「頭が柔らかい人」の習慣
「頭が柔らかい人」とはどういう人でしょうか。もう少し具体的なことをいえば,発想力があったり,応用力があるという意味で「頭がいい」人は物事をどのように捉えているのでしょうか。別の言い方をすれば,無意識のうちに,どのように考える習慣がついているのでしょうか。
『東洋経済オンライン』に興味深い記事があったので紹介したいと思います。この記事の結論は,
「物事を多角的に捉える習慣がある人」
とのことでした。それを,東大受験生は入試問題を通じて鍛えているというのが興味深い点だと思います。たとえば,有名な問題で,1983年の東大日本史の第1問では過去にこのような問題が出題されています。
次の文章は、数年前の東京大学入学試験における、日本史の設問の一部と、その際、受験生が書いた答案の一例である。当時、日本史を受験した多くのものが、これと同じような答案を提出したが、採点にあたっては、低い評点しか与えられなかった。なぜ低い評点しか与えられなかったかを考え、(その理由は書く必要がない)、設問に対する新しい解答を5行以内で記せ。
「採点者の立場に立つ」という点で,さまざまな視点から捉えることが求められています。
この記事では,他にも地歴の問題から例を挙げて説明しています。東大の入試は地歴だけでなく,他教科でも同様です。
東大入試では「細かい知識」ではなく,
「基本的なこと・根本的なことの理解」
「知識の活用・思考力」
が求められています。「基本」=「簡単」と勘違いする人が多いですが,
「基本の理解」とは「本質的な部分の理解」であり,最もハードな部分
です。東大の問題を解いていると,応用力をつけるために必要なことは,たくさん問題を解いたり,難しい問題を解くことではないと実感します。「基本事項を覚える」のではなく,「基本事項を掘り下げていく」ことだと。
英語の例を挙げてみましょう。英語の問題でも,しばしば熟語帳に載っていない難しい熟語が答えになることがあります。すると,
「熟語の問題で間違えるんですけど,熟語帳をもう一冊やったほうがいいですか?」
と聞いてくる学生が必ずいますが,心の中で,「東大のメッセージをわかってないな…」と思ってしまいます。東大は知らない熟語を,基本単語の語義や前置詞のイメージから推測させようとしているのです。いくら熟語帳をやっても出てこないものをあえて答えにしています。熟語の学習のときに,
丸暗記ではなく,基本単語や前置詞のイメージから捉える習慣がついていますか?
ということが出題者のメッセージとしてうけとれます。これこそが,学習の姿勢として必要なことだということです。実は,
「暗記」だと決めつけていた,単語や熟語の基礎でさえ,「掘り下げる」ことができる
のです。
東大受験生は,この時点で他大の受験生とは違う「視点」を獲得しています。東大の入試問題を通じて「多角的に見る習慣」がつくということです。だから「頭も柔らかく」なるのでしょう。
東大の入試問題から学ぶことで,「教える側」も幅が広がり,「教えられる側」も学習に対する姿勢やものの見方が変わります。教育的効果が非常に高いのが東大入試です。東大は,東大受験生を指導していなくても,受験生を指導する側は解くべき大学でしょう。
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