いい歳した大人がバレンタインに振り回される話。#3
おいおいバレンタインの話いつまで続ける気?と自分でも思ってきたので、長文です。
でもまだ続くと思います。(←
人様に公開するような話ではないなと思いつつ、書き留めておきたいこと、書いて昇華したいことを。。
書くことで、あの時の自分の気持ちも彼の気持ちもこうだったのかなと改めて思えたりもして。
いつも読んでくださってありがとうございます。
同時に喋ろうとしてお互いしどろもどろに譲り合った私たち。
…………
『…あ!アイス溶ける!』
「そ、そうだね!食べる?」
Rくんが私の膝から飛び起きた。
『セーフかも!いやギリアウトか!再凍結する?飲むか!』
再凍結(笑)
『一個は再凍結して、一個は半分こして飲む?』
「うん(笑)」
飲むほどではなかったけれどアイスとも呼べないくらいのそれを、半分こして食べた。
溶け始めていたアイスはすぐになくなった。
私はさっきの光景を思い出して暑くなった。
寒い中冷たいアイスを食べたのに、それは何の効果もなかった。
Rくんが振り向く。
私は目を合わせられなかった。
『あのさ……隣、座っていい?』
「い、いいいいよ!」
動揺が隠せない私の前にRくんが立ち上がって、私の左隣に座った。
近い。
静かな部屋に、私の心臓の音が響きそうだった。
テレビ付けておくんだった、と思った。
思わず右を向いた私の後ろから、彼の手が私の肩に触れ、そのままふわっと包まれた。
彼の高い平熱が、背中越しに伝わった。
驚きすぎて、言葉が出なかった。
出会ってから一番近い距離だった。
いい匂いがした。
彼の香水の香りがいつもよりして、触れていることを実感した。
『いい匂い。』耳元で彼が言った。
いい声。と思った。嗅ぐな。とも思った。
『…落ち着く。女の子。』
「女の子ってやだ。私って言え。」
『姉さん。』
「姉さんってやだ。」
『〇〇(私)ちゃん。』
…ズルい。
『いい匂い…』
「嗅がんで。」
『はぁ…いい匂いがする…(犬のように嗅ぎながら)』
「あのさぁ、」
『ん?』
「薄々気づいてたんだけど、Rくん変態?」
『うん。』
うん(笑)
「変態なの?」
『そだよ。』
そだよ(笑)
恥ずかしさが限界を超え、口が悪くなる私。
“可愛い女”ができない。
以前、同僚とこんな風になった時は、ちゃんと可愛かったのだろうかとどうでもいいことを思った。
可愛くできた結果なのかはわからないけれど、“いい人” だった同僚は “やばい男” になり、その時もRくんに助けてもらったな。
私の人生でピンチな時はいつも彼がいて、助けてくれてるんだな。ヒーローじゃん、など思った。
今でしょ!
何でもっと可愛くできないの!?
私はRくんのことが好きなんだよね!?
付き合いたかったんだよね!?
15年片想いしてきた相手が、紆余曲折あったバレンタインに、バックハグしてくれてるんだよね!?
好きじゃない人には可愛くできて、好きな人には口悪くなるってどういう現象!?
年上の色気とか皆無。
そもそもバレンタインに呼び出しておいて、部屋着。
これでいいの?私。
もうこんなチャンスないかもよ?私。
「Rくん。ベッド……行く。」
『眠いの?もうこんな時間か。』
どんな誘い方よの私に負けず劣らずのド天然Rくん。
しつこく匂いを嗅いでいる変態Rくんの腕から逃げるようにして、私は振り返らずに彼の手を引いて寝室へ向かう。
リビングからの光が微かに入る寝室で、ベッドに座る私。
立ったままのRくん。
こんなところまで体育会系出さなくていいって。
『寝ないの?カギならちゃんと閉めてドアポストに入れるよ?』
………
こいつよくあれだけの数ホテル行ってたな?
どうやってこの鈍感をその気にさせるんだ?
どんどん口が悪くなる私。
そうか。Rくんは疲れたらこうして女を抱き寄せて、犬みたいに匂いを嗅いで、これくらいのことは誰にでもしているんだな。と思った。
私はまだ “ただの姉さん” なのか。
ここで私が誘ったら、彼は何て言うだろう。
私たちの関係性は、変わってしまうだろうか。
関係性が変わるって、どう変わるんだろう。
そもそも今は何だろう。
よく考えたら、彼と私は出会ってからずっと “姉さんとRくん” で、恋人だったこともなければ友達と呼べるそれでもなかった。
「する?」
もうよくわからなかった。
Rくんが好き、それだけだった。
『え………?』
ぼんやり見えた彼の顔は、元々大きい目が更に大きくて、この瞬間までそんなこと言われるとは思っていなかったんだなとよくわかった。
「Rくん。する?」
『…え、いや……え………』
「童貞か。」
【今おまえ金髪やんな?そのチャラい見た目とこの状況があまりに釣り合わないやろ。】の方がまだマシだったかもしれない。と直後に思った。
『…………付き合う?』
え…………?
今度は私の番だった。
一転、怯んだ私の目を真っ直ぐ見て
『付き合う?』ともう一度彼は言った。
to be continued.
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