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【2022年9月19日追記】メガバンクの元外国為替トレーダーが語る、FXをやる前に絶対に知っておきたい11個のこと

【2022年9月19日追記】
2022年1月23日に追記しております。
このところドル円が以前とは異なる動き方をすることが多くなってきたため、その点を追記いたしました。

皆さん こんにちは
高橋勇気です。

本日は「メガバンクの元外国為替トレーダーが語る、FXをやる前に絶対に知っておきたい11個のこと」について書きたいと思います。

私はメガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)の1つで外国為替取引のトレーダーとして働いておりました。現在は別の資産の運用業務を担当しておりますが、キャリアの大半を外国為替取引に従事しており、そこで培った知見をこのnoteを通して皆さんにお伝えしたく思います。

私は学生時代に日本株とFXをやっておりました。もちろん当時は真剣に考えて取引していたのですが、今思うとFXをやる上で必要なルールさえも知らずによく取引していたなと心の底から思います。恥ずかしながら怪しいブログに書かれている「絶対に儲かる取引手法」のような記事を読み漁っておりました。

それでもFXが好きであり、トレーダーを採用している新卒枠に応募しました。
大学卒業後、メガバンクに入社し、外国為替のトレーダーになることができたのは幸運だったでしょう。

そこで思い知らされたのです。自分は大学時代、3年程度FXをやっておりましたが、基礎的な知識も知らず、ルールさえも分からず、適当に取引していたことを。
プロとして経験を積むうちに当時の取引はただのギャンブルだったと思うようになりました。

先日、なんとなくnoteに他の方が公開しているFXに関する記事を読んだのですが、やはりプロとして働いてきた立場からすると、あまりにもずさんな記事が多い印象を持ちました。全部がそうとは言いませんが。
当時、大学生だった私が読んでいたような記事ばかりだったのです。

これが、私がnoteを書こうと思った動機です。

基礎的なことを知らずにFXをやっている当時の私のような人を少しでも減らしたい。
自分の持っている知識や経験を、FXをやっている人に伝えたい。

この記事はかなり基礎的な内容からディーリングルームで過ごした人にしか分からないことまで幅広に書きました。

また、読み物としても面白く感じてもらえるよう配慮したつもりです。イギリスのEU離脱を問う国民投票や日銀がマイナス金利を導入した日の値動き、為替トレーダーがどのような生活をしているかなども記載しております。

これからFXを始める方にとってはもちろんですが、既にFXを始めて何年も経っている方にとっても新しい発見があるのではないでしょうか。

私は、FXは非常に面白いものだと思っております。
私の文章を通してFXがより楽しく、好きになってもらえると嬉しく思います。

さて前段はここまでにして、そろそろ本題に移ります。

私のnoteをご覧いただいている皆さんはFXに興味をお持ちということでしょう。本日は外国為替証拠金取引(FX)を行うにあたって、これだけは知っておいてもらいたいことを書こうと思います。
この記事には巷にあるような「絶対に儲かるFX」や「資産を1ヵ月で10倍にした取引手法」のような内容は含みません。そもそもFXは絶対に儲かるなんてことは絶対にありません。また、資産を1ヵ月で10倍にすることも1度ならできたとしても、それを持続させることは限りなく不可能でしょう。FXのプロとして働いてきた私が断言します。

まず、皆さんは外国為替市場の1日の取引高をイメージできますでしょうか。
答えは約800兆円/日になります。ちなみに日本のGDPは500兆円/年ですので、日本が1年かけて生み出すGDPの約1.6倍の額がたった1日で取引されているわけです。すごい数字ですよね。

次に簡単ですが、私のトレーダー時代の1日を書きたいと思います。

【トレーダーの1日】
6:30 
会社に到着。前日のロンドン市場やニューヨーク市場の相場動向を確認いたします。その際、ニューヨークオフィスの方と情報共有することもしばしばありました。
印象的だったことを1つ書きます。
EU離脱の国民投票の開票作業が東京時間に行われる日のことです。ニューヨークから仕事を引き継ぐのですが、その際、普段は何も話さないアメリカ人が「Good Luck!」と言ってきました。
その日はまさに戦争ですからね。ちなみにディーリングルームには新聞記者やテレビ局の人がカメラを回しておりました。

7:00
東京時間スタート。場合によってはオセアニア時間と言うこともありますが、いずれにせよアジア時間での取引が始まります。

9:00
一般事業会社の財務担当者から取引依頼が大量に届き、非常に市場が活発になります。

9:55
公示取引です。公示取引については後述します。
トレーダーはこの9:55の一瞬のために会社に来ると言っても過言ではありません。東京時間で最も取引が活発になる時間です。

10:00から16:00
取引量は低下します。お客様から届く取引依頼を捌きつつ、自己ポジションを保有して収益獲得に向けてリスクを取ることもあります。

16:00
欧州勢が参入することで取引量が増加します。この辺りから東京時間はあまり動かなかった欧州通貨(ユーロやポンド、スイスフラン等)の動きが活発になります。

18:00
各自、帰宅しますが、市場を動かすイベントがある場合は残りますが、基本的には帰宅です。
ちなみに帰宅後も相場を見続けます。重要指標の発表や中央銀行の要人発言には注目です。

さて、このような生活を長いことしておりました。
皆さんはどのように感じられましたでしょうか。私はすごく楽しい仕事だと思っております。特に世の中の全ての情報は基本的に即座に市場価格に反映されるため、世界の最先端を進んでいる感覚を味わうときがあります。また会社のお金を使ってですが、リスクを取るときはアドレナリンが出ます。

前段が長くなってしまいましたが、いよいよ本題です。

皆さんがFXをする際、絶対に知っておいてほしいことは11個あります。
このnoteは決して安くはない金額ですが、外国為替のトレーダーをやっていたからこそ書ける内容になっております。

ここに記載されている11個のことを理解するだけで、数年間、FXをやっている人よりもFXの知識は付くと思います。
私が大学生の時に3年間FXをやっておりましたが、ここに記載のある内容の3つしか分かっていなかったです。その3つについても、なんとなく分かる程度の理解であり、到底知識としては身に付いておりませんでした。

それでは始めましょう。

1、 通貨には世界共通の正しい順番や呼び方がある

通貨の順番について

まず通貨ペアには呼び方の世界共通の順番があります。
一般的にニュースなどでは「円ドル」ではなく、「ドル円」と表現されております。また同様に「ユーロ円」や「ユーロポンド」と表現することはあっても「円ユーロ」や「ポンドユーロ」と表現することは原則ありません。

なぜでしょうか。答えはシンプルです。

通貨の順番を決めておかないと取引する際、誤解を生みやすい上、分かりにくいからです。

そもそも「ドル円」のレートとは1ドルを何円で買えるかを示します。つまり、ドル円のレートが100円の時、「ドル円を買う」とは、「1ドルを買い、100円を売る」ことを意味します。

勘の良い方なら分かったかもしれませんが、「円ドル」と表れていた場合、1円を何ドルで買えるかを示します。つまり、「ドル円を買う」と「円ドルを買う」では売買する通貨が真逆であり、そのためレートも逆数になってしまいます。

ドル円のレートが100円のなら、円ドルのレートは0.01ドル(=1÷100)となり、一瞬の判断が必要になるトレーディングの世界では分かりにくいことこの上ないのです。場合によっては担当者が勘違いすることにより、売買する通貨を逆に認識してしまうとかなり致命的なことになります。端的に言うと多額の損失が発生するかもしれません。このような誤解を避けるため、世界共通認識で通貨の順番が決められております。

【通貨の順番】
ユーロ(EUR) →イギリスポンド(GBP) →オーストラリアドル(AUD) →ニュージーランドドル(NZD)→米ドル(USD) →カナダドル(CAD) →スイスフラン(CHF)→日本円(JPY)

メジャー通貨の順番はこのような感じです。主にG10通貨と呼ばれてるものには、上に挙げた通貨以外にスウェーデンクローナ、ノルウェークローネ、デンマーククローネがあります。

このように、通貨の順番は明確に決められております。このルールは世界共通認識になりますので、ぜひ覚えておいてください。
そのため、最初にお伝えした通り、「ドル円」や「ユーロポンド」と言うことはあっても「円ドル」や「ポンドユーロ」と言うことはありません。

余談ですが、なぜこのような順番になったのでしょうか。この記事を読んでくださった方の中には「基軸通貨のドルが一番じゃないの?」と思った方もいるでしょう。

まず一番左側の通貨はユーロです。この理由はすごく単純で一番新しい通貨だからです。EUがユーロを作る際、ドイツマルクやフランスフランからユーロへの換算レートを考える必要がありますが、分かりやすさのためにユーロを一番左側にしました。
次にポンドが2番目の理由ですが、第二次世界大戦時の基軸通貨がイギリスポンドだったからです。
オーストラリアドルとニュージーランドドルは当時、イギリスの植民地であったため、ポンドの次の並び順になったのです。
この辺は通貨の歴史と関連があり、非常に面白いですよね。

そしてようやく米ドルが来ます。
日本円が一番右である理由はシンプルです。単位が大きいからです。つまり1ドル100円と言うのと、1ドル0.01円と言うのでは分かりやすさが全く違います。そのため、日本円は一番右です。

若干話がそれましたが、通貨には順番があるという話でした。
取引する際やニュースを読む際は必ず、この順番を認識ください。
もし他のFX仲間が「ドルユーロ」と言っていた場合は上の順番の話をしてあげてください。

通貨の呼び方について

通貨の順番の話は以上ですが、通貨の呼び方の話をしましょう。
「オーストラリアドル円」や「ニュージーランドドル円」等と言っていると長過ぎるため、一般的に外国為替の市場参加者の間では通貨にニックネームみたいなものを付けて、それを呼ぶことで会話をスムーズにしています。

例えば
「オーストラリアドル円」なら「オージー円」
「ニュージーランドドル円」なら「キウイ円」
になります。オージーは聞いてことがある人も多いでしょう。オージービーフ等で使われている通り、「オーストラリアの」という意味です。
それではニュージーランドのキウイとは何でしょうか。こちらはニュージーランドの国鳥の名前がキウイ(KIWI)であることから、外国為替の世界でも「キウイ円」と呼んでおります。
なぜ国鳥の名前が外国為替市場で呼ばれるようになったかは分かりません。
そのため、「オーストラリアドルニュージーランドドル(AUDNZD)」のことを「オージーキウイ」と呼びます。

その他の通貨はそのまま呼びますが、カナダドル等のように通貨名にドルが入っている場合はドルの発音を省略します。
呼び方はこのような感じです。

EUR→ユーロ
GBP→ポンド
AUD→オージー
NZD→キウイ
USD→ドル
CAD→カナダ
CHF→スイス
JPY→円

よって通貨ペアの呼び方はこんな感じです。基本的に各通貨の呼び方を合わせるだけです。
GBPAUD→ポンドオージー(略してポンジーと言うこともある)
NZDCAD→キウイカナダ
USDCAD→ドルカナダ

ちなみにGBPUSDはもちろんポンドドルと呼びますが、ケーブル(cable)と呼ぶこともあります。
かなり前、アメリカとイギリスの間には海底ケーブルが敷かれていたことがあり、それに因んでケーブルと呼ぶようになりました。

ポンドドルではなくケーブルと呼ぶとちょっとカッコいいかもしれません。ただ、本職として外国為替市場に携わった人でないと聞かない言葉なので、あまりお勧めはできませんが、本職の人と会った際は使ってみてください。

2、 通貨高と通貨安について

先程は通貨には順番があるという話をしました。次は通貨高と通貨安についてです。
「ユーロ円が上昇した」とは「ユーロ高、円安」になったことを意味します。ユーロにとって良い材料となるニュースが公表された、もしくは円が売られるニュースが出たのでしょう。

先程の順番が分かっていると、理解が簡単です。
「ユーロ円が上昇した」が示す意味は「ユーロが円に対して上昇した」です。つまり「上昇した」の主語はユーロになります。よってユーロ高、円安を意味します。
「ユーロ円が買われた」も同様です。「買われた」の主語はユーロになります。よって同じようにユーロ高、円安を意味します。

イギリスが国民投票によってEU離脱を決定した日の値動き

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