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フィルムカメラのチャームポイント。

最近、カメラを持って出かけた日には、帰りがけにコーヒーショップに立ち寄ってその日シャッターを切った場面のひとつひとつを順を追って思い出し、撮影した光景を振り返ってみる、という作業を行うようになった。


この振り返り作業は、いわゆる「脳トレ」目的で始めたことだが、わたしはそもそも振り返りという行為が得意ではない。
過去は振り返らない、と言ってしまえば聞こえも良いが、小学生の頃から一度経験したことを反復することが面倒でならなかった。かと言って、まばたき一回で円周率を30桁記憶できるなどといった特殊能力を持っているわけでもないので、いかんせん学習速度は鈍くなる。


初めてカメラを手にした時、撮影する毎に絞りやシャッタースピードの数値を記録しておくと今後の参考になるからとカメラの先輩である夫に教えられ、最初のうちこそ真面目に従いメモを取っていた。しかしながらそのデータの価値を理解するまもなく元来の性分を発揮してあえなく挫折。フィルムにして10本目の頃だったと思う。まあ、10本分は続けられたのだから結構頑張った方かもしれない。その後は絞りやシャッタースピードはおろか、どのカメラで、どこで何を撮ったのかすら振り返ることなくシャッターを切り続けてきた。そんな自分が今、その日撮った記憶を振り返っているのだから年は取るものである。


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その日に撮った場面を振り返ってみると、鮮やかに記憶に残っているショットもあれば一回の振り返りでは抜け落ちてしまうショットも出てくる。自分の記憶力にも問題はあると思うけど、これは出逢った景色のインパクトの違いということになるだろう。
しかし、これは!という瞬間を捉えたつもりの写真も現像から戻ってくるとガッカリ、ということは往々にしてある。
一方、なかなか思い出すことのできない印象の薄い一枚がつまらない写真かというと決してそういうわけではなく、印象の度合いは写真の完成度に比例はしない。(当社比)

一本のフィルムで撮れるコマ数は決まっている。
だからひと通り振り返ってみて数が足りてないとわかればもう一度、最初からさらってみる。そうやって何度となく振り返りを繰り返すうちに不思議とすべてのショットを思い出せるのである。これは脳トレとしての効果アリと言っても良いのではなかろうか。
しかしその後、振り返り作業を終えてカメラ屋さんへ現像に出してしまうと全ての記憶をいったんリセットしてしまう。カメラ屋さんという他者に委ねることでなんとなく手放してしまうのだ。そして現像されて戻ってきた時には新たな目で手元の現像データと日数を経てさらに遠のいた記憶を重ね合わせて答合わせをする。この答合わせに「間違い」は存在しない。現像直後の時点では失敗だと思ったカットを例えば半年後に見直してみると、どうしてこれをはじいたのかと疑問に思うことがある。照合すべき記憶の輪郭が消えた分だけ、そして自分の経験値が増えた分だけ正解は増えていく。


以上、今回とりとめなく書き綴ったことすべてはそのまんま自分にとってのフィルムカメラのチャームポイントなのだ。


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