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心理職に向いているひと

 スクールカウンセラーをしていると「自分も心理学を学びたい」とか、「スクールカウンセラーになりたい」と話してくれる小・中学生がいます。そしてそのほとんどは、不登校であったり、希死念慮があったり・・・リストカット等の自傷行為をしていたような子どもたちです。

 私は、そういった子たちには「辛いことを乗り越えてきたから、きっと向いているよ」と話しています。小・中学生という比較的早い段階でなんらかの挫折を味わい、克服するために私のところに何度も相談に来てくれた子たちです。

大人のせいで辛い目にあっていた子たちも、別の大人を信じてみようとピュアな心で頼ってきてくれたことを嬉しく思いました。そしてその心の強さを、ちゃんと受け止めなければならないな、と思っています。

 心理面談というのは、一回一回が非常にリスキーなものであり、その都度大事な局面を迎えます。なぜなら子どもたちは大きな爆弾を抱えているからです。悪意ない言葉でも、マイナスに受け取れるような言葉を発してしまった場合、こちらの想像をはるかに超えたダメージを相手に与えてしまいます。
保護者面談も同様です。藁をもつかむ思いで来ていること、わざわざ忙しい合間を縫って、人に話しにくいことを相談しに来てくれているのだということを念頭におき、それなりのお返し(話してよかったと思えるもの)を、返してあげなければいけません。

すぐには答えや変化が出せないものであっても、子どもたちの頑張りと絶望をまずは受け止めて労うことが大事なんですね。

心理職に本当に向いているかどうかは、そういった場面で物事をいかに柔軟に考えられるか?で決まります。

そこにいる相手は、必ずしもあなたと同じ価値観・境遇・思考の持ち主ではありません。頭ではわかっていても、実際に目の前にいたらどうでしょう。あなたに訴えてくることが、どれもハチャメチャに思えたら?全否定したくなったら?

心理職の心得として大事なのは、相手のありのままを尊重することです。それが出来ずに引いてしまったり、お説教したり、考えを正そうとするこは、”おごり”でしかないのです。

勤勉で努力してきた人、生まれつき裕福で恵まれた環境で育ってきた人たちには、特にそういった弱者の目線に立つことは難しいかもしれません。

どうしてがんばれないの?(私はどんなに辛くてもやってきたよ?)

どうして自分のことができないの?(周りはみんなやってるよ?)

どうしてそんなにネガティブなの?(全部悪い方へ考えすぎじゃない?)

などと疑問ばかりが頭に浮かび、そういった”理解が難しいひとたち”と関わっていくことで、今度は自分自身の精神面に支障をきたしてしまうのです。

当事者である人が心理職を目指すことには賛否はありますが、自分自身の抱えている問題を自覚できており、その困難を乗りこえられていれば何ら問題はありません。

不器用でも、時間をかけてでも、前を向こうとしている人なら、少々学校のお勉強が出来なくても、資質としては圧倒的に向いているでしょう。

自分と価値観の違う人を目の前にして、受容的に話を聞くことができること。話を聞きながら、相手の心理状態や背景をアセスメントすることができること。そして相手のマイナスな感情や不安を、自分のものと勘違いして受け止めずにいられる人が、心理職に合っているのだと思いますよ。

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