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ふゆのはるのおわる

どこかが燃えているみたいだ。香りのしなくなった金木犀がコンクリートを鮮やかにして、私の冬の春がちる。人々が縮こまり震えていて、あなたのなかの熱にふれる。どこかで石油ストーブが燃える。あなたの心臓ももえる。手足がこおりつくみたいだとはいうものの、実際問題こおりついている。わたしの心はずいぶん先に走っていくのに身体だけいつも置き去りになるね。たぶん、きっとあの道の先でだれかが瞬きをする間にまた春がきて、きづけばピンク色の花びらがコンクリートを消し去って、私の春の冬がちる。子どもがかけまわっていて、わたしはあなたの指先が遠くなってしまうようです。どうやらあのとき感じたことは春の陽が燃えているということだから。

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