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語学学習に彩りを。日本語学習を楽しくするかもしれないカルタ。

みなさん、こんにちは。
Yamayoyamです。

今回は珍しく日本語学習にちょっとかする内容を書こうと思います。
私自身は、日本語学習とか言語習得といった分野に詳しくないので緊張しますが、自分の経験や周りの人たちから聞いた体験などを思い返しながら、綴ろうと思います。

というのも!
もう10年以上前になりますが、Yamayoyamがアメリカに一年弱留学していた時にお世話になったHKさんが、日本語学習者の助っ人的カルタを製作されたのです。
HKさんが色んなアイデアや思いを詰め込んだカルタ、いったいどんな感じに仕上がってるのだろう?と気になり、このほどお取り寄せしてみました。

「そういえば、うちのゲルマン語学者も日本語学習が長続きしなかったな・・・」とか、ベルンに住んでいた頃、小さなお子さんを持つママさんたちの、子供に日本語の勉強を続けてもらうのがけっこうたいへん、というお悩みを聞いたことなどを思い出しました。
私自身は日本語教育に携わっているわけではありません。ですが、ゲルマン語学者の日本語への愚痴や周囲のお話を見聞きしながら、言語学徒として色々と思う所はありました。

さて期待高まるカルタですが、ポップな絵柄の箱に入ってやってきました。
箱を開けるとこんな感じ。
札が取り出しやすいように、仕切りに切れ込みが入ってます。

百人一首でおなじみのカルタ同様、読み札と絵札のペアになっています。

札は京都のかるた老舗、大石天狗堂さんの丈夫な紙質を使用したというこだわりの品。

このカルタを製作されたHKさんは、アメリカはボストンで、旦那様と「えびすや」さんという日本食スーパーを経営しつつ、競技カルタを普及する活動もされています。

えびすやさんに在米中とてもお世話になった思い出が蘇りますが、話が逸れてしまう・・・!のでカルタの話題に戻りますと、HKさんは百人一首のカルタにとても詳しく、このかるたもそのスタイルを基本的に踏襲しているんだろうなと思われました。

そもそもこのカルタを作るきっかけが、えびすやさんで開いた百人一首イベントだったのだそう。 平仮名を1文字も読めないアメリカ人が「このゲームやりたい!」と言うので、札の上にローマ字を書いて対応してみたのだそうです。
それが案外上手くいってゲームを楽しんでいる様子を見て、
「ローマ字で読み方を書いたカルタ、日本語を覚えるのにけっこう役立つかも」と閃いたということでした。

ただ、百人一首とは異なる、現代日本語の表記法の特殊な書き方ルールがいくつかあります。
このカルタでは、そういったちょっとトリッキーな日本語の表記法はもちろん、日本語独特の表現や、文化的背景まで学べるような工夫が凝らされているのだそう。
ではでは、早速見てみましょう。

ローマ字の読み方表記

このカルタ、読み札にも取り札にもローマ字で読み方が表記してあります。

平仮名一文字がどの音に対応するのかを示すために、
「gak'kou」のように、アプストロフィで区切ってみることにしたそうです。

HKさんがその理由を説明してくださいました。
「日本語がペラペラ話せるけど、平仮名片仮名は1文字ずつ確認しないと読めない、という人がわりといます。そういう人たちが少しでも読みやすいように、と思ってローマ字表記を付けました。 」
「このカルタは特に『海外仕様』というわけではなくて、日本に住んでいて日本語を習得したい人と教えたい人、も対象にしています。
日本語教材にローマ字表記はあまり推奨しない、という先生方もいらっしゃいますが、このかるたは『今すぐ遊べる』ことを優先しました。
『取り札にもローマ字付けちゃえ!』と思えたのは、海外で競技かるた普及をしていたから、ですね」

確かに、これは日本語学習にも使えるカルタであって、日本語の教科書ではない!
日本語学習に躓いている人にとっては、「すぐに遊べる」ことを優先したゲームは、とてもありがたいのではないでしょうか。
例えばウチのゲルマン語学者とか。

「きゃ、きゅ、きょ」などなど、拗音の表記法

昔ながらのかるたでは 拓也くんの「た」 はあるのに 純くんの「じゅ」 は無い!?という問題があります。
そう、現代日本語の拗音の表記法は、百人一首のころの慣例とは違う・・・。
そして、日本語学習者にとっては、覚えるのがちょっと難しいらしい。
うちのゲルマン語学者も日本語をちょっと勉強してたとき、「ぴゃ、ぴゅ、ぴょ」などの拗音の綴り方に難儀してました。この書き方のしくみがアタマに入ってこない、と。

「ローマ字転写」なので、長母音は母音字を重ねる形になっています。

「ぴゅ=一文字目の子音だけ(p-)+二文字目の音価(yu)」だよと言っても、どうにもスンナリ入ってこないんだそうです。たしかに一文字目からは子音しか取らないなら、一文字目を小さくして二文字目を大きく書いたほうが合理的かも・・・???そんなことないか。

こんな屁理屈をコネコネするよりも、このカルタを使ってとにかく見て覚えた方が手っ取り早いだろうなと思います。
習うより慣れろ。そして、それを実践するにはゲームが手軽。

濁点や半濁点

それから、濁点や半濁点。
「か(ka):が(ga)」や「た(ta):だ(da)」のように分かりやすいものもあります。
その一方、「は(ha):ば(ba)」のように、一見ナゾな対応のものがあります。
よくよく考えればbaに対応する無声音はpaのはずで、haではないはず。
ハ行転呼音と言って、昔々、日本語の先史段階でパ行音だったのが、音韻変化してハ行音へと推移したという歴史的な経過があって、「は(ha):ば(ba)」のようなおかしな対応が生まれたのです。
ちなみに、今あるパ行音は、擬音語・擬態語(「ぴかぴか」「ぽかぽか」など)や外来語が主です。

そんな半濁点の使い方も、カルタなら覚えやすいかもしれません。

Ideophone

日本語の擬態語・擬音語といえば、ideophoneと言います。
以前、このブログシリーズでも取り上げました!

印欧系の言語をはじめとして、これが無い言語が世界にはいくつもあります。
そういう言語の母語話者にとって、無数にあるideophoneを覚えるのは結構苦痛なのだそう。
そんなわけで、HKさんは意識してideophone をカルタにたくさん使うようにしたのだそうです。
日本語とは構造が異なる言語の母語話者の鬼門となりそうなポイントをゲームの中でこんな風にカバーするのは、グッドアイデア!
外国で育つ、日本をルーツに持つこどもたちにとっても、これは良いんじゃないかなと思いました。日常会話だけじゃなかなかカバーしきれないものではないでしょうか。
ちなみに、HKさんのイチオシは 「ごろごろかみなり ごろごろ昼寝」

雷神が空で太鼓を叩くという日本文化のアニミズム的発想も、このかるたを拾ってくれた方が伝えて下さると信じてパッケージしたのだそうです。
こんなふうに、日本文化に関連するコンテンツも紛れ込ませる工夫がされています。

ところで、言語学徒としては、この札の二つの「ごろごろ」が違う意味で使い分けれているのも面白いと感じました。一つ目は擬音語、だけど二つ目のは擬態語で「ころころ」の重いバージョン(?)。
鈍重に転がる様を表しています。
こういうのがさりげなく示されているのも学習者にはありがたいんじゃないかな、と思いました。

歴史的仮名遣いの名残り

それから、HKさんは競技カルタの人だった!というのを再確認させてくれるのが、「ゐ、ゑ、を」の札。

「を」は今でも確かに使いますけど、「カルタ遊びする」などの対格助詞としてのみ。
今ではもう使われない文字だけど、日本語を習得した暁に、ほんとの「百人一首カルタ」で遊ぶのが目標なら、「ゐ、ゑ」にも親しんでおくのは良い判断。

まとめ

今回は、昔ボストンでお世話になったHKさん製作の、日本語学習用カルタを手に取った感想を綴ってみました。
HKさんはボストンに長らくお住まいですが、色んな立場で日本語を勉強している人たちと交流されてきたのだろうな、と思いました。
日本語を学習しているけど、様々な事情で躓いちゃってる人たち(例:うちのゲルマン語学者)。
親が日本人だけどアメリカで生まれ育ったので、日本語会話はOKでも、読み書きの習得に難儀しているこどもたち。
などなど。

HKさんが出会ったそういう人たちは、アメリカで生活している以上、日本語学習以外にしないといけない勉強・仕事は一人前分あるわけで、日本語学習は、自由時間や睡眠時間を削りながらすることになるだろうと思われます。
いくら意欲があっても、続けるとなるとなかなか難しいものです。
そんな人たちの役に少しでも立ちたい!というHKさんの強い思いと優しさを感じるカルタでした。

こんなふうに、すぐに遊べる工夫がしてあるゲームを取り入れるのも、語学学習を細く長く続ける工夫の一つかもしれませんね。

ちなみにこの優しいカルタ、こちらから遊び方の説明や購入ガイドをチェックできます。

それでは次回までご機嫌よう♪
Yamayoyam


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