『架空OL日記』を観て、何気ない日常に憧れを抱いたニート。
私は今、職を失ってニートである。3ヶ月ずつの契約だったアルバイトの契約更新を渋られて、3月で辞めることになってしまった。自分自身も仕事に対して辛い気持ちがあり、辞めたいと思っていたのでちょうど良かったが、決まったのがあまりにも急だったので、辞めた後の就職先なんてもちろん決まっていない。
3月の後半は、溜まっていた有給を消化する日々になった。有給消化期間は、せっかく辛かった仕事を辞められたのだから、前から見てみたかった映画やドラマやアニメでも見てみようと思った。そこで見つけたのが、お笑い芸人のバカリズムさんが脚本を書きつつ主役を演じているドラマ『架空OL日記』。
バカリズムさんが男性の見た目のまま銀行員の制服に身を包み、26歳のOLとして働く女性の日常を演じている。同期のマキちゃん、後輩のサエちゃん、先輩の小峰様や酒木さんなど、共に働く仲間たちとの日常が、ゆるゆると淡々と描かれるドラマである。
バカリズムさんの見た目や声が男性のままであるという事実は、案外すんなりと受け入れられる。演技力やセリフの言い回しがとても女性っぽくて、見た目や声が男性であることを書き消しているからだ。1話目を見終わる頃には、バカリズムさんのことがすっかりOLに見えるようになっているから不思議である。
ストーリーの内容は、銀行員としての仕事についてではなく、銀行員として働く女性たちの裏の顔が中心。食堂で日替わりの食事を食べながら上司の愚痴を言って盛り上がったり、仕事終わりの更衣室でダラダラおしゃべりしたり。そんな彼女たちの何気ない会話ややり取りを楽しむドラマになっている。
別に見終わった後で感動するとか、ドキドキの展開が待っているとか、そういうドラマではない。ただ女性たちのくだらない会話を盗み聞きするような会話劇である。
だけどそれがめちゃくちゃおもしろい…!
そして、私は彼女たちの日常に憧れを抱いてしまった。
いつもと同じ仕事をこなして、仲間たちとくだらない話で盛り上がって、時には愚痴を言ったりもして。私はこの1年、「おはようございます」や「お疲れ様です」の挨拶すら誰とも話すことの無い、フルリモートのアルバイトに就いていたので、職場の人と口頭で話ができる環境がとても羨ましくなった。
そして、同期のマキちゃんと仕事帰りにジムに行ったり、後輩のサエちゃんから漫画を借りたり、職場での関係性が主人公の日常にも繋がっているのがとても良いと思った。職場での人間関係が良好に構築できるのは珍しいと思う。そんな彼女たちが羨ましくなった。
私は大学卒業してからまともに就職できていないので、誰かと一緒に働いて、時に文句を言って、「お疲れ様です」と言い合って帰る準備をするというそんな当たり前の日常に、憧れを抱いた。
特に今の私は急に職を失ってしまって、世間一般の"当たり前"から外れた生活になってしまっている。だからこそ、OLたちの日常生活がとてと輝かしく見えた。私もいつか、同期や先輩や後輩に囲まれた環境で仕事ができるだろうか。仕事帰りに仲間と一緒に何気ない会話を交わすことが、"日常の些細な楽しみ"になるだろうか。いつか私の日常が、『架空OL日記』の登場人物のようになれることを願って…。
自分の書いた言葉を本にするのがずっと夢です。