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自由学園明日館にて理性を失う。

雨の休日、自由学園明日館を初めて訪ねた。
池袋駅で電車を降りて要町通りを渡るとそれまでのがちゃがちゃした繁華街は、昔ながらの建物がちらほら残る閑静な住宅街へと一気に表情を変えた。いきなりこんな住宅地に入っちゃったけど道、間違っていないだろうかと不安を覚えた頃、周辺の建物と異なるオーラを発する後ろ姿が見えてきた。これまで何年もの間来たい来たいと思いながらなかなか訪れる機会がなかった、巨匠フランク・ロイド・ライトによる設計の自由学園明日館だ。










無数の直線が交差して生み出される幾何学模様、大谷石のあたたかみのある表情、窓枠のいかしたデザイン、間接照明の数々。シンメトリーの美しさ際立つ、イッツ・ア・フランク・ロイド・ライト・ワールド!どこをどう切り取ろうが絵になってしまう名建築に酔わされてすっかり理性を失ったわたしはシャッターを切る手が止まらなくなってしまった。





明日館は窓が大きいからだろうか、室内と屋外がゆるやかにつながっているように感じる。雨の日は雨の日の光がさんさんと差し込んで、室内のさまざまな輪郭がぼんやり浮き上がり、床には鈍い反射が生まれる。嗚呼陰翳礼讃。




石畳の路地を挟んだ反対側にある講堂を訪れた時、わたしの他に誰もいないという幸運の独占タイムが到来した。こちらの講堂はライト氏の高弟・遠藤新の設計だ。板張りのホールに整然と並べられた木製の長椅子。ガラス窓枠のデザインと、桟敷席の両端に取り付けられた大きな照明の意匠の見事さに落ち着きを取り戻しつつあったマイ・バイタルサインはまたも急上昇。わずか2時間足らずの滞在中に使用フィルムは3本目に突入した。しばらくすると館内ツアーの小グループが講堂へ入ってきてくれたのでようやく我に返ることができたのだった。




こんな歴史的に重要な、美しい建物を長い間維持管理して、惜しげもなく一般公開して内部を自由に歩き回らせてくれるなんて本当に感謝感激だ。また来ようと思う。次回は違うカメラ持って。今度はもう少し冷静でいられるだろうか。



赤い傘さしつつ撮る


使用フィルム: 明日館 PORTRA400 / 講堂 Reflx lab 800T  (おおよそ)

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