短歌 新作7首 『人として』
子どもの頃、大人になればなんでもできると思っていた。
まだわからない社会の仕組みや、納得のいかない理不尽なルールが、大人になればぜんぶ理解できるようになると思っていた。
けれど、大人になったって、できないことや知らないことはちっとも減っていかないし、むしろ大人だからこそ、守らなきゃいけないたくさんの制約に縛られてしまう。
大人として? 男として? いや、混沌としたこんな世の中を、僕はただのひとりの人として生きていたい。
そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
『人として』 鈴掛真
漠然と首吊りしたい衝動を隠して人間ドックを受ける
ボールペンしか許されず大人って失敗してはいけない決まり
「血管が可愛いわね」と褒めてきた看護婦、ヴァンパイアかもしれない
唇の切り傷から流れ出た血を君は拭ってくれるだろうか
古本のページ捲れば立ち込める知らない誰かが生きてた匂い
人としてちゃんと生きてるはずなのにフローリングの埃は積もる
重罪にならないだろう恋人がいるとは言ったわけじゃないから
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