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Z坂での想い

強い陽射しの中、カメは佐渡トライアスロンのバイクコースで力強くペダルを踏み込んでいた。ふと視線を上げると、遠くの山肌にアルファベットの「Z」を描いたような坂が見えてきた。

最大斜度11%のZ坂に差し掛かったカメは、もう眼下に広がる美しい海辺の風景を楽しむ余裕なんてなかった。それでも、海から吹いてくる爽やかな風に少しだけ心が軽くなる。

息を切らしながらふと空を見上げると、大きな雲がゆっくりと流れていた。その雲は、まるで風に乗って駆けるウサギの姿のように見えた。

「ウサギさん、無事にスイムを終えたかな?」彼女が泳ぎが得意でないことを知っているだけに、カメは思わず心配になった。

下り坂に入ると、カメのスピードはあっという間に時速50キロを超えた。次々とトンネルを抜け、数え切れないほどのアップダウンを繰り返しながら、カメはまるで永遠に続くかのようなバイクの旅を続けた。

190キロもの長いバイクコースでは、いつの間にかアスリートたちは散り散りになり、周りには誰の姿も見えなくなる。でも、そんな孤独さも悪くはなかった。

コースの中でも最難関と言われる小木坂を、カメは力強いダンシングで駆け上がった。坂を登り切った瞬間、視界に広がったのは一面のひまわり畑だった。

大きく咲き誇るひまわりたちが、まるで応援してくれているかのように、カメに新たな力を与えてくれる。風に揺れる花たちを見ながら、カメは自然と笑みがこぼれた。

ホテル八幡館を通り過ぎ、ゴールまでの距離はあと僅か。けれども、ここまでの道のりは長く、カメの身体は限界に近づいていた。

そんな時、カメはふとウサギのことを思い出した。彼女もコースのどこかでバイクをこいでいるはずだ。離れていても、二人の心はしっかりと繋がっている気がした。

カメは深く息を吸い込み、気力を振り絞ってペダルに力を込めた。彼女の笑顔が、まるで背中を押してくれているかのように感じながら。

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