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日銀が為替介入を実施!規模や今後の見通しについて

こんにちは、高橋勇気です。
 
さて本日は2022年9月22日17時過ぎに日銀が実施した為替介入について書きたいと思います。
既に日経新聞やBloombergにて報道されておりますので、今回は独自の視点から①為替介入の実施方法②為替介入の規模③今後の見通しについて書きたいと思います。

また別件ですが、以前、為替の基礎知識についても書いております。
メガバンクの元外国為替トレーダーが語る、FXをやる前に絶対に知っておきたい11個のこと

①    為替介入の実施方法について

まずは実施方法についてです。よく誤解している方がいらっしゃいますが、為替介入の権限を持っているのは日銀ではなく、財務省です。最終決定は財務大臣の管轄になります。
“日銀が為替介入を実施”とのニュース記事を良く見ますが、半分正しく、半分は間違いです。
日銀は財務省から委託された事務を行っているに過ぎません。そのため、財務省からの依頼に基づいて為替介入を実施したに過ぎないのです。
 
さて具体的な為替介入の実施方法ですが、以下のような流れになります。
 

具体的な為替介入のフロー

財務大臣の指示
→財務省担当者が日銀の担当者に連絡
→日銀担当者が市場参加者(主にはメガバンク)に電話
→日銀担当者が為替ディーラーに対して、今のドル円のレートを確認(これがレートチェック)
→為替ディーラーに対してドル円を売るよう指示
 
となります。
 
そのため、確かに日銀が為替介入を実施したように見えるのですが、厳密には日銀は事務を担っただけであり、その判断主体は財務省になります。 

②    為替介入の規模について

今回の為替介入の規模については今のところ公表されておりません。しかし前回2011年の為替介入時を参考にして、その規模を推し量ることができます。
 
まとめると以下のようになります。

前回と今回の為替介入の比較

【前回】介入前:75.30円→介入後:79.20円、介入規模:9兆円
【今回】介入前:145.80円→介入後:144.00円、介入規模:?兆円
 
今回の時系列は以下になります。
17時00分:ドル円が145.80円付近まで上昇
17時04分:ドル円が144.00円付近まで急落
17時15分:神田財務官が「為替介入を行った」と発言
17時41分:ドル円は141.00円割れまで下落
 
今回の為替介入は17時15分に神田財務官から発言が出ている通り、実際に日銀が動いたことによる影響は17時からの4分間と見るべきではないでしょうか。
その後のドル円の急落は、為替介入を実施したとの報道を受けて、ドル円をショートしていた市場参加者(ヘッジファンドなど)のショートポジションの解約や新規でのショートポジションの構築によるものでしょう。
 
よって日銀による為替介入の規模を推し量る上では17時からの4分間の値幅に注目して考察していきます。
再掲ですが、以下の値動き率になります。
 
【前回】介入前:75.30円→介入後:79.20円(5.2%)、介入規模:9兆円
【今回】介入前:145.80円→介入後:144.00(1.2%)円、介入規模:?兆円
 
よって単純に考えるのであれば、9兆円×(1.2%/5.2%)=2兆円
 
前回と今回とではドル円のレートがほぼ2倍異なるため、一概比較はできませんが、2兆円~4兆円程度の介入を実施したのではないでしょうか。
前回と比較するとかなり小規模に思えます。

③    今後の見通し

さて今後、為替介入はあるのでしょうか。
私の個人的な意見になりますが、ドル円は1日で1円以上動き、145円台まで上昇した際には実施してくると思います
理由は以下の通りです。

理由①レートチェック時も介入の実施も145円付近であったため。
理由②財務省は為替介入の理由を為替の水準ではなく、“過度な変動”としているため。
 
表向きの理由ですが、今回の為替介入の理由は“過度な変動を抑えること”にあります。よって今後、日銀が介入するかどうかは、ドル円が過度に動いたかどうかが判断軸になると思われます。

そのため、例えば、緩やかに円安傾向となり、145円台まで到達したとしても、それは介入理由にはならないでしょう。
一方で急速に円安に動いたとしても、水準が145円付近まで上昇していない場合には、為替介入は乱発するようなものではないので、実施しないでしょう。
よって上記の理由2つを満たすときに実施すると思われます。
 
海外のほぼ全ての中央銀行で利上げが実施されている中、日銀のみが金融政策を変更しておらず、世界でマイナス金利を採用している国は日銀のみとなりました。

投機筋からすると“どうせ日銀は介入できないだろう”との見方から円売りが続いていたわけですが、日銀が実際に為替介入を行ったことを受けて、ブラフではないことが分かり、投機筋によるショートポジションの構築も難しくなったと思います。
 
一方で日米金利差の観点や日本の経常赤字を踏まえると円安方向のトレンドは継続する可能性が高そうです。
よって個人的な見通しとしては、143円から145円のレンジで徐々に145円を試す展開を予想します。

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高橋勇気

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