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山形蕎麦カレンダー ~鈴木製粉所の一年間のイベントスケジュールについて~

蕎麦は「新そば」という旬を大切にする食べ物です。つまり、季節や暦との親和性が非常に高い食文化といえます。
鈴木製粉所では、お蕎麦屋さんに行けば季節を感じられる、いろいろな取組を行っています。今回はその概要をご説明いたします。

①寒中挽き抜きそば 1月初旬~2月
②やまがた女子蕎麦 2月中~3月中
③寒ざらしそば 4月中旬~
④天保そば 5月末~6月
⑤夏新そば 8月~
⑥新そば 10月~
⑦年越しそば 12月末

①寒中挽き抜きそば 1月初旬~2月

山形県にある天童は、江戸末期にそば栽培が盛んでした。天童織田藩第11代藩主織田信学はこれを特産品「寒中挽き抜きそば」として将軍家に献上しました。東北・北海道地方としては唯一将軍家に献上したそばであることが「大成武鑑時献上」の記録から分かります。
真冬の時期にそばを挽き、きれいにふるいにかけたそば粉を使用した特製のそばです。
1月初旬に建勲神社に奉納し、賞味会を行った後、2月まで天童市内の参加店舗で提供されます。

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②やまがた女子蕎麦 2月中旬~3月中旬

毎年雛祭りの時期に行われるこのイベントは、女性にもっと蕎麦を食べてもらおうという思いから始めました。
山形県内の各参加店舗が考える女子蕎麦セットを食べ歩きながらスタンプラリーをします。
提供するお店側としても、メニュー提案はもちろん、お店をちょっと見直すなど、女性目線を考える勉強にもなります。コンセプトは「ちょっと素敵な蕎麦屋さん」。お金や時間をいっぱいかけなくても、ちょっとの工夫で大きな成果を得られることもあります。
食べ歩く女子も提供する蕎麦屋さんも、ちょっとワクワクする冬の山形の定番イベントになりました。

「お蕎麦屋さんで女子会」が普通に行われるようになるといいな。

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③寒ざらしそば 4月中旬~

正式には『山めん寒ざらしそば』といい、山形麺類食堂協同組合が主催のイベントです。
この寒ざらしそばとは、冬の寒い時期にそばの実を清流に漬け、水揚げした後寒風に晒して乾燥した原料で作った、手間暇のかかった特別のそばです。
江戸時代の保存方法で、アクが抜け、ほのかに甘みが出ると言われます。
山形では「大寒」水漬け、「立春」に水揚げし、「啓蟄」まで寒風に晒すというように二十四節気に沿ったスケジュールにしています。桜の咲く頃に献上式と賞味会を行い、参加するお蕎麦屋さんでご提供します。
その昔信州のお殿様が将軍家に献上したそばですが、完全に忘れ去られた文化でした。昭和49年に、今は亡き「萬盛庵」の高井さんが文献から見つけ、弊社の亡くなった先代社長に相談したところからスタート。昭和50年2月のそばを食う会で初お披露目しました。現在では全国各地に広まっているようです。

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④天保そば 5月末~6月

『幻の山形天保そば』で商標登録しています。その昔天保の大飢饉で苦労した横川家(福島県大熊町)のご先祖様が、将来の子孫が大変な時に使って欲しいと思いを込めて、俵に蕎麦を詰めて備蓄しました。
平成10年に家を解体するときに屋根裏から俵に入ったそばの実が見つかり、各種研究機関に発芽を依頼したのですが、「発芽性能なし」という結果になりました。福島の蕎麦屋さんを通じて、鈴木製粉所に発芽試験の依頼があり試行錯誤した結果、プランターにて発芽成功しました。福島でも同じ方法で発芽したので信用され、山形で「保存会」を結成して、山形の宝物として育てることとなりました。
保存会では、他の現在の種と交雑しないように飛島で原種栽培をしています。ただ飛島での栽培は手間がかかり過ぎるので、山形市内でハウス栽培等にも挑戦しながら試行錯誤中です。
江戸時代の蕎麦の味を楽しむには、世の中にはこの蕎麦しかありません。俵というタイムマシンに乗り、時空を超えてやって来たのですから。
またこの天保そばは、将来子孫が大変なときに使って欲しいという願いが込められていたものです。その大変な時とは2011年の東日本大震災の時だと解釈出来ます。大熊町は今なお帰宅困難な地域です。保存会では被災された大熊町の方々を毎年4月に山形にお招きし、故郷由来の天保そばを振る舞っています。
一般には5月末から参加店舗(現在14店舗)の蕎麦屋さんにて、数量限定でご提供しています。乾麺も好評です。

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⑤夏新そば 8月~

今では全国的に珍しくなく九州では「春そば」と言っていますが、山形では30年くらい前から西蔵王地区を中心に栽培し、夏の山形の風物詩として定着しています。そばは通常秋に新そばが出るので、夏には一年近く保存した原料を食べる事になります。昔は「夏そばは犬も食わない」と言われ、夏場の蕎麦の食味が落ちるのは業界の悩みでした。
山形は夏に花笠を始めとするお祭りがあり、お盆の帰省客でも賑わいます。その時期に美味しい新そばを食べていただきたいということから、「夏新そば」の試みが始まりました。
山形周辺ではGW前後に播種し7月に収穫します。収穫時期が梅雨にぶつかることから「穂発芽」など非常にリスクが高く、高度な栽培管理の技術が要求されます。弊社では、近県の石巻会津横手にも契約地を広げリスク分散して安定確保に努めています。

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⑥新そば 10月~

そばの旬は秋です。ただし、栽培地によって収穫時期は異なります。「新そば前線」は北海道から始まり南下していきます。最近では新そばの早出し合戦がエスカレートして旬が分からなくなっていますが、弊社では、最も旬の時期に秋の新そばをお出しする事にしているので、北海道産は10月初旬、山形産は10月後半を目安に新そばをお出ししています。海外産も国によって異なりますが、中国産は10月中下旬辺りが目安です。
特に北海道産の早出しは様々な弊害があることから、「ボジョレーヌーボ」のような解禁日があればいいのですが・・・。

⑦年越しそば 12月末

一年で一番蕎麦業界が活気にあふれる時期です。
年越しそばの由来については諸説ありますが、昔から続く日本の習わしを、これからもずっと続くように盛り上げていきたいです。
そもそも毎月末の「晦日(みそか)」に蕎麦を食べる習慣があり、「大晦日」だけが年越しそばとしてそばを食べる習慣が残ったと言われています。全国蕎麦製粉協同組合では、大晦日だけでなく毎月末の晦日をそばの日として盛り上げる活動を展開しています。

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これらのイベントの解説も含めたYouTube動画「山形の蕎麦事情」を作りましたので、ぜひご覧ください!


それぞれのイベントは、別の機会にさらに深堀りしていく予定です。


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