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コロナ禍、東京感染爆発は既に起きている?〜今までの日本のラッキーと始まりつつある医療崩壊〜

1. 日本では何故徐々にしかこれまで広がらなかったのか

このデータをみても、欧米とアジアでは有意な差があります。

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「靴を玄関で脱ぐ」
「マスクをする」(欧米ではマスクは病院で医療従事者と病人がするもの)
「挨拶における接触性の有無」(握手、ハグ)
といったアジアと欧米の生活習慣の違いは、大きい気はします。

また、BCGワクチン接種と新型コロナウイルス感染拡大との負の相関関係が指摘されています。日本では1949年に結核予防接種として法制度化されている一方で、感染爆発している欧米では、1980年代以降、スペイン、フランス、ドイツ、英国、オーストリアなどの欧州9カ国、オーストラリア、ニュージーランドで全例接種が中止され、米国やカナダ、イタリア、オランダでは、医療従事者などのハイリスク群のみに接種を限定する選択的接種となっています。

まだまだ、感染症対策の専門家ですらも未知のウイルスとの闘いは不明な点が多いです。

2. これまで日本で感染拡大を押さえられてきたのはたまたまラッキーが重なったから?

 Phase.1水際作戦からPhase.2クラスター潰しこみ

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私自身は、1月に武漢からの中国人観光客が一定割合既に入国している前提から、1月末の段階でPhase 1. 水際作戦は手遅れだと思っていました。<新型コロナウィルスについて①:これまで起きたこと〜WHO,中国の初動のミス〜>

それで2月に相当数の感染源不明の死者が出ると予測していました。<新型コロナウィルスについて②:これから起きること〜感染ルート不明死者の国内発生と拡大〜>

クラスター対策班の設置

幸いにして、この予測は外れました。一つにはその時点で入手できた死亡率が医療崩壊状態の武漢のもので死亡率を高く見積もったこと、あと、感染拡大に、特定の2割の人物だけが感染させクラスター形成をさせるということがわかり、「徹底したクラスター潰しを行うことによって感染防止が可能になるという仮説」のもとに、厚労省内に対策班が設置されたからです。

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クラスター対策班の中核である押谷先生が 「COVID-19への対策の概念」を豊富なデータと共に説明されている、3月29日付の資料。 
https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf

上記の図で言っているのは、5人中4人が感染させなくても1人が10人に感染させたら5→10で再生産率2で倍に増えるよね、という話。

ダイヤモンドプリンセス号(実は貴重なデータを残してくれていた)

今思えば幸運だったのが、ダイヤモンドプリンセス号で大量発生した患者をまとめて受入れたことで、その患者に対して徹底的に疫学的な様々な検査をし、ウイルスの性格を理解し対策に役に立てることができました。また、既存薬剤の投与効果の検証もできました。

例えば、自衛隊病院では受け入れた104例について新型コロナウイルス感染症対応チームが徹底した研究を行いレポートをまとめています。例えば、それによりPCR検査よりもCTの方が感度が高い可能性があるということがわかったようです。

無症候性を含む軽症者でも画像変化が認められることから、CT検査がPCR検査よりも感度が高いという報告がある
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について            自衛隊中央病院感染対処隊診療部
新型コロナウイルス感染症対応チーム一同
チーム長:自衛隊中央病院第2内科部長・感染症内科1等海佐 田村 格

日本の病院に多く導入されているCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影機)が役に立った

多くの日本の病院は他国に比べ圧倒的に多くCTを導入しています。CTではレントゲンではわからない細かい病変が観察できます。PCRが不足する分この病院のCT検査からPCR検査へ移行して感染者発見、隔離に至ったケースも多いと考えられます。

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ダイヤモンドプリンセス号患者から学んだ知見に基づき、厚労省クラスター対策班が日本独自のクラスター潰し込みの戦略をたてて実行してきた。

これが2月下旬から現在までのPhase 2です。

それによって日本では「これまでは」爆発的な感染拡大を防げてはいます

医療機関としては医療現場を守るためにも原因不明の肺炎患者は絶対にPCR検査を依頼するため、コロナウイルスが原因の死亡者数だけは正しい数字であり、Phase 2のクラスター潰し戦略がこれまで「命を守る」という意味では成果を上げてきたのは事実だと思います。

単に時間稼ぎをして日本での市中感染を蔓延させただけではないか、という声もあると思いますが、私は時間稼ぎにも意味があったと思います。

①医療崩壊を避けるための臨時の大規模感染病床の確保までの時間稼ぎができた(実際に、都や国が動き出したのは3月中旬?だったとしても)

②前々回も伝えたとおり、重症化予防の既存薬の発見や新薬の臨床が、感染拡大の際にも間に合う可能性があります。

③欧米等先行各国には申し訳無いですが、人類共通の敵に立ち向かう世界中の先行事例の知見・体験を参考にすることができます。
(僕の友人のNY在住等海外の友人は、心から日本を心配して感染爆発にならないように現地情報を提供してくれています。)

④東京を1ヶ月ロックダウンすると5.1兆円のGDP損失との試算があります。
1ヶ月遅らせることができれば、人々はほぼ通常生活が送れ、飲食店も会社も通常営業ができ需要と雇用が守れます。


なのでここ2ヶ月、地道にやりつづけたことは無意味ではなかったと僕は思います。

ただ、ここまでは。

感染者については、僕も不思議に思っていました。
何故、PCR検査数を増やさないのだと。

でも実際は陰謀論でもなく現実に複雑で時間がかかり感染リスクのある難しい検査を日本では数をこなすことが物理的にできなかったみたいです。韓国では医療ベンチャーが検査量を支えたようです。

(詳細を知りたい方は下記の免疫学の大家のインタビューを参考ください。僕は納得しました)

PCR検査数のキャパシティが他国に比べ少なく充分に実施できてこなかったので、市中感染が特に都心で蔓延している可能性はどこまでも拭えません


まとめると色んなラッキー(奇跡)とクラスター対策班の地道な作業が奏功してこれまでは何故か爆発が起きなかったただ今となっては市中感染爆発のリスクを都市部は爆弾のように抱えている状況だと思います。

(日本人がBGC受けてたとか、手洗い、マスクなど衛生面の一般的な事由を除いて)

要するに、


・たまたまPCR検査がたくさん出来なかったので、軽症者がベッドを埋め尽さずイタリアロンバルディア地方や一時期の韓国のような医療崩壊をこれまで起こさずに済んだ。(後に韓国は克服)→ラッキー①


ダイヤモンドプリンセス号の受け入れ患者の診断検査からたくさんの疫学データが得られいち早く中国以外の自国の感染医に知見が溜まった(CT検査がPCR検査よりも有効ではないか、など)→ラッキー②


・そしてたまたまそのCTが人口一人あたり世界一導入されていて実質的にtest, test, testできた。→ ラッキー③


・クラスター追跡のような疫学調査作業に、結核の経験などから保健所が比較的慣れていて潰しこみができていた(北海道全体、和歌山有田病院のような収束事例)
→ ラッキー④

ただ、今は、大都市で感染経路不明の感染者が増えつつある中、奇跡的に押さえられてきたクラスター潰し戦略も限界に来ている可能性があります。(台東区で追跡が遅れ始めた等、現場はかなり疲弊し始めているとの専門家会議の報告が上がってきています)

3. Phase.2クラスター潰し込み→Phase.3ロックダウン?へ

ここ東京における数日「感染経路不明の感染者数は「爆発」はしていないものの不気味に増えてます。

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3月3連休の緩んだ結果として、3/20の13日後の本日4/2 くらいから、やはり不気味に数が伸び始めています。4/2の感染経路不明者は33名でした。

私自身は、このペースで感染経路不明が来週どこかで一気に100を超えると、個別クラスター対策は限界を超えたと判断して、緊急事態宣言、徐々に強制力をもったロックダウン(都市封鎖)に動いていくものと考えています。(残念ながら)

4.3/30小池都知事の知事会見の本当の見どころ(Phase 3の足音が聞こえる)

一昨日、小池都知事から臨時の記者会見がありました。

いよいよ、ロックダウンか、何らかの重大発表かと、都民は身構えましたが、「夜の街は控えて」程度の会見に見えたので拍子抜けした人も多かったと思います。

ただ、最後のそれぞれの専門家(クラスター対策班西浦教授、保険福祉保健局内藤局長、大曲先生)の質疑(全文3)まで丁寧に読むと結構、細かい動きが見えてきます。

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西浦教授は、数理モデルでの感染症疫学の権威で天才と言われています。経路不明の感染者がコミュニティの発生でなく夜の接待飲食業ということで、特定業種への自粛要請につなげました。西浦教授は、まだウイルスの制御を諦めていません。

ここ最近の確定患者数の確定日別の患者数の増加を認めてきましたので、正直なお話をすると、私も固唾をのみながら毎日感染者数のカウントを見てきました。
コミュニティーで広く伝播してるわけではないんです。これはとても東京都にとってラッキーなことなんですね。
夜の街での伝播、特定の業種での伝播ということを皆さんに強く要請をしながら止めることができると、まだまだ制御できる可能性があるデータであると判断をしています

また、感染爆発がいつ起きるか判断するために、様々な予兆データも集積して分析検討しているようです。もぐらたたきのような作業だけやっているのではなく、ビッグデータ分析で、いざ感染爆発発生、クラスター対策で収束できる段階を超えたとなると、速やかにPhase 3に移る準備をしている事が伺えます。

皆さんのLINEにも、厚労省からのアンケートが届いたかと思います。重要なアンケートデータですので是非回答してください。

多角的なデータを使ってクラスター対策班で、今、増加傾向にあるのは事実なんですけど、爆発的な増加で警戒すべきものがないということを確認しつつ、その報告をさせていただいてます(西浦教授)
・帰国者・接触者相談センターを通じて受診した外来患者数
・発熱した上で電話相談をして受診した人の数(診断前患者)
・SNSを利用した発熱者の増加の地域別確認

懸命に増床中の医療施

今回のコロナ感染は関係なく、先進各国で医療崩壊は高齢化によって既に起きつつありました。1945年生まれ〜のベビーブーマーが2020年75歳を迎え後期高齢者になるからです。イタリアでは財源不足から過去5年間で700病院を締めています。先進各国は全て高齢化し、医療福祉予算は膨らみ、それらが削減抑制される中、通常患者向けの医療で病床は埋まり現場従事者は既に多忙を極めています。

都内、今、病床数、一般の、精神除く、今10万、約11万床ございます。それと、これは当然のことなんですが、その11万床、日々、通常の医療で、病床もまさに稼働しております。そんな中で、例えば、あらかじめ、例えば1000床、2000床を空のままキープしておくということはなかなか、これは現状の医療を考えると無理なのかな。(知事会見:福祉保健局 内藤局長)

そうしたなか、医師会もついに医療崩壊の危機感から緊急事態宣言の要請を出し始めました。

都庁の現場ではPhase 3に備えて、臨時の隔離病床の確保(目標4,000)を突貫工事で進めています。

感染症指定医療機関だけでなくて、一般の医療機関でも受けていただくということが必要になってきます。ただ、それは先ほど局長がおっしゃったように、一晩ですぐにできるということではないので、今、現場では指定医療機関以外の、一般の医療機関の先生方、あるいはスタッフの方々が、感染症の患者さんを受け入れられるように準備を突貫工事で進めてらっしゃるというところで、すごく大変だと思います。(知事会見:国際医療センター 大曲先生)
今考えているのは、その中で新型コロナ外来の拠点となる病院をつくっていこう。そこにおいては、例えば外来24時間体制にするとか、外来の系列を増やしていく、そういった形でまず機能をアップしていく。(知事会見:福祉保健局 内藤局長)
新型コロナ外来をまだ実施していない病院さんに対しても、一定の整備をすることによって対応できるということであれば、それに対する財政的な支援等も当然考えていきたい(福祉保健局 内藤局長)

国際医療センターの大曲先生は感染症対策の立場で、内藤福祉保健局長は感染症対策以外も含めた都民の医療福祉の責任者の立場で、それぞれ立場は違えど万一の爆発の際にも収容ができるように、通常病院の協力も得ながら病床を増やしていくべく連携しています。

私達は、報道によって、中国で30台の重機がいきなり10日で病院をつくったりしているのをみると、オリンピックで使わなくなった選手村を使えばいいじゃないかとか、わかりやすい発想に飛びつきがちです。(都知事自身もアイデアとしては出してました。軽症者の隔離であれば可能と思います)

でも、病院治療には、ベッドと部屋だけでなく、医療従事者(ソフト)も医療機器(ハード)も薬剤・マスク、手袋、防護服等備品も必要です。
結局は、東京都内の病院で分散吸収していくしかないのだと思います。

残念ながらここ数日で、感染経路不明者の爆発が起きれば、緊急事態宣言に向かい、私の3/26の新型コロナウイルスについて⑥の当初の予測の通り4月の第2週に何らかのロックダウン(段階を踏むにしても)に向かわざるを得ないです。

ここ数日、何が起きるか、私にもわかりません。

「皆さん、たとえ流行があっても冷静に受け止めて乗り越えましょう。皆さんとならできると信じてます。僕は最後まで流行抑止をあきらめませんが、皆と一緒に頑張りたい。乗り越えよう」(西浦教授)

冷静に受け止めてその時その時にベストな行動をして乗り越えていくしか有りません。

以上、事実の把握と構造と文脈の理解による個人的な分析と仮説です。

長くなったので、東京や大阪における緊急事態宣言、ロックダウンはどのようになるかについては、次回にしたいと思います。




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