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鬱(うつ)症状を30分で減らす方法

健康に使えるエビデンス

わたしたちの健康に関わるエビデンスを紹介するマガジン。毎週水曜日午前7時更新。


鬱や不安が減る方法

不安は現代病の一つともいえるもので(※2)、今現在苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。わたし自身、40年以上生きているのがツラい状態でした。この状態が30分で減るのだとしたら、こんなにありがたいことはありません。ちなみにわたしは3年かけて元気(不安がほぼ無い状態)になりましたが、今回紹介する方法は、それを圧縮したような内容です。

ちなみに、わたしが3年かけて何をしたのかというとひらすら知識を収集しました。とりあえず本を1000冊買って読んでみました。読ん本などは、別アカウント(おおたしじみ(好奇心版))で紹介してい(き)ます。これはなかなか楽しい冒険でした。その過程でわたしの姿勢をおもいっきり変えたのは漫画『Dr. Stone』のこんなセリフとでした。

「科学では分からないこともある、じゃねえ。分からねえことにルールを探す。そのくっそ地道な努力を、科学って呼んでるだけだ」

人は、良い方法があっても、人から教わったことである場合、それに従うことを嫌がります。その一方で自分で見つけた方法である場合は、従順に従います。この傾向を「心理的リアクタンス」と言います。人は誰しも自分で考案し、自分で発見したがるようです。詳しくはこちらでも紹介しています。

さて、さっそくタイトルの内容に入ります。

論拠になる研究はハーバード大学の2017年の論文

現在はStony Brook UNiversityで助教授をしていJessica L. Schleider博士の2017年発表の論文(※1)が、この方法を紹介していました。

Jessica L. Schleider博士 source: http://www.schleiderlab.org/labdirector.html

12〜15才の若者96人を対象に、不安や鬱で毎日の生活に問題が出ている人を選んで行った研究です。グループを2つにわけで、それぞれ30分の介入を行いました。

A:サポーティブセラピー
感情の仕組みについて学び、それを他人に話すことで癒しを得るセラピー

B:パーソナリティチェンジ
「人格は変えられるのだ!」という事実を学ぶ介入

結果はBの圧勝。Bのパーソナリティチェンジを受けた参加者たちは、その直後から大幅に鬱症状が減り、その効果は9カ月後も持続していました。Aのサポーティブセラピーも鬱スコアが11%減っていましたが、パーソナリティチェンジをうけた参加者たちにおいては、鬱スコアが33%減でした。

パーソナリティチェンジで参加者は何を学んだのか?

「パーソナリティチェンジ」というタイトルどおり、「人格は変えることができる」という事実を参加者たちは学んでいました。具体的には、脳の可塑性(脳の構造は変えられるということ)や感情と思考が行動につながるという人間の行動の原理。要は、脳は環境や刺激で変えることができるのだから、人間というのは、環境や刺激で変わることができる、ということ。

裏返せば、

鬱や不安に苦しむ人々を苦しめ続けているのは、「自分のこの状態は変わらない」という思い込み

ということになります。

パーソナリティチェンジを自分で学べる本

では、「人間や脳は変わることができる」ということを自分で学ぶことはできないのでしょうか。いやいや、本や動画で学べます。実際、わたし自身もこれらの本で不安が減った体験を持っています。

(1)成長マインドセット

この論文でも扱っている成長マインドセットについての第一人者、キャロル・ドゥエック博士のTEDの動画。

この動画以上にドゥエック博士の著書『マインドセット』にわたしは大いに救われました。


(2)脳の可塑性をを学ぶ

可塑性(かそせい)って難しい言葉ですが、英語にするとPlasticity。あのプラスチックということば、可塑性を意味する言葉です。有る形にして固めることができる、みたいな意味です。オックスフォード大のエレーヌ フォックス博士のこちらの本や実例を交えて、悲観的な思考を変える方法を提示してくれています。


(3)人間なんて所詮アルゴリズムじゃん

自分を自分というよりは「一人間」として扱うとかなり楽になります。わたしはこれを「観察主義」と呼んでいます。アルゴリズムというのは現象に組み込まれた仕組みという捉え方で(ここでは)、このフィクションを読むと、「なんだ、わたしたちって現象じゃん」と思えるかもです。しかもおもしろい!

加えて、認知バイアスというものを知れば知るほど、人間というものを「仕組みを持った機械のようなもの」という捉え方が容易になってきます。認知バイアスについては、別アカウント(おおたしじみ)のこちらのマガジンで紹介しています。


(4)認知バイアスを本で学ぶ

わたしの人生を変えられてしまった本の1冊です。ダニエル カーネマン博士ととヴェルスキー博士が研究した認知バイアスを知ると、人間の不随意ともいえる行動や思考の仕組みを学べます。

(5)人間は人の言うことを聞かない、ということを知る本

わたしたちが、いくら学んでも、有益な情報を得ても、それを活かせない理由「心理的リアクタンス」を知ることできる本です。これを読んだあとは、素直になれるかもです(笑)。ただし、大きくそれを邪魔するものがあって、それは自尊心なんですよね。この自尊心を消す方法を別アカウントのこちらで紹介しています。


まとめ

「人間なんて所詮乗り物」という考え方は、意外に有効なんです。なぜなら、それなら乗り方を覚えれば良いから。こう考えると自分を変えるということが容易になってきます。自尊心というのは人間らしさでもあるんです。恋に、仕事に、人生に悩むのが、この自尊心だから。そういう意味では、健康的に生きるためには、人間をやめる必要があります。「人間をやめる」とは、覚醒剤をやったり、生きる喜びを捨てるという意味では有りません。人間らしいバグやエラーを捨てるということになります。自尊心を捨て、観察主義に移行すると、生きているのが楽しくなります。

Youtube ラジオやっています

毎日午後9時更新で、エビデンスベースの話をゆるく10分間話しています。


参照

※1:A single-session growth mindset intervention for adolescent anxiety and depression: 9-month outcomes of a randomized trial (2017)

https://acamh.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jcpp.12811


※2:鈴木祐『最高の体調』


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