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VC-Secondaryの状況を調べてみた

ClosedでClub-Dealが跋扈して参入/アクセス障壁のたかいVC業界ですが、セカンダリー市場の整備/成長で投資対象クラスとして身近なものになってきました。最近日本でもKeppleが1号ファンドを組成(0.65億ドル)するなど関心の高まりがみられます。
今後の成長次第ではIPO/M&Aに次ぐExitとして機能するとともにセカンダリ調達でのファンドデッキ編成もあり得る。ここに小口分散が絡まってくるとこれまた面白いことになるのかなと。

1;VCとセカンダリの隆盛

 過去10年間でVCへの投資が急増し、様々な分野の投資家がVCに資本投下して競争が激化、伴って多数のVCファンド/企業が設立。VC/起業家/金融機関/コンサルのエコシステム内で人材の流動化も進んで、SO/成長/やりがいを求めて人材/資金が流動化
 しかし、22/04のFRB利上げを契機に熱狂状態は終了。資金調達環境の激変でパーティは終わりを告げてVC支援のスタートアップの評価の正当化が困難に…。過大評価に対する疑義が生じて、VCの調達状況/VC投資へのリスク認識の両方が変化、魅力的なリターンを約束する安全投資に資金シフトが発生

2;セカンダリの投資対象化

 上述通りVC市場は過去10年間で大幅に成長したが、クローズド/クラブ的で一般投資家にはアクセスが難しい資産クラスと認識。スタートアップ/コンサル/VCのエコシステムは結構強固でプライマリ段階での投資はハードル高いが、セカンダリ市場/ツールによりアクセスが以前よりは容易になった
 特にリスク回避型の年金基金/大学基金などの投資家のポートフォリオ多様化(運用資産クラスの追加)に貢献。また、投資家の対象クラスはCredit/Infra/RealEstateなど細分化が進む中でVCセカンダリも一般化/細分化が進み、選好に応じた投資が可能になった

3;セカンダリの現状

 セカンダリーVCはVC市場において調達額/ディール取引件数などで20%近くのシェアを持っており、存在感が増している。隆盛の背景には[PE保有資産の売却意向のある投資家]や[PEによる継続ファンド型取引の出現]といった動きがあり、セカンダリに特化するファンド数も多くなっており、概ね10億~25億ドルのファンドレイズを実行
 セカンダリーは特にVC保有資産(一般的に出口戦略がむずい)の流動性懸念に対する解決策として活用。PEの中でもVCの評価/期待は高いが、[出口戦略の少なさ(M&AかIPO)][保有期間の長さ(流動性を得るまで)]といった要素がネガティブ。
 金利上昇に伴う金融環境の変化で投資家の資本返還圧力も強まる中で、流動性を提供するセカンダリー市場が重要に(主にLP主導ディールでVCファンドの保有株の売却か、継続ファンドの調達で対応)
 既存投資家へ現金変換/ローリングの選択肢を提供し、上昇期待のある割引資産への投資を希望する新規投資家を引き付ける継続ファンドでも活用
 継続ファンドには多くのVCが参入を表明し、セカンダリ取引市場のボリュームが増し始めている。従来の継続ファンドはバイアウト系のPEが主流だったが、VCにも広がりが。
 ちなみに、直近では[Lightspeed Venture Partners]が10億ドル相当の保有資産の売却を計画、当該資産を市場を通じて継続ファンドにロールインすると報じられた。また、[Andreessen Horowitz]や[Thrive Capital]などのエンジェル/VCも過去1年にセカンダリー市場を介したファンド保有資産(株式)を売却している

4;セカンダリ市場のメリット

1;投資アクセス
 直接投資/プライマリーで取得できなかった高成長スタートアップへの投資アクセスが可能に。
 既にDDが行われており、その結果に基づいて投資家が投資されている安心感(情報の非対称性大きくDD自体も難しい)があり、スタートアップ/VC業界自体がクローズドで興味ある投資家の参加ハードルの高さをクリアする
2;ポートフォリオ設計と価格透明性
 VC投資をしたいがリスク選考度低い投資家は直接投資に比べて[保有期間;短][ドローダウン期間;短]なVCセカンダリーポートフォリオを編成可能
 セカンダリー価格はプライマリーに比べて大幅割引され、投資家はVC投資の過剰評価問題を解決しうる。
 調査機関; PJT Park Hillによると23年度のセカンダリの価格感は[LP主導の持分価格=基準日NAVの60-65%][GP主導の継続ファンド=基準日NAVの57%]。(ちなみにプライマリでは[持分価格=90-95%][継続ファンド=91%])

5;セカンダリ市場の課題

1;他資産と比べた取引量の確保
 これまでのLPによるポートフォリオ売却やGP主導での売却/現金化圧力などでセカンダリ市場は拡大したが、M&A/IPOに比べるとまだ小さい
 投資持ち分の売却による[民主化]は一定為されたが、投資対象の本質的な特徴(情報希少性や市場参加者集中など)がまだ取引円滑化を阻害しているともいえる
2;アクセスの融通
 VC業界でも上位25%へのアクセスは依然として限定的で、GPへの情報集中傾向があり、セカンダリに出さずともファンド持分を継続ファンド経由で継続保有が可能な状況にある
 市況によるがまだまだ[LPの継続出資>セカンダリ売却]となっている。VCでの継続ファンド使用は、[割引価格での早期流動性]と[資産の継続保有]の双方とも選択しえないLPも多い(評価額洗い替えの観点)

6;市場環境

 PitchBookによると24年はセカンダリ取引の転換になると予測。背景には[GP/LPにとっての出口戦略の不透明さ]や[既存資産の現金化(再出資)ニーズ]があり、流動性を各社が求めていることがある
 調達規模もFY23-1Q~3Qでセカンダリーファンドは681億ドルを調達、20年を除く全年の調達総額を上回った
 現時点でも134のセカンダリーファンドが資本調達を実施しており、本年当初からLexinton Partnersが227億ドル調達(1/9)という驚異的な額を調達。セカンダリ特化としては23年のBlackstoneによる222億ドルのセカンダリーファンドを上回る規模で史上最大額に。

 現状でGlobalのTop5ファンドは以下(Fund/目標額/調達開始時期/本拠)
 1;Ardian Secondary Fund IX,250億ドル,2022/2,仏
 2;Clipway Secondary Fund,40億ドル,2023/06,英
 3;Coller International Partners,100億ドル,2022/21,英
 4;Hamilton Lane Secondary Fund,50億ドル,2021/09,米
 5;HarbourVest Partners Dover Street XI,120億ドル,2022/08,米

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