローバルスタンダードとは全く違った日本独自の自粛戦略を取っていることは、前前回緊急事態宣言の時の投稿で書いたとおりです。


③自粛による感染拡大防止と医療崩壊回避- JISHUKU


・PCR検査や医療リソースが限られていること等から市中感染状況は数理モデルで推定しつつ、自粛活動の経過観察によって感染者数、死者数が収束することに期待、とりあえず様子を伺う。

(解説)
現場行政を対応する、大都市の知事は、異口同音に、危機管理は最初に強めの対策を打って徐々に緩めていくことと主張していました。

「危機管理は、最初に大きく構えて、そこから状況が良くなると緩和していく。様子を見てから広げるのではなく、最初に広げて段々縮めていくというのが普通の危機管理ではないかと」(小池知事)
短期間で感染者が急増した米ニューヨーク市など海外の都市を引き合いに「東京も大阪も、先手の対策をうつべきシグナルはもう出ている」(吉村知事)


また、吉村知事は、この4月の1ヶ月に対する国の総括なく、ダラダラと延長する判断することに強い不満と問題意識を持っています。

この1カ月間、みなさんでコロナを抑えようとやってきた中で、(緊急事態宣言の期限)をダラダラ延ばすということに、僕は問題意識を持っています(吉村知事)
吉村府知事、緊急事態宣言延長の見通しに「経済駄目にした時の、人の命は誰が守るのか」(4/30) https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sponichi/entertainment/sponichi-spngoo-20200430-0181

ウイルスとの闘いは指数関数での闘いです。2週間様子見るということは、単に後ろに2週間の遅れることではないのです。
欧州の例にも見るように数日、数週間の初動の判断の遅れを取り戻すのに数ヶ月かかる可能性もあります。

今の日本政府の方針は③ですが、実際に現場で、医療現場の逼迫の状況に直面しながら、強い法的強制力なく休業補償を「お願い」し、都道府県民に行動の自粛を「お願い」しないといけない知事と、経済の状況と感染拡大の状況を見ながら調節をしたい国との温度差が生まれており、国家としての対応が中途半端になる事が強く懸念されます。


④IT駆使のSmart Social Distancing 戦略 - 韓国、台湾


韓国や台湾は過去のSARS, MARSの経験からITやPCR検査をフル活用した早期発見と離隔対策を取り封じ込めに成功しています。

それらは国際的に納得感をもって理解され世界から称賛されています。

「中国に続いて感染が広がった韓国で行われた取り組みは、世界保健機関(WHO)から評価され、その後に危機を迎える欧米諸国のモデルとなった」


2.各国は既にPhase IIIパンデミックからの社会正常化を模索、日本の国際的孤立の可能性

日本が取っている③の施策は、特に緊急事態宣言以降、国家としての一貫した戦略を欠いているように見えます。仮にこれまでは死者数を押さえられていたとしても、日本国民としても、また国際世論としても納得感がありません

ロックダウンを1ヶ月以上行ってきた各国は、それぞれにピークアウトを迎えつつあり、解除の方向を探り始める段階に来ています。

トランプ氏が前のめりな経済再開への不安。韓国・ドイツ同様の対策なら逃れられた経済損失(4/27)


国民の総力を上げて徹底的に封じ込めた国は、当然同じレベルの透明性を持った対策とその徹底を相手国にも要求してきます。PCRテストの広がり、抗体の保有率(例え精度に問題があったとしても目安にはなる)、情報開示の透明性やサンプル調査の方式とその精度、自国の国民が相手国で感染したときの対応レベルなどを査定することになるでしょう。

その時に、「いやー、偶々かもしれませんが、日本ではあまり人が死んでませんからー」では国際的に通用しないのです。

海外主要紙や政府関係者は、日本の死者数の少なさを「ジャパン・パラドックス」と呼んでまだ懐疑を抱いています。

新型コロナ 緊急事態宣言「対応遅い」「防疫策不十分」 海外報道、懐疑的 (4/8)  https://mainichi.jp/articles/20200408/dde/007/040/040000c

数が少なくとも感染発生がダラダラと常態化し市中感染状況が把握できない状況が続くと、各国が封じ込めに成功し経済活動を再開させた時に国際的に取り残される可能性があります。

金融日記管理人の藤沢数希さんが、解除を徹底して行った国々だけで有る種のブロック経済圏のグリーンゾーン経済圏をつくる可能性を仮説としてあげています。

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日本は、特に与党自民党は、これまで経済力さえあれば世界に対して影響力を持てると思ってきました。

今は世界各国は現在の状況を「世界大戦」と認識し、国民総動員でそれぞれの国民の命を守るために戦っています

様々な個別対策の寄せ集めで、何が効いたかわかりません、国民の自粛で収束したようにみえます、では海外で通用しません

各国政府にとっては自国民の命がかかっています世界が戦争状態に入ると経済力だけでは不可能な命のロジックがあります。

「日本から渡航する人の入国拒否や、入国後の2週間隔離などの制限をしていない国・地域が、英国など6カ国のみに減っている」


3.6月にどのような社会活動の正常化に向けた戦略を取っていくのか

5/6に緊急事態宣言解除を延期したとして、戦略の方向転換なく日々ダラダラと感染者数の増減に一喜一憂し、またそれらが各県にじわじわと広がっているのをただ眺めて1ヶ月を様子見で過ごす事はとても危険です。

国民感情的にも、飲食店などの経済状況から考えても同様の自粛継続は5末が限界でしょう。

私は、「新型コロナウイルスについて⑧:東京感染爆発は既に起きている?今までの日本のラッキーと始まりつつある医療崩壊」において、すでにPhase IIIパンデミックに入ったとして、PCR検査の新しい手法も含めたPCR検査の拡大、大規模なサンプリングの抗体検査調査そしてそれとセットの緊急事態宣言による都市封鎖(ロックダウン)

が必要と4/1に既に書きました。

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自粛効果のとりあえずの様子見で、そのPhase IIIの4月の1ヶ月は過ぎようとしています。一部の国民を除き国民は全力で自粛に協力したと思います。

橋下徹氏、自粛要請の中、人影激減の都内の映像に「日本国民ってすごいですよね」(4/29)https://news.yahoo.co.jp/articles/25c68c3991a1f95c025c1b5451e75c4eca0a07f1

それにも関わらず聞き飽きた感のある「ギリギリの油断のならない状況」は変わらず緊急事態状況下の日常がダラダラを続く毎日が続いています。

いよいよ本格的に、対策を変える必要があります患者を早期発見し治療をするための検査と医療から、社会活動を復活させるための疫学調査と国民行動に舵を切る必要があります。

次回はそれに向けて、それぞれのPhaseでどの指標データをどのように分析してすべきかについて書きたいと思います。

追期変更:

<2020.5.3 変更>

①韓国、台湾の成功はロックダウンをせずに、民主主義国家として成功した例としてユニークなので内容を変えずに一つの選択肢として構成を変更し、④とし、3つの選択肢と4つの選択肢に修正しました。

<2020.5.8 追加情報>

政府のコロナ対応、海外から批判続出「終結は困難」

懸念した通り、日本のPCR検査の少なさから市中感染者が数十万人いるのではという疑念を国際社会からから持たれているようです。

外務省は新たなPR予算を積んで、対策を考えるようですが、抜本的に政府として対策考えないと世界から孤立し、190カ国の最強パスポートが6カ国に減ったままの状況が続きそうです。




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