見出し画像

コロナ禍、いよいよ「緊急事態宣言」 〜「じ・し・ゅ・く」で国を救おう〜

はじめに

3/26の⑥で予測した4月の第2週に突入しました。

みたくない数字をみることになるだろうと思った通り、感染経路の追えない感染者数が今後100人単位で増えていきます。
海外の様な2-3日で倍のペースではないものの、5日で倍のペースであることに変わりはありません。
いよいよ、Phase 3. パンデミック突入です。

東日本大震災の時もそうですが、この国は何か国家存亡に関わる危機管理上の重要な意思決定は同盟国アメリカと相談しながら進めます
なので、米国大使館が米国人へ出すメッセージをみれば、いつ国家としての日本が実質的な意思決定したかがわかります。今回は4/1-2あたりです。

3連休の約2週間後の4/1-2の感染経路不明者の伸びをみて来たる最悪の事態を予測したと思われます。

米国人は大至急国外へ退避せよ If U.S. citizens wish to return to the United States, they should make arrangements to do so now. U.S. citizens who live in the United States but are currently in Japan should arrange for immediate return to the United States, unless they are prepared to remain abroad for an indefinite period.
Health Alert – U.S. Embassy Tokyo (April 3, 2020)

わかった事1. 欧米、中国のようなロックダウン(都市封鎖)は現行法的にはできない

緊急事態宣言に法的強制力なく自粛の要請に留まる事、内閣総理大臣が宣言を出すことで、国民に「より」危機意識が高まる程度であることは、既に報道等で皆さんもご存知だと思います。

都市封鎖(ロックダウン)とは、対象とするエリアの人の移動を制限したり企業活動を禁じることを指す。定義はあいまいで、東京都によれば、都は諸外国で既に採用されている外出禁止などを想定して使用しているという。 



3月26日の感染症法に政令が(こっそり)改正され、除外されていた32条の建物利用制限や33条の交通制限や自治体の賠償責任回避等が加わったのは強制的に接触回避を行うための準備とみえます。しかしながら都市封鎖と呼ぶには極めて抑制的かつ限定的です。

官報号外

https://kanpou.npb.go.jp/20200326/20200326t00033/20200326t000330001f.html?fbclid=IwAR0_RZmkEetBkk_nR0s2ZHJZX5VncG8Po1x7LXnwKBo2wNhD2XlOXHvaq5w


日本は戦後のみならず、戦前から民主主義の歴史を持つ法治国家です。

「法が終わるところ、暴政が始まる」 - ジョン・ロック「統治二論」


まずは内閣総理大臣が緊急事態宣言をして、そこから必要に応じて対象として選ばれた都道府県が対策を講じます。

欧米並みのロックダウン都市封鎖は、新たに法改正しないとできません

(3/26の時点では海外でできることは当然日本でもできるもの、するものと思っていました

但し、近代的な民主主義国家が法律に基づいて国家運営されるのは当然ですが、こうした緊急事態においては「法治」が大切といえども「国家」のそもそもの存在意義は国民の命と生活を守ることのはずです。


わかった事2. データサイエンティスト達の極めて悲観的にみえる客観的な予測

データサイエンティストは、「感染拡大」と、「ロックダウンの経済的なダメージ」の両方についてそれぞれの専門家が極めて悲観的な試算を出しています。

データサイエンティストとは、データの専門家で我々がつい人間として持ってしまいがちな正常化バイアス*から最も無縁な人たちなので、僕も信じたくはないですが、残念ながらその試算が正しい可能性は高いと思っています。

*正常化バイアスー自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる


感染拡大防止について

西浦教授は2月末から3月前半の時点で、外出禁止で70-80%の接触禁止を提案していたようです。(クラスター対策班はクラスター対策だけに固執していたわけではない!)

スクリーンショット 2020-04-07 9.09.31

さらには、最近では、1.8%まで社会的距離を削減しないと収束しないというシミュレーションも出てきています。ウイルスが欧州L型変異したためか、感染が拡大して2月末よりもより強固な接触規制が必要になったのか、わかりませんが、相当の接触規制が避けられない状況かもしれません。

佐藤「感染力の強いL亜型が流行していると仮定した最悪のシミュレーションでは、今からでも生命維持に必要と考えられる基本的セクターに携わる人以外の全ての人が他者と接触する活動、つまりソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)を通常の1.8%まで低下させ実行する必要があるということになります。人間同士の接触をこのレベルまで落とし、これを14日間以上継続すれば、下のグラフのように14日後から感染者数の減少を確認することができるというシミュレーションになります。実際には、これほど急に減少に転じず、累積感染者数は緩やかな上昇カーブを描きながら徐々に一定値、すなわち感染者がほぼ確認されない終息状態になるでしょう」
──1.8%までソーシャル・ディスタンシングを落とすというのは、具体的にどういう意味なのでしょうか?
佐藤「感染連鎖を断ち斬るには、下の図(右)のように人間同士の社会的な直接触接を14日間程度、全くしないことで、有限サイズのクラスターを形成することが必要です。例えば、不要不急だけでなく、日常生活で必要なあらゆる外出を1/50以下にしたり、一度に他者と接触する人数を通常の1/50以下にするというようなことです。


1.8%のソーシャルディスタンシングとは、中国政府が武漢で行っていた封鎖、もしくは現在のイタリアで行っているような封鎖レベル、ジョギングもだめというレベルです。


経済へのダメージについて

次にそのような厳しい都市封鎖が行われた場合の経済へのダメージはどのようになるのでしょう。東京が封鎖されると「2週間」で、東日本大震災と同じくらいの経済的被害が出る可能性があるとされてます。

試算では、東京が封鎖されると「2週間」で、東日本大震災と同じくらいの経済的被害が出る可能性がある(内閣府のレポートによると、震災による GDPの減少は 1.25%~2.25%だった。)
 日本のGDPの成長率は年間1%前後なので、たったの2週間で、2年分くらいの成長は吹き飛ぶ計算だ。 - スパコンでの経済効果試算

データサイエンティストが数字で示す世界は、いずれも究極の選択です。
1ヶ月間人との接触を今と比べて1/50にできるか否か(家族代表一人が買い物に週に一回でるだけあと全員自宅待機)、や5.1兆円の日本の成長率が1ヶ月で吹っ飛ぶ経済ダメージのどう回避するか等です。

わかった事3.「緊急事態宣言」による外出自粛でSocial Distancing 80%抑制に舵を切る日本政府


1.8%までの武漢のような厳しいレベルのロックダウンは現行法で強制できません。現在の自粛要請レベルではSocial Distancingの「密室」、「密集」は60%-70%抑制できていても「密接」は30%抑制程度の70%しか対応できていないことが見て取れます。

感染リスクを高める密閉、密集、密接の「3密」への対応は、「換気が悪い場所に行かない」が62.0%、「人がたくさん集まっている場所に行かない」が73.7%だったが、「他人と近い距離で会話をしない」は32.8%と低かった。


政府としてはSocial Distancing levelを先程の西浦教授の提言する接触20%程度まで、緊急事態宣言を出して全国民的の理解を得ることで引き下げ事態の収束が図りたいと考えています。


日本的なクラスターの潰し込みは保健所の組織能力の限り合わせて行っていくが、力点は、3/26⑥で予測したとおり、4月第2週から経路不明者の爆発発生を前提とした緊急事態対応に徐々に舵を切っていくと思われます。

わかった事4.小池都知事の専決処分の事前(案)発表というスピード対応

昨夜21:30の東京都知事の臨時記者会見で東京都は緊急事態宣言を織り込んだ事前対策(案)を丁寧に説明しました。
一刻を争う時に、案として緊急事態宣言の前に都民に事前発表した知事のセンスはとても良いと思います。

「専決処分」として議会の議決を得ずに例外的に補正予算232億円を組んで、6月までの医療体制の整備などの必要予算が組まれています。
①外来診療体制充実8億円
②PCR 検査拡充8億円
③感染者増に対応した受け入れ体制強化112億
④ECMO整備73億
⑤学童クラブの補助13億円
⑥住宅をなくした都民への一次住宅提供12億円

など総額232億円

この予算規模でどの程度まで対応可能かは、都民にも良くはわからないが、取り急ぎ緊急事態宣言が出たら即、東京都の行政は手は打ってくれるという安心感が得られます。

余話として

マスク姿で、よどみなく自分の言葉で明晰に対策の説明をしていく小池知事は、まさにキリシア・ザビ、相当な迫力でした。(日刊ゲンダイの今泉記者が、上から聞いてこいと言われた今更それを聞いてどうするという質問をしていましたが、睨まれて声が震えていました。)

スクリーンショット 2020-04-07 9.33.00

意味合い1.パンデミックによる医療崩壊を防ぐための様々な準備を(とにかくもうPCR検査して!)

・大規模な隔離施設を、日本財団の駐車場やアパホテルなどで準備しつつある
・また、医療従事者や保健所のOBの臨時雇用の話も進んでいる

と聞きます。

もはや、クラスター潰し込みだけでは感染爆発は防げない。既存の施設設備前提でなく、特に検査キャパシティが圧倒的に足りない東京などで屋外に、検査者が安全迅速に検査できる大規模なドライブスルー検査場や無償の隔離施設を整備すべきです。

例えば東京都は相談が3万8629件で検査実施は2・2%の859件。茨城県は相談379件で実施363件と95・8%に上り、大きな差が出ている。
 感染者が急増している都市部などで、相談件数の増加に診察や検査が追いついていない可能性があり、政府は実態把握を急ぐ。



意味合い2.柔軟に臨時法整備を行っていく成熟した法治を

元大阪府知事の橋下氏などは、緊急事態宣言の発動に慎重な政府に疑問を呈しています。もっと法律の弾力的な運用は可能なはずという立場です。


フランスの迅速な対応から学ぶ柔軟で信頼できる法治国家と政府

例えばフランスは、ナポレオン法典の頃からの歴史ある近代法治国家ですが、パンデミックが確認された3/16から検討開始してわずか9日間の迅速対応で、2か月間の「公衆衛生に関する緊急事態」を発令しました

時系列は以下のとおりです。動きがとても速いです。

・3月16日:政令による外出禁止令。「緊急事態の法理」に基づく発令
・3月18日に政府による公衆衛生上の緊急事態に関する法案提出
・3月19日に上院で可決
・3月21日下院で可決
・3月23日の法律として成立
・3月24日から施行
・3月25日:法律に基づく政令公布

さすがだと思うのは、

緊急事態宣言は不十分であり、行政不作為が基本的人権を侵害しているとして、より強い措置(例外のない外出禁止)を命じるよう、申立て

というところで、漠然と緊急事態宣言を出すだけでは、行政不作為だとしてより強い具体的な外出禁止措置を医師たちが求め、それが認められたところです。

お医者さんの組合などが、行政最高裁に対し、政府の取った緊急事態宣言は不十分であり、行政不作為が基本的人権を侵害しているとして、より強い措置(例外のない外出禁止)を命じるよう、申立てが行われていました。
 
申立てに対して、裁判所は、申立人の求める例外のない外出禁止措置は不可能であること、そのようなことを行っていないからといって、政府の責任を問うことはできないと判断しました。しかし、政府の出した方針は明確ではない(一定のスポーツをしてもいいが、どの範囲が許されるのかは明確ではないなど)、として政府の方針の定め方を批判しました。

日本政府も、迅速な新法を整備することは可能なはず 

〜東日本大震災の記憶〜

漠然とした言葉で、「自粛」とか、「不要不急の外出」とか、「命を守る行動」とかでは、とかく具体性にかけます。
そうした漠然とした「要請」によって真面目な国民は、精神をすり減らし、他人事で要請に疲れた国民は、法的拘束力がないのを良いことにこれまで通り自由に振る舞うでしょう。
政府が明確な基準を指し示さないことで、国民同士の、世代間、都市と地方、等の相互不信と不安を増大させてしまっています


私は、このフランスの迅速な法的整備のやりとりをみて、フランスがで国家権力が私権の侵害する独裁に暴走していくとか思いません。また日本が同じような緊急法的措置を講じたからと行って戦前の軍部統制国家に逆戻りするとか思いません。
もし、万一このコロナウイルスが収束した時に、国家統制が必要以上に強まっていれば、また再び正しく権力の監視を行っていけば良い話だと思います。

現に東日本大震災の国難の時には、様々に必要な法整備が行われました。
東日本大震災の際は、各省庁が一気に緊急対策を練って、法整備に動いたと記憶しています。

第177回国会での東日本大震災関連の内閣提出法律案(26件)
第179回国会での東日本大震災関連の内閣提出法律案(10件)※第177回国会からの継続案件(3件)を再掲
第180回国会での東日本大震災関連の内閣提出法律案(11件)※第177回国会からの継続案件(3件),第179回国会からの継続案件(1件)を再掲


今回は、初動の対策で押さえられてきたようにみえたのでなんとなく政府も厚労省任せだったようにも見えます。
一旦、緊急事態宣言に基づく自粛要請で対応するものの、いよいよ必要となったら全省庁上げて政府として適宜柔軟かつ迅速に法整備も行う事も大切だと思います。

(それがなされずに、迅速な必要な法的整備ができないとしたら「医療崩壊」以前に「国家中枢崩壊」「官僚崩壊」が起きているとしかおもえません。そうでないことを祈りたいと思います。)

意味合い3.自粛(JISHUKU)という、国民に絶大な信を置いた(国民に丸投げした)お家芸は果たして奏功するか?!


今の日本政府は戦時総力戦の1940年体制(右派:自民党)をベースに、戦後の1955年体制の民主主義に基づく私権の保護(左派:野党)が絶妙にMIXされた政治形態です。(各国のコロナウイルスの対応体制の詳細の比較説明は別途の機会で)

野口悠紀雄氏の1940年体制を読むと、今の日本が1940年前後の戦時の総力戦体制の時の改革が色濃く残っている事がわかります。

1940年体制-さらば戦時経済- 

国民皆保険も、終身雇用の正社員も、源泉徴収の税制も、経団連も、国家が様々な要請を行うのもこの1940年頃からです。

例えば、「自粛」という言葉そのものが一般的になったのは昭和前期頃からで、太平洋戦争開戦後に当時の政府から勧告を受け、落語家が時節柄似合わない噺を封印したことが始まりと言われており、比較的新しい日本語です。

例えば、永井荷風も断腸亭日乗(1940)一一月初七「自粛自粛といひて余り窮屈にせずともよしと」と綴っていることから、「自粛」という言葉が作家にとっても新しい「嫌な感じ」の新語だった事が伺えます。

自粛の要請自ら自粛するというのも変な日本語です。

ただ、日本はその自粛(じしゅく、JISHUKU)というお家芸に国民の命を賭けました

データサイエンティストの予測では、強い都市封鎖をしないと感染爆発も経済ダメージも両方避けられませんが、4月末、5月末どのような結果がでているのか、、もちろん誰にもわかりません

これで収束せずに、2週間遅れ、1ヶ月遅れのイタリア、スペイン、ニューヨークと同じ状態を引き起こせば、先行他国の例に学ばず経済と私権を優先して、医療崩壊と大量の死者、そして結果としてのより悲惨な経済崩壊を引き起こした国となり経済交流は難しくなるでしょう。

もし、この法的強制力のない、国民への自粛の依頼だけで、市民の私権も経済活動の制限も脅かされずに感染爆発が押さえられ、医療崩壊を起こさずに
死者を200人程度に押さえて収束を迎えることができれば、奇跡の国民として、世界中の称賛を受けると思います。

そしてその賭けは、国民に委ねられることになったのです。

今日、夕刻、総理から非常事態宣言は出されます。
全員拝聴しましょう。そして、法的強制力がなくても、私権がほとんど制限されることなくとも、国家が「要請」する「自粛」を粛々と実行し、コロナウイルスを封じ込められた奇跡の国とその国民として、数ヶ月後世界から称賛され、普段どおりの日常に戻れることを祈りましょう。

そして

Mottainai (もったいない)
Omotenashi (おもてなし)

についで

世界中の人々が「新たに記憶する」日本国民が誇る伝統芸としての

じ・し・ゆ・く Jishuku(じしゅくー)

でTOKYO2020で世界の人をお迎えしましょう!

以上、構造と文脈からの私の近未来予測でした!

スクリーンショット 2020-04-07 8.54.43

追記. 全体像がみえてる専門家がいない問題?


左派論客 

〜権力の危険性の指摘、だったらこの有事はどうする??の対案がない〜





感染症専門家

「私は経済については専門外で、、、」

「経済は専門外なのでわからない」という感染症専門家、日本型「自粛せよ。しかし金は出さない」で人の命は守れるか。新型コロナ、2つのリスクに同時に対処すべき理由


私が(むしろ素人が憶測で余計な風説を流布しやがってと批判されるリスクしかない)中で、こういう文章を書いているのは、全体観を持ってデータをみて専門外の事を自分の頭で勉強して考えるそういう姿勢の人が、一般の人にも専門家にも圧倒的に少ないからです。(本来は論説委員、TVの解説者なのでしょうが、なんらかの社のバイアスや個人で言いたくても言えないことがある気がします)

だから、「マスク2枚で国民の顔がパッと明るくなります、という官邸官僚の言葉を信じて総理がアホな決断をした」とか、「若者がウロウロしているので強権を早く発動して早く封鎖を」とか「オリンピック中止が決まったからPCR検査が増える」とか表面的な情報や陰謀論に振り回され、政権の無能にため息をつき、無駄に精神をすり減らし不安な感情を高めていきます。

事態は、そこまで単純ではないし、一方で専門家でないとわからない程、複雑怪奇でもないはずです。

事実、医学の専門家でも法律の専門家でも経済の専門家でもない私が情報を多少入り組んだ構造と文脈を整理して、配信しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?