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短歌 新作8首 『春またやって来るのに』

また次の機会に、また次回に、と未来に期待してしまうけれど、同じ瞬間は二度と戻って来ない。
ゆるやかに変わっているはずの季節の中で、ふと、なぜだか昨日までとはまるで違う心持ちの自分に気づく。

そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

春はまたやって来るのに

「こんなのは小雨だよ」ってどしゃ降りへ傘もささずに飛び込む背中

手のひらに重力を起こし世界中の言語で束ねた花を贈ろう

平淡な書体で届く[おやすみ]が記憶の君の声色で鳴る

恋心に気づく代わりにともだちを一人失う交換条件

真夜中の寂しさだけを採り出したエスプレッソをどうぞ召し上がれ

いつのまにか好きな人ではなくなって違う深さでソファーが窪む

春はまたやって来るのに君と見る桜は散った記憶のままで

君だけに見せるつもりで描き出した油彩画を売る個展を開く

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