見出し画像

スローライフなんてクソくらえ

スローライフなんてクソ食らえ
と思っていた、私の話。

どうしてかって?

スローライフを選択できるのは環境に恵まれた人間だ。
精一杯働いて結果を出し、社会に貢献すれば金に不自由することなく生きることができた人たちだ。
それを諦めてわずかな稼ぎでただ慎ましく暮らすなんてただの負け犬じゃないか。

さらに、彼らは「環境に優しい暮らし」を謳っているらしい。アホか。
地球温暖化を止めるために一般人がキャンペーンをするのと一緒だ。本当に地球温暖化を止める力を持つのは国であり政治家であり大企業のトップであるいわゆる”勝ち組”だ。
本当に世界を変えたいのなら自分がそういう立場になることに対して全力を捧げるべきだ。


欲しいものを諦めて、なりたい自分にもなれず、
ただ現状に甘んじている全ての大人。
競争に敗れ社会的責任から逃げた人間にできることなんて何もない。

だから勝ち続けるしかない。

そう思っていた。


世界船には、
海外からの参加青年が半数近くいることのほかに、日常と大きく異なるところが二つある。
ひとつは、船外との連絡手段がないところ。
もうひとつは、相手を全力で褒めたり、支えあったりするカルチャー。

たくちゃん2

陸上で生活していた時は常に何かしらの“やるべきこと”に追われていたけれど、船の上では電波が通じないから、当たり前のように全てから解放されて、誰かと話す時間が圧倒的に増える。

おまけに、みんなが私を肯定してくれるからとても居心地がいい。


そんな生活を続けているうちに、

みんなが無条件で認めてくれて、どんな夢を語っても笑われない、そういう一休みできる場所が私たちの人生には必要なんじゃないか? 


と思うようになった。


走り続けなければ沈んでしまう、日々の生活から離れて。
様々な人の考え方や価値観に触れ、これまで生きてきた自分を振り返る。
今一度自分のいる場所を確認し、航海が終わってからも外の荒波に立ち向かっていけるように。


あれ、これってもしかしてスローライフ?
そうか、こういうことだったのか。


世界船の経験から気づいたことがある。

ひとつめ。
世の中にはたくさんの人がいて、それと同じだけの価値観がある。
そしてそれぞれの価値観の中には、一人ひとりの真実が息づいている。
だから、自分の価値観と違うからといってあいつはアホだ、と片付けてしまうのはあまりにも安易だ。

ふたつめ。
社会問題に対して声を上げること、行動することは重要だ。なぜなら、一人でも多くの人が共感することによって、世論は動いていくから。
特に地球規模の問題に対してより影響を与えるのは、一人の権力者ではなく問題意識を持った大勢の一般人だ。


そういえば、この連載企画のテーマはLife-changeについてだった。

とは言っても正直なところ、
世界船に乗る前後で私の目標や人生設計は変わっていない。
じゃあ一体何が変わったの、と聞かれてもやっぱりうまく説明できない。

けれど、もし世界船に参加しなかった未来があるとしたら、
それは私がこれから歩む未来とは全く違うんだろうな。

という確信にも似た感覚が、ある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?