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なぜ北欧から多くのユニコーン企業が生まれるのか?

北欧がシリコンバレーに次ぐ、世界第2位のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のベンチャー企業)輩出国というのはご存じだろうか?

北欧と日本の人口・ユニコーン数を比較してみる。
ここでの北欧とは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランドの5カ国。

北欧:3,300万人(2022年5月現在), 38社(2022年5月現在)
日本:1億2,250万人(2021年10月), 6社(2022年2月)

Nordic Asian Venture Aliance

北欧の人口が日本よりも約4分の1であるにも関わらず、ユニコーン数が6倍以上ある。

また、北欧のユニコーン数は2014年以降急速に数を増やしている

Nordic Asian Venture Aliance

なぜ北欧からこれほど多くのユニコーン企業が生まれるのか?
この点について、ニコラスさんに話を伺った。

Niklas Karvonen
カルヴォネン・ニコラス

北欧のスタートアップ・成長企業の世界市場参入をサポートする政府系組織ノルディック・イノベーション・ハウス東京支部のコミュニティー・ディレクター。

日本とフィンランド(北欧)の似ているところは?

僕ー

まず初めに、ニコラスさんはフィンランド出身とのことですが、日本とフィンランドで、似ていることと違っていること、それぞれ教えてください。

ニコラスさんー

似ていることは、2つありますね。
1つは、仲良くなるのに時間がかかる点。シャイとまではいかなくても、初めて会うときには仲良くなるのに時間がかかりますね。
2つは、自然を大切にする点ですね。

僕ー

北欧の方ってシャイな方が多いと聞きますね。スウェーデン人もそのような傾向にあると思います。

また、自然を大切にするというのは、フィンランドと日本にはどちらも自然(森林)がたくさんあるというのが要因として大きそうですね。
国連食糧農業機関(2015年)によると、世界各国の森林占有は以下のようになっています。

1位:フィンランド(73.1%)
2位:日本(68.5%)
3位:スウェーデン(68.4%)

※世界平均=31.0%

これより、日本の国土の約3分の2が森林で、世界で2番目に森林占有率が高い国だと分かります。実は日本は世界有数の森林大国なんですね。日本にずっと住んでいると、意外と気づかなかったです。

森林占有率で世界第3位のスウェーデン


日本とフィンランド(北欧)の違うところは?

ニコラスさんー

次に、日本とフィンランドの違う点です。

日本の場合は、どこでも何かのプロセスがあります。ステップ1、ステップ2、ステップ3というように。フィンランドの方は、もっと自由にやっているように感じます。

これはなぜなのかと私もよく考えているんですけど、一つの原因に人口の多さがあると思います。日本の首都は人口が密集していますので、ルールを守らなければ成り行かなくなるのではないかと。一方、フィンランドの方ではスペース放題ですので、自分なりに動いたり、いろんなことをやっていけるところがあるのかなと思います。

僕ー

確かに、日本ではルールが多く、厳しいですよね。スウェーデンに来てびっくりしたんですが、彼らは信号をほとんど守りません。車が来てなかったら待つ必要がないという考えなんですね。これは、交通量が少ないからこその価値観だと思います。

日本だと、どこへ行っても交通量が多いので、こういった価値観はありません。また、信号を守らないと他の人に白い目で見られますね…

このような整然としたステップに基づくルールは、日本の就活制度にも当てはまると思います。日本では一般に、高校を卒業後、大学に行くか就職の2択。そして、大学卒業後は新卒として企業に就職。

このようなステップはフィンランドにはないですか?

ニコラスさんー

そうですね、フィンランドではあまり「新卒」といった言葉は聞きません。

一般的にフィンランドでは、大学に行ったら文系でも大学院に行くのが普通です。そのため、勉強時間が長くなってきます。

そのせいもあるのか、大学に在学しながら企業で働き、卒業後はその企業に就職する場合が多いですね。

ニコラスさん


イノベーションとは?

僕ー

ニコラスさんは「イノベーション」をどのように考えていますか?

ニコラスさんー

イノベーションは、次の2つが大切だと考えています。

1つ目は、新しい、もしくは、業界をディスプラクションできるアイデアを持ち合わせていること。

2つ目は、持続可能性があるか、という点です。

ただ単に革新的なアイデアだけでは継続して続けることができません。ですので、しっかりとしたビジネスモデルを持ち合わせていることも大切になるのです。

日本と北欧で今熱い、スタートアップ業界は?

僕ー

なるほど。それでは今後、日本と北欧、それぞれの地域でどのような分野でイノベーションが起こり得るのか。

日本で熱いスタートアップ業界、北欧で熱いスタートアップ業界をそれぞれ教えてください。

ニコラスさんー

まず、北欧ではSDGs分野が熱いです。
北欧でSDGs分野のスタートアップが人気なのは、政府の支援、ユーザーのムーブメントなどが影響しています。
ユーザーの指向を無視してサービスを拡大することは難しいですからね。

また、日本ではDeep-tech分野が熱いです。
日本では大手企業がスタートアップと手を組んでDeep-techに取り組んでいる場合が多いですね。

なぜ北欧から多くのユニコーン企業が生まれるのか?

僕ー

ここから本題なのですが、北欧でこれほどまでにスタートアップが生まれる原因は何だとお考えですか?

ニコラスさんー

北欧のスタートアップが盛んな理由はいくつかあります。
その中で、周りのサポートシステムが北欧には充実しています
もしスタートアップに失敗しても、その経験を活かして他の企業に就職できます。この点では、日本はまだ十分ではないですね。

また、北欧のスタートアップがユニコーンにまでになるのは、北欧の人々が持っているボーングローバルのマインドが大きいですね。つまり、サービスを初めからグローバルに展開することを想定しているのです。

僕ー

そのボーングローバルマインドが北欧の人にあるのはなぜですか?

ニコラスさんー

北欧の人々がボーングローバルマインドセットを持っている原因としては、
人口が少ない言語力(英語力)国際的なコネクションを持っている人が多い、などが挙げられますね。

自分たちの地域の人口が少ないと、市場が小さくなります。ですので、初めからグローバルな市場を狙いにいきます。

その際、英語は多くの地域で話されている言語なので、英語ができることでより大きい市場に挑戦することができます。

また、世界中にコネクションを持っていたら、他国の市場調査をする際に、そのコネクションを使ってメンタリングをもらうことが可能になるのです。

僕ー

なるほど。
日本は現在人口が多い国で、多くの人が日本語しか使えない。閉鎖的だから国際的なコネクションが少ない傾向にある。

これらを考えると、北欧と比べてボーングローバルマインドがあまりないと言えそうですね。

しかし、日本も、少子高齢化で人口が減少していること、国際競争力が落ちていることを考えると、ボーングローバルマインドは必須になってきそうですね。


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