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読んだ本を整理する 3月編

 3月編とか書いてすぐに飽いて嫌になり辞めると思うのだが、読んだ本の内容をじわじわと忘れつつある。それがなんとなく嫌な気持ちになってきたので、備忘録がてら感嘆な感想とともに整理しようかと思う。


① 『ウィトゲンシュタインの愛人』(著:デイヴィッド・マークソン)

 よくわからない内容だった。終末世界でひとり生き残った女が、芸術家・作家・思想家のトリビアを入り混ぜつつ、自身の日常や過去のことを手繰り寄せ書き連ねていくというもの。取り留めもない・身も蓋もない文章の羅列が連連と続き、この文章の山から何を思い何を考えるのかを掴むことができないまま終わってしまった。向き合い方に失敗したなと思う一冊だった。ただ一つ理解出来たことは、人は誰とも関わることない生活を送るとこの本のような支離滅裂ながらも整然とした文章を拵えるかもしれないということだった。

②『ゴランノスポン』(著:町田康)

 町田康氏の本を何冊か読んでいて、氏が認める文章の魅力はなんだろうと考えた際に、荒唐無稽な物語ではなく、言葉選びにより発生するリズム感ではないかと思う。カオスな展開は読んでいて笑いが発生するのだが、その展開ばかりが続くとダレが生じてくる。漫才で言えば掴みのボケが突っ込み不在で無尽蔵にボケ続けている状態だろうか。氏が各文章にはそのダレというのを一切廃し、または意図的に発生させることにより独特のリズム感を作り出している。その御蔭で、どんな展開でも飽きることなく享受できる。そのリズム感を十二分に享受できる短編集で面白かった。

③『人間はどこまで家畜か──現代人の精神構造』(著:熊代亨)

 『自己家畜化』という”人工的な環境のもとで、協力的な性質を持つように自己を進化させる”言葉をキーワードに、なぜ社会に溶け込めない症状を持つ人達が現代社会には増え続けているのかを探った本。鬱を患った人間(今も治ったとは思っていない)なので、刊行前から気になっていたので購入。結果から言うと、立派に自己家畜化を果たしている側の人間であるなと思ったし、現代で生きづらい人はなぜ苦労しているのかを生物学・精神学観点から知ることが出来た。

④『走馬灯のセトリは考えておいて』(著:柴田勝家)

 『信仰』をキーワードに、バーチャルYouTuberや美少女ゲーム、メタバースにAIいった現代的なトピックを扱い6つの短編が収録。露骨な信仰心を見せることが無い現代の日本において信仰とはなんぞやと考えることがあったのだが、きっとその疑問に対して出された答えの一つがこの物語ではないかなと思う。推しという言葉があるが、その言葉が信仰とよく同一のものとして扱われる。以前であればその事に疑問を持たなかったが、推しと信仰は一線を画す。信仰は、特定の行為に耽ることで信じる対象を創り上げていくことなのだろう。では、推しは? 知らん。

⑤『アウター・ダーク』(著:コーマック・マッカーシー)

 大変に素晴らしかった。以下、長文感想。『通り過ぎゆく者』と『ステラ・マリス』も購入したので読むのが楽しみ。

⑥『馬鹿と嘘の弓』(著:森博嗣)

 以下、感想と呼べない感想。今更になって森博嗣熱が上がって来ているのだけれど、ミステリーには全く興味がないのでウジウジモゾモゾしている。

⑦『人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいいか』(著:森博嗣)
 『The Void Shaper』(著:森博嗣)

 今更になって森博嗣熱が以下略。森博嗣の好きなところは小説以外をも手掛けているということだ。作家性を理解するだけであれば物語に没頭すればいいが、所謂新書などの啓発染みた文章では作家個人のことを理解する事ができる。おかげで『The Void Shaper』におけて主人公はなぜこう考えなぜ行動したかの原理をすぐに考察することが出来たし、なぜこういう風景描写を挟む必要があるのかをすぐに理解することが出来た。『人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいいか』は、抽象的・客観的な思考どうすればいいかについて抽象的に執筆されたものであるが、森博嗣が手掛ける物語を紐解くための副読本としても機能していて面白かった。


表紙が良かった①


表紙が良かった②

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