〈羊肉のクミン風味炒め〉は充分おいしい? それとも風味がちょっともの足りない? むろんこの問いに正解はありません。

自由な発想で調理を楽しみましょ、という話題です。一般に、羊肉のクミン風味炒めは中華料理と見なされています。でも、べつにこれをネパール料理やインド料理として味わったってさしつかえないでしょ。



〈羊肉のクミン風味炒め〉のレシピはざっとこんな感じです。羊肉をてきとうにダイスカットして、酒、片栗粉、醤油、人によっては卵白をまぶす。次に、中華鍋を煙がでるまでしっかり加熱し、油を入れ、クミンシードを落とし、加熱し、油に香りを移す。そこに前述の下処理をした羊肉を投入。赤唐辛子、長ネギを加えて、黒胡椒のパウダーを振ってしっかり炒める。(もちろんここでチキンスープを何度かに分けて適量入れるのも良いでしょう。)肉の色味を見ながら炒め終えたら、火を止めて、仕上げにパクチーを混ぜて完成。クミン風味が香りよく、かんたんでおいしい。


ぼくはこの料理を、(スパイス使いのシンプルさによって)ネパール料理みたいだな、とおもう。
もしもターメリックパウダーや、レッドチリペッパーパウダーを加えたならば、よりいっそうネパール料理っぽくなるでしょう。



さらにスパイスを加えるならば、インド料理っぽくなるでしょう。まず投入されるのはコリアンダーパウダーでしょう。まさかガラムマサラまで入れる人は少ないでしょうが、ただし入れれば入れたで香りのくどい魔界な風味が表現されることでしょう。


けっきょく料理は、自分が食べてもっとも興奮するように仕上げるもの。理想的な加熱方法はあるけれど、風味の仕上げにただひとつの正解はありません。人それぞれ〈これがおれの羊肉のクミン風味炒め〉という境地を追求すればいい。


さぁ、みなさん、マントラを唱えましょう。「この世界に料理は3種類しかない。おいしい料理。まずい料理。おいしい料理に似せた怪しげな料理。それだけだ。」そして主役はつねに料理人の「おれ」なんです。



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