花咲くように、しなやかに。
はやくも梅の花が咲いていた。
たくさんある梅の木の中で
紅梅と白梅それぞれ一本ずつ、
並んで咲いていたのだ。
その二本の木だけ、
陽射しのスポットライトが当たっていた。
私はマフラーにすっぽり埋もれながら
ああ、いいねえ!
と、マスクの下で微笑む。
♢
今日は成人の日。
私の住む街の成人式の式典は
急遽中止となってしまったらしい。
式典は行っても行かなくても自由。
行きたい人も
行けない人も
行かない人も
いてかまわないと思う。
どこにいて何をしていても
成人の日がある、という事実だけだ。
自分の成人式の頃、
私は何をしていたかな。
成人式の式典には参加したけれど、
それからまもなくして
私は入院生活を送ったのだったな。
式典の頃も病状はだいぶ進んでいたけれど、
家族も含めて
周りの人たちには隠していたのだ。
大学の授業の間をぬって病院に通い、
春休みの間についに入院したのだった。
成人式のことを思い出すと、
無理をしていた自分の姿が目に浮かんでくる。
なぜあんなにも頑なに
隠していたのだろう?
おそらく
《今》という大切な毎日の連続を、
病気で断たれたくなかったのだと思う。
ずっと続いてほしかった。
それくらい楽しくて充実していた。
意地っ張りだった。
今となっては笑うしかない。
♢
この歳になるまでの間
辛いことや悲しいことも沢山あったけれど、
私、ここまでやってこられたじゃない。
と思う。
今もこうして、図々しく生きているし。
いつかは笑い話になる、なんて
その時の当事者は思えないものだ。
けれども時間は着実に過ぎてゆく。
何年経ってからでもいい
振り返った時にそう思えたら、
自分はあの時の悪魔のような時間に勝ったのだ!
と誇れる。
♢
振袖姿の女の子二人連れが
マスクをしたまま大きな声で笑いながら
歩いていた。
その屈託のなさを見た時、
この世代の子たちは
これから先も
困難さを乗り越えていけるのだろうなと
信じた。
新しいひとの
新しい価値観
新しいやり方。
私たちには思いつかないようなことを
さらりとやっていくしなやかさが、
困難な時だからこそ、
若い人たちには備わっていく気がする。
とても頼もしい笑い声に
励まされたのは私の方だ。
ありがとう。
あの梅の花のことを
心の中で思い出していた。
寒い中でも彼女たちは
きっと、咲く。
新成人のみなさん、
おめでとうございます。
文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。