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一時保護の制度について | 虐待を疑われて子供を一時保護された夫婦の話

はじめに

次男が入院して、子どもたちが一時保護されるという事態に陥るまで、自分たちが虐待を疑われることになるとは想像すらしていませんでした。
子どもたちのことが大好きで、親戚家族みんな仲が良く幸せで、友達にも恵まれていて、その様子の写真・動画が山のようにある…。そんな状況だったので、一時保護された後も、すぐに疑いは晴れて保護解除されると考えていました。
しかし、その考えは甘すぎたのです。

概要

今回の記事では、児童相談所の一時保護という制度についてお話しします。
厚生労働省の資料には様々な情報が書かれていますが、児童相談所の人員不足や対応の不備についてのニュースが目に入ります。そのため「本当に、資料に書いてあることを守ってくれるの?2ヶ月で進めてくれるの?」という不安もありました。
同時に、調べれば調べるほど、児童相談所(長)に与えられている力の強さも実感しました。

この記事を読んでほしい人

✅子どもが硬膜下血腫等の怪我をしてしまった方
✅硬膜下血腫等が生じてしまった原因がわからず悩んでいる方
✅揺さぶられっこ症候群を疑われている方
✅子どもが一時保護されてしまった方

私たちと同じように子どもが硬膜下血腫等の怪我をしてしまった方へ、私たちの事例の共有をして、怪我の原因究明の一助にしてもらいたい。また、私たちと同じような経験をしている方の焦りや不安等を少しでも緩和できればという想いで記事を書いています。


そもそも一時保護ってどんな制度?

日本における児童相談所の「一時保護」は、子どもの安全を確保するための緊急措置として設けられています。一時保護は、虐待や家族環境の問題により、子どもの生命や健康が脅かされる場合に行われます。この制度は、子どもを保護し、安全な環境で生活させることを目的としています。

児童福祉法第33条(抜粋)
児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

児童福祉法
※2024年7月時点

私たち夫婦の間では「疑わしきは一時保護」という表現を使っていたのですが、一時保護は子どもの意思や保護者の同意がなくても行うことができます。
保護が行われた場合は、児童福祉司から保護者へ、保護の理由や今後の対応について説明することになっています。

児童相談所(児相)の役割

児童相談所(児相)は、日本において子どもの福祉と安全を確保するための中心的な機関です。子どもに関するさまざまな問題に対応し、適切な支援と保護を提供するための役割を担っています。虐待に限らず、家庭内暴力の防止、子どもの保護、そして必要な支援を提供するなどの役割を担っています。

その中で、一時保護における児相の主な役割は以下の通りです。

・緊急保護と安全確保

まず、子どもの安全が脅かされていると判断された場合、児童相談所は速やかに子どもを保護し、安全な環境に移すための措置を講じます。この際、警察や医療機関と連携して緊急対応を行うこともあります。

・子どもの心理的・身体的ケア

次に、保護された子どもの心理的および身体的な状態を評価し、必要な医療やカウンセリングを提供します。これには、子どもの心のケアや健康状態のチェックが含まれ、専門家によるサポートが行われます。

・家庭環境の改善支援

子どもの家庭環境の改善を図るために、親や保護者に対する支援や指導を行います。具体的には、親子関係の修復や家庭内の問題解決を目指したカウンセリングや、親が適切な養育方法を学ぶためのプログラム提供などがあります。

・長期的な保護措置の検討

家庭内での問題が深刻であり、子どもの安全が長期的に確保できないと判断された場合、児童相談所は一時保護期間中に子どもの最善の利益を考慮し、長期的な保護措置や養育環境の整備を検討します。これには、養育施設や里親制度の活用も含まれます。

・生活環境と教育の提供

一時保護期間中には、子どもの生活環境や教育の提供にも注意が払われます。子どもが安心して過ごせる環境を整えるとともに、学業の継続や社会的なスキルの向上にも配慮します。これにより、子どもが将来的に自立できるよう支援します。

一時保護の流れ

・通報から一時保護まで

子どもが危険な状況にあると感じた場合、誰でも児童相談所に通報することができます。通報を受けた児童相談所は、直ちに家庭訪問や聞き取り調査を行い、状況を確認します。

児童相談所がどのような手順を踏んで一時保護に至るのか、↓の資料でわかります。
URL:図5 厚生労働省 アセスメントフローチャート / アセスメントシート

2.一時保護の速やかな実施(抜粋)
この場合の「速やかに」は、何時間以内などのといった具体的な期限を示すものではないが、事例によっては直ちに安全の確認、緊急保護の必要な場合もある。

通告の段階で特に緊急性が予測される場合などには、直ちに対応すべきであるが、生命に関わるなど重大な事件が発生する前の対応を進める上で、休日や夜間に関わりなくできる限り速やかに対応する事を原則とすべきである。

厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」第5章

調査の結果、子どもが緊急に保護される必要があると判断された場合、一時保護の措置が取られます。この際、子どもは一時保護所など、安全な場所に一時的に避難させられます。一時保護は、子どもの安全を確保するための緊急措置であり、家庭に戻る前に必要なサポートやケアを提供するための時間を確保するものです。

ちなみに、通告からの対応にはいわゆる「48時間ルール」が存在します。

3. 調査の開始(抜粋)
なお、安全確認は、児童相談所職員又は児童相談所が依頼した者により、子どもを直接目視することにより行うことを基本とし、他の関係機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケースを除き、通告受理後、各自治体ごとに定めた所定時間内に実施することとする。当該所定時間は、各自治体ごとに、地域の実情に応じて設定することとするが、迅速な対応を確保する観点から、「48時間以内とする」ことが望ましい。

厚生労働省 児童相談所運営指針代第3章第3節

通告があった場合には直ちに対応が必要であるということ、その対応で救われる子どもがいる、ということは理解しています。
ただ私たちのように「疑い」だけで子どもたち2人を一時保護されてしまった立場としては、児童相談所長が(裁判所の司法審査なしに)子どもを保護するか決定できるというのは、裁量の幅が広すぎるようにも感じてしまいます…。

・一時保護開始〜一時保護中

一時保護の決定後、児童相談所は子どもに対する支援計画を立てます。この計画には、子どもが必要とする医療、心理的支援、教育などが含まれます。また、親や保護者との面会や連絡の方法についても定められます。子どもが家庭に戻るための条件やサポート体制も計画に盛り込まれます。

一時保護の期間中、児童相談所は子どもの状況を定期的に評価し、家庭に戻すための準備を進めます。具体的には、親や保護者との面接や家庭訪問を通じて、子どもが安全に戻れる環境が整っているかを確認します。また、必要に応じて親や保護者に対する支援やカウンセリングを行い、子どもが再び危険な状況に陥らないようにします。

一時保護の期間が終了する際には、児童相談所は子どもの状況を総合的に評価し、保護の解除を決定します。この評価には、子どもの身体的・心理的な状態や家庭環境の変化が含まれます。保護が解除された後も、児童相談所は引き続き家庭訪問や面接を行い、子どもの安全と福祉が確保されているかを確認します。また必要に応じて、保護期間の延長や新たな措置が検討されます。一時保護の終了時には、子どもが安全に家庭に戻るための準備が整えられます。

・一時保護解除

一時保護の解除は、子どもが安全に家庭に戻ることができる状況が整ったときに適用されます。

まず、子どもが一時保護の期間中に安全で健康な状態に回復していることが前提条件です。医療機関や心理カウンセラーの評価を基に、子どもの身体的および精神的な健康が確認されます。次に、家庭環境の改善が重要な要件となります。親や保護者が子どもを安全に育てる能力を回復し、家庭内の問題が解決されていることが求められます。

また、親や保護者が児童相談所の提供する支援やプログラムに積極的に参加していることも解除の要件です。これには、親子関係の改善を目的としたカウンセリングやトレーニングプログラムの参加が含まれます。親が子どもに対して適切なケアを提供できることが確認される必要があります。

さらに、子ども自身の意見や希望も考慮されます。子どもが家庭に戻ることを望んでいる場合、その意思を尊重しつつ、最終的な判断が下されます。ただし、子どもの安全が最優先であるため、家庭に戻ることが危険と判断された場合は、別の措置が検討されます。

一時保護の解除要件は、子どもが再び危険な状況に置かれないようにするための重要な基準です。児童相談所はこれらの要件を厳密に評価し、子どもの安全と福祉を最優先に考えた判断を行います。

一時保護の期間

一時保護の期間は、通常、子どもの安全が確保されるまでの期間です。法律上は原則として2か月以内とされており、この期間内に子どもの安全な環境を確保するための措置が講じられます。しかし、状況によってはこの期間が延長されることもあります。

子どもにとっても大人にとっても、保護される側からしたら1日でも長いですよね。
2ヶ月は気が遠くなります…

2.一時保護の期間、援助の基本(抜粋)
(1) 一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。

(2) 一時保護の期間は2ヶ月を超えてはならない。ただし、児童相談所長又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、引き続き一時保護を行うことができる。

厚生労働省 児童相談所運営指針 第5章第1節2

この延長に関しても、明確な基準は定められていません。基本的に「保護者の同意が必要」としながら、不同意の場合でも家庭裁判所の審判により認められれば、延長できてしまいます。
家庭裁判所に審判を求めた場合、裁判が終わるまで子どもは一時保護が解除されません。そしてこの裁判自体が、2ヶ月かかることもザラにあるようです。

一時保護解除後の対応

一時保護が解除された後、児童相談所は子どもが安全な環境で生活できるように支援を継続します。この支援には、家庭訪問や面接を通じて子どもの状況を監視し、必要な支援を提供することが含まれます。

まず、子どもが家庭に戻る場合、児童相談所は親や保護者に対してサポートを提供します。これには、子育てに関する助言やカウンセリング、必要なサービスの紹介などが含まれます。また、家庭内の問題が再発しないように、家庭全体に対する支援プランを策定し、実施します。必要に応じて、地域の支援機関と連携して、子どもと家族をサポートします。

一方、家庭に戻ることが難しい場合、児童相談所は他の保護措置を検討します。例えば、里親制度や養子縁組など、子どもが安全に成長できる環境を提供するための選択肢があります。これらの措置が取られる際には、子どもの意見や希望を尊重し、最適な環境を選定します。

さらに、児童相談所は子どもが適切な教育や医療サービスを受けられるように支援します。学校や医療機関と連携し、子どもの健康や教育の面でもサポートを行います。これにより、子どもが安心して生活し、健全に成長できるようにします。

では、実際まこととすずの場合の対応はどうだったのか。
次回の記事でお話しできればと思います。


警察に囲まれた時の話はこちら↓


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