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地方行政こそがキーになるかと:読書録「次世代ガバメント」

・次世代ガバメント 小さくて大きい政府の作り方
責任編集:若林恵
出版:黒鳥社

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WIRED日本版の編集長を務めていた「若林恵」氏のムック本。
何かのブログ記事に少し紹介されてて、何気にポチッとしたんですが、これが面白くて…。
途中で中断するのがもったいくて、帰省先まで持ち込んでしまいましたw。


「政治」ではなく、「行政」をターゲットにして、ネットによる効率化とネットワーク活用によって、住民の多様な要望に応える「小さくて大きな」行政をいかにして作るか。
エストニアやインド、イギリスなんかの事例を取り上げながら、その可能性を論じた一冊になります。
「ムック本」ですからね。
体系的に何かが語られ、提案される…と言うよりは、エッセイ的な漠然とした語りの中から、<可能性>を指摘する…くらいの感じでしょうか。
でもそこら辺が、この内容にも合致したスタイルにもなってるように思います。


文藝春秋の三浦瑠麗さんの記事でも指摘されていましたが、日本の場合、アメリカと比較しても実際には国民意識は保守/リベラルにそこまで分断されていない。

その中で「選挙」での選択肢を<無理矢理>提示するために、野党は必要以上のリベラル寄りのスタンスを提示しようとするけど、本質的には差異は少ないために、結局は個別案件の「重箱つつき」になる傾向にある。(重要な重箱もありますが)
…現状を僕はそんな風に感じています。
その結果、生活の実感とは遠いところでの政治活動となってしまっているのではないか。
FBでの与野党の政治家のみなさんの記事なんかをみても、そう思わざるを得ません。


ここら辺。
まあ、仕方のないところはあります。
あるんだけど、それじゃあ実生活での改善は生まれないし、その延長線上での社会・国家の幸福感の向上(明るい未来といってもいい)も望めないでしょう。


「実生活上での幸福感の向上」
それをもたらすのは何かと言うのはいろいろあるでしょうが、「ガバメント」という観点からは、それは「地方行政のアップデート」ではないか?
そう思ってたところに、本書はバチンとハマった感じですね。
エストニアのような小国家でも、インドのような途上国でもない「日本」において、「行政のアップデート」を行うとすれば、「地方行政」であり、その鍵は「IT」だろうと。


実際、福岡市や横浜市ではそういう取り組みが進んでいるようですから、「夢物語」じゃないでしょう。
(大阪で「維新」に期待したのはここですが、<都構想>に引っ張られてスピード感がおちてるのと、首長がなにかと政治的発言を「しすぎる」のが、個人的にはマイナスです)
もちろん「ID」の問題や、ネットワークの互換性なんかの部分では「国」としての関与があった方が望ましいですが、それを待ってたらいつまで経っても話は前に進まない。
各地での取り組みを共有しながら、ある意味では「競争」もしながら「地方行政」をIT化し、アップデートしつつ、その成果を「国」として取り入れていく。
…こういう方向性が求められてるんじゃないでしょうか。
(マイナンバーなんかは悪くない取り組みと思ってるんですけどね、そのスタートとしては。その基盤を地方行政が活用できるようにすることが必要ですが)


まあ、そういう意味じゃ、現政権の「公文書」の取り扱いや、それをめぐる「言い訳」のアレやコレやは、ちょっと頂けませんけどね。
ああいうのを見ると、「政治家や国家官僚の技術知識は2、3週、遅れてるんちゃう?」と思わざるを得ない。
「技術は使うもの」ではありますが、今は「使うためのも知識が必要」な時代ですから。
トップ層の年齢が高いだけでどうこう言うつもりはありませんが(自分だって初老の域に入ってきているしw)、本書の内容くらいは政治家として把握できるくらいではあって欲しいと思います。


…ってそれは国会議員じゃしんどそうなんでw、「地方政治」「地方行政」に期待したい。
と言うのが僕のスタンスです。
「夢物語」じゃないと思うし、そういうところから「地方格差」は出てくるんじゃないかな、と。
「ある程度それも仕方ないやろ」
そうも思ったりしてるんですけどね。


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