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天空の小さな秘密
薄い雲が空に広がる中、ウサギとカメは池尻大橋駅に降り立った。目黒川沿いに歩みを進めていくと、やがて視界に大きな円形の建物が浮かび上がってきた。
「ねえ、あれって何かしら?」ウサギはカメの隣で足を止め、円形の構造物を見上げた。その目は子どものように輝いている。「ローマのコロッセオみたいに見えるわ」
カメはゆっくりと顔を上げ、建物に視線を合わせた。「確かにそう見えるね」と彼は静かに言った。「でも、実はあれは天空庭園なんだ。ここからは想像できないくらい広い庭園が広がっているんだよ」
二人が乗ったエレベーターが庭園に着くと、ウサギはそっと一歩前に出て、ゆっくりと周囲を見回した。
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「凄い!本当にお庭が広がってる。お花も咲いているのね」ウサギは声を弾ませた。
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「見晴らしもいいわ」ウサギは展望台から遠くを眺め、指をさした。「あそこに見える高い建物は何かしら?」カメは彼女の指先を追い、目を細めてじっと見つめた。
「あれは三軒茶屋のキャロットタワーだね。よく見ると人参色をしている」と、カメは静かに答えた。
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円を描く細い遊歩道を弾むように歩いていたウサギが突然足を止めた。
「あれっ、これは何かしら?」彼女は隣のカメに問いかけた。「天空庭園から白い構造物が曲線を描きながら続いているわ」
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「実は、ここは大橋ジャンクションなんだ」カメは静かに説明した。「天空公園の下を高速道路が走っているんだよ」
「そうなの?車の走る音なんてしないし、全然気づかなかったわ」彼女は目を見張った。
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「この下では、地上35メートルの3号渋谷線と、地下36メートルの中央環状線が高低差約70メートルをつなぐために、道路がループしているんだ」と、カメは続けた。
ウサギは目を輝かせて想像を巡らせた。
「つまり、公園の下にはもう一つの別の世界が広がっているのね」二人は思わず足元に視線を落とし、その奥深くに思いを馳せた。
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パンフレットより
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