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頼りにしていた精神科の先生が突然いなくなってしまった。

先月、精神科の予約の前日に、病院から突然メールが来た。

「明日の○○Dr.の診察は休診とさせていただきます」

いつも担当してくれている先生がお休みとのことだった。「まぁそんなこともあるよね」と思い、受け入れた。しかし次の日、また病院からメールが届いた。

「○○Dr.が退職することになりました」

あまりに急だったので、え…と言葉を失ってしまった。昨日突然休診になり、次の日には退職。一体何があったのだろうか。主治医が退職したことは以前もあったが、その時はあらかじめ「退職することになりました」と言われた。しかし今回のはあまりにも唐突だった。

なぜそんなにもショックだったかというと、この先生は私の考え方をすごく変えてくれて、ただ薬を出すだけの治療ではなく、生き方を変えようとしてくれたからだった。

以前書いたこの記事も、この先生のことを書いている。

私と母親の間にある歪んだ関係を数分の診察で見抜き、「一人暮らししてお母さんから離れたら?」と言ってくれた。

だけど私の中にある母親からの洗脳はそう簡単には解けない。「でも母は、精神科の薬は怖いから、薬の服用が完全に無くなるまでは私を家から出さないって言っていて…」と反論した私に、先生はぴしゃりと言った。

「お母さんと自分の人生と、どちらが大事なの?」

「心臓が悪い人が心臓の薬を飲むように、今のあなたには薬が必要なんです。薬を飲まなければ辛い思いをするのはあなたです。そもそもお母さんが飲む訳じゃないんだし。」

「お母さん、今何歳?50代?あのね、その年齢までその考え方で生きてきた人は、もう変えられないよ。だからあなたが逃げるしかない。」

そう言って、先生は障害者手帳と障害年金の申請についても強く勧めてくれた。

「あなたのお母さんを変えてあげることはできないです。だけど、あなたが『こうやって生きていきたい』と思うのならば、手帳や年金を取得することで、私たちはそれをサポートすることはできます」

前に違う先生の診察を受けていた時期があったが、その先生は淡々と薬を出すだけで、障害者手帳や障害年金のことは一言も言わなかった。それどころか、「薬を無くせ!」と言い張る母に押し負け、全然体調が良くない時に薬を減らしてしまうような、ちょっと頼りない先生だった。

だから、精神科の先生というものがここまで私の生き方に対して変化をくれるとは思っていなかったのだった。

診察の時も、「お金使いすぎてるって言ってたけど大丈夫なの?」「仕事辞めたいなら辞めても良いんだけど、お金は大丈夫なの?」と、躁状態の浪費の症状が酷い私のお金のことや仕事のことを何度も聞いてくれた。そして時には厳しく、「今抱えている予定は全部キャンセルしたら?借金でもしてしまって、後から『あの時は病んでました』って言ったって、通用しないんですよ」と叱ってもくれた。

高校生の頃から今まで何人かの精神科医を見てきたが、大抵の先生は「お金を使い過ぎて困っている」とか「学校に行けていない」とか言っても、「まぁ良いんじゃないですかね…」と弱々しく何でもかんでも肯定するだけだった。それがいつも頼りなかったし、「簡単に良いんじゃないですかって言ったって、現実は全然良くないんだよ!」とイライラもした。

だけどこの先生は違った。私の"病気"の部分だけを見るのではなく、ちゃんと私の"人生"を見てくれていた。時には厳しいことを言われることもあったけれど、私はこの先生が好きだった。

だから急に決まった退職で、突然会えなくなってしまったことがショックだ。他の病院にいるのなら病院を変えることも考え、「あの先生は他の病院に転院したんですか?それとももう先生を辞めちゃったんですか?」と聞いたけど、どうやら精神科医という職そのものを辞めてしまったようだった。

この先生の診察を受けたのは1年足らずだったけど、先生が勧めてくれたおかげで障害者手帳や障害年金を受け取ることができた。それだけで、私の生き辛さが少しは改善されただろう。

そして何より、母親の意見にいつも左右されていた私の人生を、「あなたの人生なんですよ」と再確認して目覚めさせてくれた。あの時先生がそう言ってくれていなかったら、私は一生母親の言いなりになってしまっていただろう。

せめて直接お礼が言いたかったな。
私を目覚めさせてくれてありがとうございました。

自分の書いた言葉を本にするのがずっと夢です。