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桜からの逃避行

その日、原宿駅の改札を抜けたウサギとカメの目に飛び込んできたのは、果てしない人の波だった。「今日はお休みの日だから人が溢れてるね。はぐれないように気をつけようね」カメは彼女にそっと手を差し出した。

人波に身を任せながら、やっとの思いで代々木公園にたどり着くと、二人は園内のメインルートを離れ一息つける空間を探した。その時ふと目に留まったのは、ぽつんと佇む、異国感に満ちた不思議なオブジェだった。

「誰も見ていないけれど、これは何かしら?」ウサギが首を捻ると、カメが文字の刻まれた石碑をのぞき込んだ。「古代メキシコ神話の文化神ケツァルコアトゥルの化身『羽毛のある蛇』と書いてある」彫刻を見つめていた二人は、古代の不思議な世界へ思いを馳せた。

古代メキシコ神話の文化神の化身

「折角ここまで来たのだから、やっぱり桜も見てこようか」とカメが提案すると、「そうね。人混みに入るなら気合を入れなくちゃね」とウサギは軽く拳を握りしめた。

桜も人も満開

桜のエリアに辿り着いた二人の目には、シートの上に集まった人たちが桜の花に負けないほど満開に見えた。「桜はとても綺麗だけど、これだけ人が多いと酔ってしまうわ」ウサギがこめかみを抑えながら言葉を続けると、彼はその手を引き、息が吸える場所へと脱出を試みた。

公園を遠く離れ、代々木体育館を通り抜けた二人は渋谷横丁に辿り着いた。「ここならホット出来るわ」リラックスしたウサギの前に、沖縄からの味覚が届けられた。

ゴーヤと紅芋のチップス

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