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年間休日って何日あればいいの?

完全週休2日制は法律上の義務なの?

「完全週休2日制」とは、その名の通り一週間あたり2日の休みが確保される制度のことで、ありとあらゆる求人に見ることができる定型句…と、言えますよね。
だからこそ、「完全週休2日制こそが当たり前で、それより休みが少ないのは違法!」なのでしょうか。

ではここで、休日に関する前提を。

労働基準法
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

です。どこにも、一週間に2回とは書いていません。
そう、たった1日、週に1日で良いのです。法律上は。
では何故完全週休2日制はここまで「当たり前」となったのでしょうか。
その前提となるのがこちら。

労働基準法
第三十二条
①使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

法律上1日に8時間まで、そして1週間に40時間まで、とあります。
だから1週間に5日間しか働かせられない→完全週休2日制
となるわけです。

話を戻します。
労働基準法上は、①1日8時間②1週40時間を超えず、③かつ週に1回の休日を与えなさい、とあるわけなので逆に考えれば
1日8時間以内で、1週40時間を超えなければ、休みは週1回で足りる
と考えることができるわけですね。

40時間を6日で割ると、1日は6時間40分です。
1日6時間40分であれば、週休1日でも上記①~③の条件は満たすことになります。

さて、この場合、年間の休みは何日になるでしょうか。
365÷7=52.14285… つまり52週間です。
端数が1日ありますから53日あれば休みの数としては問題ないことになります。

完全週休2日制は現代のスタンダード

しかし現実的に、年間休日53日という求人はほとんど見たことがありません。法律上は問題ないのに、なぜでしょうか。
そう。完全週休2日制(年間105日)の会社があるのに、53日の会社が選ばれる可能性が低いからです。
これは経営をされている方は皆気づいています。
合法であれば、それでよいわけではないと。だからせめて週に1回+祝日の回数くらいは、ということで、現実的に年間休日を70日くらいまで引き上げて表示するところのほうが多い印象です。
こういった休日回数の求人は、飲食店や建設業などでよく見かけます。どうしても完全週休2日制の実現が難しい、というのも業種によっては切実な問題のようです。
繰り返しますが、法律上週休1日は問題ないものであり、休日数が少ないこと自体は責められるものでなく、かつ働きやすさは人それぞれなので、休みの数が多い=いい会社と直ちに決められるものではありません。

とはいえ、いつも人手が不足、求人は取り合い。そんな現代事情も後押しし、完全週休2日制は世のスタンダードとなりました。
休みの数は、求職者にとって実にわかりやすい福利厚生の指標なのです。
だからこそ、完全週休2日制+α、果ては完全週休3日制なるものまで最近では登場しています。
年間休日数120日を超えるモンスタークラス(と、私が勝手に思っている)の求人は、特に都会では珍しくないと言えます。
(なかなか我が愛媛県ではお目にかかれませんが…)

これら「休日数の増加」は、近年の福利厚生戦争が生んだ、新しい働き方の形そのもの、と言えますね。
次は完全週休3日制がスタンダード、なんて時代が本当に来てしまうのかもしれません。

福祉業界の休日数

一方、福祉の世界では比較的「完全週休2日制」はスタンダード。
求人票はのきなみ、休日数105~110日くらいが主力でしょうか。

もちろん、福祉業界の人手不足もまた苛烈。できることなら休日数を増やしてどんどんアピールしたいのが本音でしょう。
しかし福祉の世界では、ややこしい現実が待っています。
それが「人員配置」の問題です。

たとえばグループホームであれば日中3人(定員9人に対して)、夜勤1人が必須配置なので、1日あたり常勤職員が5人必要(1日に夜勤者と夜勤明けがいるため)です。
30日であれば延べ150人必要なので、完全週休2日制で1か月21日勤務ならば7.2人の常勤職員が必要になります。これを年間休日120日(1か月10日休)に変更する場合、1人あたり20日勤務、つまり7.5名の常勤職員が必要ということになるので、計算上は増員することになります。
もちろん、有給休暇や欠勤に備えるために実際は少し多めに配置していることが多いので、絶対にできないわけではないのですが、要するに休みを増やすということと、介護保険法上の規定を守るということのバランスを保つのが困難である、ということが言いたいわけです。

私も日々試行錯誤しながら、法を守りつつ従業員にとっての働きやすさをどう保っていくかということと向き合っていますが、やはり今後働き方が多様化していく中で、完全週休3日制の実現はさすがに福祉業界で遠い夢なのだとしても、まずは120日休を達成するには、企業努力だけに頼るのではなく、柔軟な規制緩和も必要になると考えています。

たくさん休みたい、という希望は、従業員のわがままなのではなく、新時代のスタンダードなのだから。



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