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彼女がお金持ちになったなら

真冬の寒さの朝、カメが図書館へ向かっていると、追いついてきたウサギが声をかけた。「私はお金持ちになりたいの!」と、彼女は息を切らせながら両手を握りしめて、真剣な眼差しでカメに訴えた。

「私には人生の目的がはっきりと見えたの。だから直ぐにお金を増やしたいのよ。でも、今までそんなことを考えたことがなくて…。私はどうしたらいいのかしら?」彼女はカメに口を挟む隙も与えず、一気に話し続けた。

ウサギのあまりの勢いに、背を反らせ、顔を強ばらせて聞いていたカメだったが、「それなら、図書館の分類番号338.8の書棚の本が参考になるね。一緒に探してみようか」と、彼女に優しく提案した。

「でも、お金を増やすなら、銀行で相談した方がいいかもね。新NISAや外貨建ての積立利率変動型一時払終身保険とか、丁寧に説明してくれるよ」カメは最近の体験を、彼女にわかりやすく伝えた。

「お金持ちになれるなら、もう、どちらでもいいわ!」まるで、もうお金持ちになったかのように喜んで飛び跳ねる彼女を見ながら、カメは素朴な興味を口にした。 「普段お金には全く関心のないウサギさんがお金持ちになりたいって、どんな人生の目的なの?」

ウサギは飛び跳ねるのを止めると、人差し指を唇にあてた。「本当は秘密なんだけどね、カメくんなら特別に教えてあげる。私はまた南の島に行きたいの。波照間島の煌めく星と石垣島の色鮮やかなサンゴ礁にまた会いたいわ」ウサギの表情は凛として、静かな決意に満ち溢れていた。

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