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言語学者だからって外国語が得意なわけじゃない。

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Thun 湖と牛が大好きな、スイスラボ所属の言語学者による、言語学小咄。 日々の雑感を、言語学に(むりやり)絡めながら綴る予定です。
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記事一覧

「好き」の表し方

こんにちは。 Yamayoyamです。 今日もスイスラボの言語学者のブログにお越しいただきありがとうございます。 今回は、リトアニア語とドイツ語を勉強しながら、「面白いな」と思った構文について書きたいと思います。 リトアニア語の授業で、「好き」というには二種類の言い方があると習いました。 どちらも「私は言語学が好きです」という意味ですが、構文が違います。 一つ目では、言語学が好きな「私」が文の主語になっていて、主格です。それに「一致」している動詞も一人称単数形で、好かれ

語学学習に彩りを。日本語学習を楽しくするかもしれないカルタ。

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 今回は珍しく日本語学習にちょっとかする内容を書こうと思います。 私自身は、日本語学習とか言語習得といった分野に詳しくないので緊張しますが、自分の経験や周りの人たちから聞いた体験などを思い返しながら、綴ろうと思います。 というのも! もう10年以上前になりますが、Yamayoyamがアメリカに一年弱留学していた時にお世話になったHKさんが、日本語学習者の助っ人的カルタを製作されたのです。 HKさんが色んなアイデアや思いを詰め

リトアニア、言語学者のための大人の遠足

私Yamayoyam、一応今のところ本業は言語学の博士研究員でいられてます。 いつまで続くかわからないけれど(汗) 先々週は、リトアニアのヴィリニュスで開かれたバルト語学の学会にご招待いただいて、ちょっと言語学者っぽいことをしてきました。 コ○ナ禍をはさんで3~4年ぶりにリトアニアに行ってきましたので、印象に残ったことを綴ってみたいと思います。 ストックホルムから、ラトビアのリーガ経由でヴィリニュスまで、バルティックエアという航空会社の便で飛んだのは、9月21日水曜日の夜。

スウェーデンに戻ってきて驚いたこと・懐かしいこと

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 私は2012年から2017年の年初までストックホルムに住んでいました。記憶をたどると、2018年に二ヶ月だけストックホルムにいました。5年ぶりのストックホルムと思っていたけど実は4年ぶり。 4年も経つと、街の様子もあちこち変わっていたりするものです。 今週も言語関係の話題はお休みして、スウェーデンに4年ぶりに戻ってきて、変わっちゃってて驚いたこと、変わっていなくて懐かしいことについて綴ろうと思います。 もはや何のブログだっ

スウェーデンで作る、スイス+スウェーデンな秋の献立

こんにちは。 Yamayoyamです。 今回は語学や言語学関連のトピックはお休みして、秋の味覚について書こうと思います。 去年もこの時期、食べ物について書いた記憶があります。 そうだ、栗のピザだった! 今年は、スイスで出会ったドイツのJägersauce [イェーゲルソーセ](+スウェーデンの水餃子的 kroppkakor [クロップカーコル])について書きたいと思います。 始めに告白しておきますと、ズボラですのでイチから作ったのはJägersauce だけです。 Kr

水の咄

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 久しぶりにストックホルムに帰ってきて、外食事情がスイスとちょいちょい違うことを思い出しつつあります。 何よりお値段がスイスに比べたら、まとも。 そして、スウェーデンでは基本的にキャッシュレス。現金払いしたいというと、むしろ店員さんがビックリするかも。 そして、お冷事情が違います。 今回は、スウェーデンで思い出した、スイスのレストランでの水事情のうち、ちょっとみみっちいお咄をしたいと思います。 まず衝撃の事実から。 スイス

第一次子音推移もあるんですよ!

みなさんこんにちは。 Yamayoyamです。 超お久しぶりです。 すっかりご無沙汰している間にスイスからスウェーデンに引っ越しました。 今年の1月から、ストックホルム大でポスドクの首の皮がつながったのですが、色々あって引っ越しできずにおりました。 幸いボスの先生も「いついつまでに必ずストックホルムに移るように!!」などと仰ることなく、ゆる~い感じでした。 私事でのゴタゴタもあったしでお言葉に甘えていたら8ヶ月も遅れた(汗)。 今回はスウェーデンからお送りする一本目の記事

大人の語学学習

こんにちは。ご無沙汰してました。 Yamayoyamです。 季節はすっかり巡り、もう夏ですね! 日本は梅雨に入ったころでしょうか。 さて、本日は、大人の語学学習というお題です。 「若いころは語学を学習するのがそこそこ得意だったけど、年をとる毎に新しい単語が頭に入ってこなくなった」というボヤキを年長者から聞くこと、ありませんか? 私は昔お世話になっていたある先生と自分自身の父親から聞いたことがあります。 なんて言っているうちに、自分自身もそんなふうに感じるお年頃になってき

denken 「思う」と dünken 「思われる」~「態」の咄

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 以前ピンク色の投稿で呟いたのですが(↓)、 満を持して(?)denken 「思う」とdünken「思われる」について書いてみたいと思います。 dünken「思われる」はスイスドイツ語で用いられることの多い言葉。 ドイツ語学習をされた方なら、「aus|sehen」や「scheinen」を代わりに習っていると思います。というか「aus|sehen」や「scheinen」が標準ドイツ語で対応する表現です。 例によって家庭内イン

スイスドイツ語方言ウォッチ!田中泰三(著)『スイスのドイツ語』を読んでみました

こんにちは。Yamayoyamです。 今回は、スイスドイツ語方言ウォッチャーネタでお送りしたいと思います。 うちのゲルマン語学者(またの名を家庭内インフォーマントともいう)は、スイスドイツ語方言協会の会長をボランティアでやってます。 その方言協会の蔵書用アーカイブが一昨年、お引越ししました。 それ以来、方言協会の会長をはじめとする会員のみなさんは、新しいアーカイブで蔵書の整理をしています。 その整理中に 「なんか日本語の本が出てきた。これ、どう?」 とうちのゲルマン

もう死にそう~ Am Sterben 構文(正しくはAm-progressive 構文デス)

こんにちは、 Yamayoyamです。 みなさん、運動はしてますか? 私は春から秋にかけてよくハイキングに出かけます。 おしゃれも健康も足元から!をモットーに少しでも足腰を鍛えるように心がけています。 どれだけ実行できているかはともかく、心がけてはいます。 ハイキングには、スイスの(義理)家族に連れていってもらうこともしばしばあるのですが、こちらの皆様の健脚っぷりには毎回脱帽です。 まるでアルプス越えの予行演習かのように、20キロでも30キロでも歩きます。 私は10キロで

言語学者は語学が得意なのか?問題

こんにちは。 お久しぶりになりましたが、 スイスラボの言語学者 Yamayoyamです。 言語学をやっていると言うと、よく「何か国語喋れるの?」と聞かれます。 何か国語も堪能な人をポリグロットと言ったりしますけれど、 ポリグロットな言語学者の方や、ポリグロットほどでなくとも語学が得意な言語学者はもちろんたくさんいらっしゃいます。 ところが、Yamayoyamは言語学徒ですが、マガジン名「言語学者だからって外国語が得意なわけじゃない。」にもある通り、あまり語学が得意なほうでは

Evidentiality について思うこと

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 世の中はこのところ、一難去らないうちにまた一難がやってきてしまった様相を呈していますね。みなさんも色々と思うところがあることと思います。が、この言語学マガジンではどんな時も、言語についてのよしなしごとを綴っていこうと決心いたしました。今回もいつも通り、言葉のあれこれについての記事です。 ストックホルム大学で博士論文を書いていたとき、シチリア出身の友人と知り合いました。実家(義実家だったかも)にオリーブ畑とぶどう畑があって、

蜜のはなし

こんにちは。スイスラボの言語学者 Yamayoyam です。 私はひょんなことからリトアニア語の歴史に興味を持って、大学院の修士課程からリトアニア語の勉強を始めました。今回は、リトアニア語と日本語が古くから共有していた「みつ」という言葉について、思い出話とともに綴ろうと思います。 学部3回生のときに言語学研究室への配属を選び、印欧語比較歴史言語学というのに出会いました。地理的にある程度つながりのある地域で、体系的な類似性が相互に観察できる言語たちがあります。ヨーロッパで古