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新聞の苦境がある一方で、それに代わる信頼を醸成できるようなメディアが見当たらないというのが1番の危機だと思います:読書録「2050年のメディア(文庫版)」

・2050年のメディア
著者:下山進
出版:文春文庫(Kindle版)

またまたタイムリーになってますw。



3年半くらい前に読んだ本の「文庫化」。


アウトラインは分かってるんで、別に改めて読まなくても…と思ってたら、「新章」が加筆されとの記事が!

この加筆部分が読みたくて、購入してしまいましたw。
ま、今回は電子書籍(Kindle)にしましたが。



でも読んでよかったです。
単行本以降の経緯、そして今回の朝日の値上げにもつながる背景が見えてくるような「新章」でした。
ポイントはこんな感じでしょうか?


①新聞社の苦境はますます厳しくなっている。

②プラットフォーマーへの風当たりは世界的にも強くなっており、日本でも公取委がYahoo!のあり方に対して疑念を打ち出している。

③新聞業界は公取委のスタンスも背景に、朝日を中心としてYahoo!との価格引き上げ交渉に入ろうとしている。

④讀賣(山口社長)はその動きと同調しつつ、「アテンション・エコノミー」に翻弄されるジャーナリズムに危機感を持ち、日本のインターネットの父・村井純氏とも協働して、ネット記事の評価体制(オリジネーター・プロファイル)の構築を目指している。

⑤筆者としてはその方向性を評価しつつも、日経やニューヨークタイムズのように、第三者の評価に頼るのではなく、メディアの質を引き上げていく(それに合わせてビジネスのあり方を変えていく)ことが結局は「答え」なのではないかと感じている。


作者の質問に山口社長が書面で回答した内容が引用されていますが、山口社長の見識の高さに「さすが」と思う一方で、
「本当にそれが成立しうるのかな?」
という疑念も感じざるを得ませんでした。
(個人的には「小さなメディア」となって記事の質を上げていき、ネットでビジネスを成立させる方向だと思うんですが、そうなるとビジネスのあり方が全然変わっちゃいますからね)
一方でスマホに流れてくるネットニュースを眺めていると、
「ほとんどが価値がないんだよな〜」
と呆れる思いも深まるばかりなんですけど…。



本書は「ビジネスモデル」の話なので、それぞれのメディアの思想的なスタンスは関係のない話だし、それが決定的な影響を及ぼしているようにも思えません。
ただ現状のビジネスモデルに固執するがあまり、「アテンション・エコノミー」の競争に巻き込まれ、記事や文章が<先鋭的><過激>になってしまうことは、そもそものビジネスの土壌を破壊してしまうことになることが懸念としてはあります。
「こと」ではなく、「ひと」を批判する風潮。
これがその兆しなんじゃないか…ってのが僕の危惧です。


「自戒」ももちろんあるんですけどね…。



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