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億万長者に必要なもの

その日、ウサギとカメは日本銀行金融研究所の貨幣博物館の前で緊張感に包まれていた。荘厳な玄関の扉を押し開けると、中には数人の警備員が厳しい目つきで待ち構えていた。二人はその視線を感じながら、一歩足を踏み出した。

持ち物がスキャンされ、金属探知機を通り抜けるその瞬間、ウサギは思わず息をのんだ。カメは、まるで何事もなかったかのように落ち着いた足取りで前に進み、その背中を見た彼女も、安心して後に続いた。

「今のお金は使えなくなるってカメくんが言うから、もう不安で仕方なかったの」と、ウサギは展示フロアに辿り着くと、静寂の中で囁いた。

「今のお金はそのまま使えるよ。僕はただ、七月に日本銀行券が生まれ変わるって言っただけなんだけどね」とカメは静かに笑った。

「実はね、キャッシュレスが進んだ今でも、お札の発行高は増えているんだ。だから安心してお金が使えるように、新しい偽造防止技術を取り入れた日本銀行券に生まれ変わるんだよ」とカメは優しく説明した。

新しい1万円札よ!
「10000」の文字が大きくなったよね?
by ウサギ

新しい日本銀行券のコーナーをひと通り見終わると、二人は他の展示物にも目を向けた。ウサギがふと足を止めると、そこには何やら大きな包みが横たわっていた。

「一億円がどれぐらい重いのか体験できるみたいよ。カメくん、試してみたら?」と、ウサギが彼の袖を引っ張った。

1億円ってこんな感じなのね   by ウサギ

カメは軽い気持ちで箱に手を掛けた。しかし、すぐにその顔が歪んだ。「重すぎる。全然持ち上がらない」

「そうなの? 確かに10キロあるって書いてあるわね…」

今度はウサギが1億円の前に立った。
「私も試してみる。あれ、意外と軽いかも」 ウサギが軽々と持ち上げる姿を見て、カメは苦笑いを浮かべるしかなかった。

「私、億万長者になる資格があるのかも!」とウサギはカメに振り向き、いたずらっぽく微笑んだ。

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