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RX 3章2話 消失 ♪PTOLEMY


RXの中で一番重要な話です。
それだけにとても暗くショッキングな回なので、お気をつけてご覧ください🙇‍♂️

(死、自殺 といった言葉が出てきますが、決して自殺を薦めているものではありません⚠️)


あらすじ

悪役レスラーRXの壮絶過去 17才の成長物語
1章 病弱な少年は、レスラーの強さに憧れる
2章 事件が起きて居場所を失い、独りで苦悩
3章 ストレスで絶望感に襲われ、精神病院へ


前回はこちら ↓



RX 〜悩める若者への処方箋〜
🟡第3章 ロックボトム 2話 消失




薄ぎたないシャツと履き古した靴で、

雨の夜をうろつく。

 傘も持たず、ずぶぬれだ。体が凍える。


道路を横切っていく、ノラ猫と目が合った。

同じ境遇の僕ら、よそ者は排除される運命。


学校にも、家にも、心の中にも、

 居場所はない。行き場も、戻る所も。


僕が生きれる場所は、世界中のどこにもない。


学校に行くなんて当たり前だ、

 大人の社会はもっと厳しいぞ。

お言葉が、僕を崖っぷちに追いやる。


なじめないという理由だけで、

 学校にすら通えなくなった。

将来、生きていける自信がない。


いや、こんな僕は生きていてはダメだ。

 生きる資格も、権利も許されない身。


存在意義を見失っていた。失格。

 僕は生きる価値がない人間なんだ。



徘徊は続く。滑りやすい路面を、

自問自答とともに、あてもなく歩く。

 息切れして、頭は混乱しっぱなし。


家庭、進路、将来。全部終わった。


不運が重なり、人生に絶望すると、

人は死にたいと考えだす。

 今、その意味がわかってしまった。


生きることが これほど辛くて、怖くて、

 もう死んだほうが楽だと思わないか。


お先まっ暗な夜道が、自責の念を加速させる。

自業自得、悪いのは自分。

僕が生きているせいだ。死んだほうがいい。


せっぱ詰まって冷静さを失い、

 正しい判断ができなくなった。

心の声に突き飛ばされ、重力へ羽ばたく。


死ねば、全て終わり、全て解決する。

最悪な人生から、ようやく解放されるんだ。


発動した希死念慮は止められない。

 死のう、死ぬべきだ、死ぬしかない。


まっ逆さまで、闇に落っこちていく。

 存在を滅ぼせ、僕なんか死んでしまえ。



一体どれほど歩いたのか、

 町ハズレの線路沿いに行き着いた。


踏み切りの遮断機が降りる。

 赤く点滅し、鳴り響くサイレン。


遠くからやって来る、かすかな光。

僕は吸い寄せられていく。


自殺衝動に駆られた。

 残された最後の手段、最期の望み。


電車のライトが、希望の光に見えた。


猛スピードで鉄の固まりに激突して、

体がグチャグチャに、

 命がバラバラになってもいい。


この世から消えるために、

 あの世行きの列車へ、さあ、飛びこめ。


じゃりを踏み、すくむ足で線路に立つ。

 もう手遅れだから、後戻りはできない。


涙と雨粒で、ぼやけた焦点。

 耳をつんざく警笛、ごう音。

どんどん死が迫り、消えゆく影。


強烈な光が眼球を貫き、

 目の前は全て、真っ白になった。


気絶しそうなほどに、魂を飲みこんでいく。


しかし直前で線路が分かれ、

 電車は僕の真横をかすめていった。

死ねなかった・・・


大雨に打たれながら、呆然と立ち尽くした。


(つづく)


♪イメージソング

ディギー・モー「トレミー」
僕が一番好きなミュージシャン、SOUL'd OUTのメインボーカルの衝撃的なソロ曲。
歌詞を見ても目で追えないほどの高速ラップが、
一種のトランス状態を感じさせます🔱


まだこの小説を書く前の構想段階だった頃
最初に思いついた場面が、
当話③の、電車が近づいてくるところです。

"電車のライトが、希望の光に見えた
この一文こそ、自殺を考えている人の思考を表し、この物語で伝えたい多くを集約した、
まさにRXのすべてを象徴するシーンです。



🟡次回は 3章 3話 谷底
7/30(日)に投稿予定です⚠️


↑ イラストを投稿したりしてます!🎨


今週もご通読ありがとうございました🙌
また来週 お会いしましょう‼️

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