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【しくじり先生】日系ベンチャーが米国進出でコケた理由2 ー手に負えないアメリカ人VPー

そんなこんなで、残った人材はペーペーの私が見てもわかるぐらい、デキる人間と金食い虫の2パターンにきっぱり別れました。

そして、私はアメリカ一年目で、金髪ブロンド青い目の、アメリカ人セールスVPと一緒にタッグを組むように言われます。

彼女は、数字で見ればうちには勿体無い、優秀なセールスでした。ただ、上手にマネジメントできる人がいなかったため、会社の輪は乱れていきます。

2つめのしくじり:手に負えないワガママアメリカ人VP

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このアメリカ人VPは、日本にも行ったことなければ、日本にも興味がないし、もちろん日本語も話さないし、お世辞で「日本食、好き」なんてことも言わない、ヘッドハントされてきた人でした。

つまり、金になびいた人で、私たちのビジネスにはなーーんも思い入れない。笑。

しかも、その興味のなさを全く隠さないので、下町工場的なノリの日本チームとはいまひとつ打ち解けられていないなぁという冷たい雰囲気が、当初からありました。

さらに、今まで彼女は、ずっとコミッション制で働いていました。ゆえに給料制に慣れていないので、彼女にとって、業務量が少ない時は、遊んでいい!と言う認識に。

業務時間中に誰にも報告することなく、こどもの学校に行っちゃったり、ジムに行っちゃったり、美容院行ってサッパリしていたり…と、もうなんでもアリ状態。

確かに、アメリカ企業の多くは、裁量労働制なので、きちんと自分の仕事が終わっていれば、早く帰ったり、遅くきてもいいよーというルールがあります。(で、遠慮なくみんなそのルールを使います。だけど、基本的には事前にひとこえ掛けてくれる)

だけど、彼女のやり方は、やりすぎのものが多かったし、他のローカルや日本人に示しがつかないような行動も多くありました。

「社員は俺のもの」と思っている日本人社長には、この行動が好ましく映るはずもなく。ここで、彼は完全に対応を間違えて、彼女に対するコントロールを失います。

必ずオフィスで働かなければいけないルール

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社長は、「必ずオフィスに来ること」を社員に義務付けました。社長にとって「社員は俺のもの」なので、「時間を拘束すること」は彼にとっては重要だったのです

しかし、彼女になんでオフィスに行かなきゃいけないの?と聞かれた時に、社長は明確な理由が説明できませんでした。

彼女は以前より、自宅にホームオフィスを持っていましたし、会社は立ち上がり期で大して仕事もない、さらにこちらでのセールス職の多くは、リモートワークを認めています。彼女は、ずっとそんな働き方をしてきていて、オフィスに通った経験が、そもそもありませんでした。

アメリカは広いし、優秀な東海岸に住む人が西海岸の企業に勤めることもありえるし、もしその人に東海岸のセールスを任せるならリロケーションしてもらう必要もないし、みんなオンラインミーティングに慣れているし、働く場所なんて関係ないのです。

何よりも、彼女がセールスに足を踏み入れた理由が、こどもとの時間を増やしたい、だったので、リモートワークをしたい理由も明確でした。

このアメリカ人VPは前述の通り、超合理的なアメリカ人だったので、このワケワカメな日本人CEOのリクエストに「シングルマザーだから」という、こっちが最も扱いにくいカードを切ってきます。

要は、自分はシングルマザーだから子どもが帰ってくる時間には家にいないといけない、自分はシングルマザーだから子どもの試合にも行かないと…等々…です。本来であれば、こんなパーソナルなことを職場でいう必要もないのですが、シングルマザー/ファーザー、体格がかなりよろしい方、マイノリティー(白人以外、後は性的マイノリティー)は、ほんっとーに気をつけないと、すぐに差別だ!と言ってきます。

こうなると、もう何も手は出せなくなります。

結局、CEOは自分の指示を通せなかった、ということで彼女からも、他のローカルからもナメた扱いを受けることに。

これには後日談があって、私は彼女の友人と友達だったので、事実を知ってしまったのですが、彼女の一人息子は、もう高校生で、平日をほとんど父親のところで過ごしていて、子どもは車も所有していたので、送り迎えも不要ーという状況でした。

要は、彼女はシングルマザーであることをていの良い、言い訳に使っていただけだったのです。

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では、どうするべきだったのか

今振り返ると(あの時も思いましたが)、あの時、社長はリモート制を許可してもよかったのでは?と思います。

週に2回、この時間は必ずオフィスに来る、とか無理やりにでも定例のミーティングを入れればよかったのではないか、と。

もしくはそんなに絶対条件だったのであれば、前章でも触れたJob Descriptionに書くべきでしたし、ガソリン代を支給するとか、それなりの交渉は、事前にできたはずです。

また、時差もあって、オフィスにいない時間に日本のオフィスから連絡が入ることもありました。こうなると、『オフィスにいる時に仕事すればいいんじゃなかったの!?』となってしまい、衝突もよく生まれました。

日本人CEOにとっては、アメリカ人VPの態度はワガママで協調性がないように見えたわけですが、アメリカ人VPにとっても、日本人はなんでこんなに非合理的なの?という印象を与えてしまいました

本来であれば、雇用する側は一週間の詰め込み式でもいいから、きちんと「アメリカとは」のレッスンを受けるべきだったし、日本人ローカルに聞くことだってできたのになぁ…と思うのです。

そして、少し話はズレるけど、セールスを雇うタイミングが早すぎました。プロダクトもできていない、本当に立ち上がりの段階で入れてしまった。これは正直勿体なかったと思います。

彼女は数字だけで見れば、うちでは勿体無いぐらいの優秀なセールスでした。プロダクトがあって、コミッションで釣れば、このアメリカ人VPのやる気にも火がつけられたと思うし、与えられる仕事があれば、仕事にメリハリも生まれたと思うのです。

もう完全なマネジメントの失敗、と言って良いと思います。

ただ、社長の怒りはここで収まりませんでした…。次の手を繰り出してきます。

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