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悪魔のビールを飲もうじゃないか。

デュベルというベルギービール。
訳すと「悪魔のビール」

この長期熟成の上面発酵ビールにはまって数年が経つ。果実を彷彿させる香り。しかし飲むと一転、香りとは全く別の顔を覗かせる。ここで、ご注意。日本の量産ビールのように楽しんではいけない。ごくごく流し込まず、舌と喉をゆ~っくり通過させる。賛否はあるだろうが、上面発酵愛好者にはマストに近い作法だ。それにより、この麦酒特有の芳醇で複雑な味を堪能できる。

そして最後の1㎝を残す。ここで飲み手は悩む。デュベルが用意した踏み絵である。底面に発酵で燃え尽きた酵母を含む濁った澱が沈殿しているのだ。「これを飲むか飲まないか」は、飲み手の自由。だが、ネットを散見すると飲まない派がマジョリティらしい。

でも、僕は飲む。苦い濁った酵母の塊は苦手な人も多いかもしれない。しかし創業以来100年以上、醸造所独自で純粋培養してきた酵母なのだ。ビールの味とともに文化歴史も一緒に体感したければ、ぜひ飲んでみてほしい。僕は最後の1㎝を飲むために、1本のかりんとうを用意する。酵母の苦みとかりんとうの甘みは相性が抜群。食後のデザートというと大げさだけど、十分「締め」となる。

従来ビールは発酵を2段階に分けており、メインの一次発酵とは別に、二次発酵は貯蔵を通じて再発酵を進めると同時に、CO2をビールに溶け込ませる役割を果たす。その期間は1ヶ月程度が通常だけど、デュベルの場合、その倍の2ヶ月を二次発酵に費やす。そのせいかわからないけど、アルコール度数は8.5%とかなり高め。酵母も精根尽き果てるほどの酷使ぶりである。それ故、常温でも十分楽しめる、いや、むしろ常温の方がおいしく味わえるビールなのだ。

ベルギービールの多様性に興味を覚え、修道院系やホワイト系も試したけど、やはりデュベルに戻る。悪魔が恋しくて仕方ない。もうこのビールを週一で飲まないとやる気が出ないレベルまで来ている。裏ラベルを見ると、「悪魔が誘う、天国の味。」とある。言い得て妙。ということで今日も悪魔と心中。

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