武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第10回  紺野登氏

20190911 紺野登

多摩大学大学院教授、慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授、KIRO(知識イノベーション研究所)代表。一般社団法人Future Center Alliance 早稲田大学理工学部建築学科卒業、博士(経営情報学)。「知識生態学」をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、都市開発、ワークプレイス・デザインなどの実務にかかわるとともに、イノベーション経営、フューチャーセンターやリビングラボなどの啓蒙普及に取り組んでいる。著書には『ビジネスのためのデザイン思考』、『知識創造経営のプリンシプル』『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか(目的工学)』などがある。(Bizzin https://bizzine.jp/person/detail/29/ より引用)


1 「構想力の方法論」

この大学院を受験するにあたり、説明会に参加した際に紹介された一冊に紺野氏の『構想力の方法論』があった。実際に購入したが、ちびちびと読み進めていた為、読破していない状態だったが、実際の筆者に会ってお話を伺えるのは有難いことであった。

さて、紺野氏は、今の日本に最も足りないのが「構想力」と話す。国民は、目の前の生活にそこそこ満足していても、誰も自分の人生の責任をもっていない。最終的な責任を、国や会社や組織といったものに任せている。結局のところ、自分の責任は自分でとるという思いは、自分自身が主体となって物事を見ないと生まれてこない。そのような想像力の下支えする「構想力」が今求められている。この「構想力」がないと、世界はダメになる。文化が失われるということで、当事者意識や文化面に触れているのは、今までの講師の方のお話とも共通していく。

目的と現実を埋めることが構想力の実践で、自分の知識をどのように最適に活用するのか判断し、社会をより良いものに変えていくということが「構想力の方法論」では重要になる。イノベーションも、このプロセスの中で生まれていくという。


2 「新たな倫理」

技術が高度化していくと、今までに無かったものが生み出され、それが新たな倫理の問題を生むことになる。(例えば、技術的に女性同士で子どもが産めるとなっても倫理的にいいのかとか、クローンの問題とかもそうだろう)

その際、自分のバイアスに問いかける「クリティカルデザイン」の視点が大切で、デザイナーもその役割を担っていく可能性があるという。講義の中で、問題解決型のデザイン思考のから問題提起型のアート思考へとシフトしていく流れの中で、「倫理」のもつ重みが増すと考えられる。


まとめ

質疑応答の場面で、ある種の想像力をもって来るべき社会像を構想したとしても、目に見えないレベルでの「企み」が自分より強い権力の者で構想されていたら立ち向かえないというお話をした。まさに哲学教室のような、今までのクリエイティブリーダーシップ特論とは、少し違う形での議論に新鮮味があった。

しかし、本来は新しい事業を行ったり、イノベーションを創出しようとなった時には、本当の意味での広い視点や正義感、倫理観、道徳観が無ければならないと思う。そういった意味では、哲学的なアプローチも非常に重要なものだと痛感した。

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