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ジャニー喜多川氏性被害報道:被害者の男性たちへの共感とエールの言葉

週刊文春、東京新聞、TBSなどの主要メディア、また独立系のネットメディアが、ジャニー喜多川氏(故人、2019年に死去)が長年にわたり若い男性タレント候補に行ってきたセクシュアルハラスメントの実態について、力を入れて報道している。

ジャニー喜多川氏は日本ではもう説明する必要もない、戦後日本のエンターテインメント業界の一翼を担ってきた男性アイドル事務所、「ジャニーズ事務所」の創業者である。

英BBCの報道番組「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」(2023年3月に放映)を通して、ジャニー喜多川氏が生涯にわたり行ってきたタレントの卵たちへのセクシュアルハラスメントが、(あらためて)日本そして世界に発信された。

これに連動するように国連人権理事会が動き出し、8月の記者会見では、政府を含めて責任ある立場の組織がジャニー喜多川氏による虐待への被害者の実効的救済を行うよう求めた。

これに伴い、国内のメディアも(ようやくと言うべきか)相次ぎジャニー喜多川氏が行ってきたセクハラの実態を報じるようになった。

なお、次がYouTubeで公開されているBBCの番組である。BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】

BBCのドキュメンタリーでも述べられているが、ジャニー喜多川氏による若い男性たちへの性的虐待が表沙汰になったのはこれが初めてではない。例えば、1999年、週刊文春はジャニー喜多川氏の性的虐待の証言を記事化した。
しかし、ジャニーズ事務所のメディア界に対する経済的影響力の大きさから、当時、新聞やテレビなどの大手主要報道機関は無視した。

ジャニーズ事務所側は週刊文春に対して記事に10個所の間違いがあるとして訴えたものの、裁判で9個所は真実であるとされ、週刊文春側がほぼ全面的と言っていい勝訴を勝ち取っている。

■言いようのない「生きづらさ」の感覚は、虐待被害者の共通的な特徴

私はBBCのドキュメンタリーを含め、最近増えてきたジャニー喜多川氏の性的ハラスメントに関する一連の報道に目を通してみた。被害者である男性が、被害の後にいわゆるトラウマ的な症状に苦しみ、その後の人間関係形成などに様々な影響を与えている様子が、よく伝わってくる。

私は被害者である男性たちに深く共感した。併せて、自分が過去に苦しんできたいわゆる「生きづらさ」を再度認識し、深く思うところがあった。

その理由は、このnoteでも触れてきたが、私は過去、母親による一種のセクシュアルハラスメントに遭い続けてきたためだ。

母親によるセクハラの影響からか、私は過去の人生において長く、統合失調症に類する精神状態に悩まされてきた。詳しくは過去の3つの記事をご覧頂きたい。

頭の中で聞こえる「自分ではない声」の原因は?|高下 義弘(Yoshihiro Takashita) (note.com)

頭の中に「自分ではない声」を作り出した、母親のハラスメントについて|高下 義弘(Yoshihiro Takashita) (note.com)

「毒親」の真実に向き合ったら起きたこと|高下 義弘(Yoshihiro Takashita) (note.com)

私が経験してきた、母親によるセクシュアルハラスメントの実態をもう少し具体的に説明すると、しつこくなでられたり、接吻されたり、また友人などの前で幼少期の名前でしつこく呼ばれたり(独り立ちしたい男の少年にとってはとても不名誉なことだ)、といった行為が主体であった。

人によっては「それくらいでセクハラと言うのか。大したことはないのではないか」という見解を述べる人もいる(このような見解を述べる人には、意外に女性が多い)。

しかし、肝心なのは、それらが子どもながらに持っていた私の個人的な意志とは関係なく、繰り返しそしてしつこく行われていたことであった。

なお、ジャニー喜多川氏の性的虐待も、彼がホモセクシュアルであるということが問題ではない。どの性を持つ人に対して性的な関心を持つかは本人の自由であるためだ。それよりも重大かつ本質的な問題は、ジャニー喜多川氏が備えていた社会・経済面における優越的な立場を使って、自らの意志の表明がしづらい10代の少年たちに対して、ほぼ強制的に、しかも相手によっては複数回にわたり、しつこく行われていたところにある。

話を少し戻すが、私にとって母親の「妙なかわいがり」と、私の拒否行動に対する否定(詳しくは過去のnote記事をご覧頂きたい)は、私の人生に長くつらい苦しみをもたらした、私というひとりの人格への否定行為であり、その点で間違いのないハラスメントであった。また、疑いなく、親という優越的な立場を利用し日常的に行われてきた、密室における人権侵害の一種であった考えている。内容や質は異なるが、この点ではジャニー喜多川氏が男性タレントたちに実行してきたハラスメントと共通している。

上記3つの記事でも触れたが、母親による「あの気持ち悪い行為や態度」がセクシュアルハラスメントだと真正面から認識したその瞬間、長年――いや物心ついた頃から自分を悩ませていた「自分を責める声」が消えた。この内的体験はあまりにもリアルだった。

こうした主観的な変化に対して、疑いを持つ向きもあるかもしれない。しかし、私は20代の終わりから瞑想を20年間、ほぼ毎日続けてきた。自分の意識下でどんな感情や思考が動いているのか、比較は出来ないが一般の人よりは鋭敏であるはずだ。瞑想で鍛え上げられたメタ認知の能力は、伊達じゃない(ガンダム好きの人にはここでクスリと笑ってほしい――アニメ映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を参照のこと)。

「文春オンライン」報道によれば、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が立ち上がり、性被害の実態把握と社会への認知向上に取り組んでいるという。私が母親から受けてきたセクシュアルハラスメントとはまた様相は異なるが、こうした声を上げる活動が活発化することについて、私は望ましいと考える。

上記の報道記事では、副代表の石丸志門氏は「心に病を抱え、生活に苦しんでいる」と自らの状態を明かしている。さらに発起人の元ジャニーズJr.で二本樹顕理氏は「お前は生きる価値のない人間なんだ、お前なんて存在してもしょうがないんだという幻聴および強迫観念がある」と明かしている。

私はお二人の談話を受けた時、「私と同じだ(あるいは、同じだった)」と強く思った。私も、発症の仕方など細かいところは異なるかもしれないが、同じ症状で苦しんできたためだ。お二人が遭ってきた性被害の体験談には、とにかく悲しい気持ちにならざるを得ない。

また、石丸氏はTBSの番組にて「(同じジャニーズ事務所出身者が自身の体験を次々と明かしていく中で、ジャニー喜多川氏から受けていた)洗脳が解けた」という発言をしていた。これは我が意を得たりとも感じる発言内容だ。私が母親から受けていた行為がどのような意図によって行われていたのか、その真実を認識した後に起きた私の意識内におけるプロセスは、まさに「洗脳が解かれる」とも表現するべき内的感覚があったためだ。

ジャニーズ性加害問題当事者の会・代表を務める平本淳也氏の表情の変化にも着目したい。起点となった英BBCの番組内では、取材記者であるモビーン・アザー氏に対して終始、どこか斜に構えた態度を取っていた。その理由を察するに、これまで彼は書籍などを通じてジャニー喜多川氏の性的虐待を訴えてきたものの、各所で黙殺され続けてきたためだろう。おそらく心ない誹謗中傷にも遭ったはずだ。その経緯もあって、アザー氏の取材に対してどこか醒めた心持ちがあったと考えられる。

しかし平本氏の表情は、8月の国連による調査以降、私が観察する限り明らかに違う。生き生きしているように思える。おそらく日本の言論空間が、男性の権威者による男性への性的虐待というこれまでタブー視されてきた問題に真正面から向き合い、被害者たちを救済しようと動き出したからであろう。

彼ら被害者の深い傷をどうやって癒やしていくのか。ひとつは、この問題に関心を持ち、疑問の声を上げ、被害者の保護と救済を訴える市民が、日本国内外に増えていくことだろう。私のこのnote記事が、微力ながらジャニー喜多川氏の性的虐待の被害に遭った人の援護になれば嬉しい。

最後にBBCのドキュメンタリー番組で最後にアザー記者が述べている言葉を引用したい。

「子供は守らなくてはならない。しかしこれについて誰も責任を問われず 問題の認識さえされていません。それこそが何より恥ずべきことです」

なお、下記は私が運営している、瞑想に関する情報ページである。よろしければお目通しいただきたい。

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※ なお、8月31日木曜日19時~、東京・池袋駅東口近くのきれいなレンタルスペースで、瞑想会を開催します。ぜひ次のnote記事をお読みになって、ご参加ください。【瞑想で、創造的な秋を迎えよう!――「MAX瞑想™」体験会のおさそい|高下 義弘(Yoshihiro Takashita) (note.com

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