~1月お菓子教室より~ヨーロッパ新年のお菓子とLa galette des rois ガレットデロワ
La galette des rois ガレットデロワ
明けましておめでとうございます。
最近は日本でも知名度が上がってきました。1月のフランスの定番の伝統菓子。キリスト教の祝日である、Epiphanie(エピファニー) 公現節=jour des Roisの際に食べられるお菓子ですが、1月中はいつでも買うことができます。1月6日がエピファニーの日とされますが、フランスでは6日前後の日曜日に祝う。今年(2023年)は1月8日(日)。
日本で紹介が進むガレットデロワですが、そのお菓子が現地でどのように売られているか。また、どういう風に楽しんでいるのか知らずにこのパイ菓子を食べている方も多いのではないでしょうか。
今回(1月)の教室では、簡単なクリーム作りからパイの成形、模様付けと焼成作業を一通り皆さんにして頂きました。
ガレットデロワの食べ方
食べ方の正しいルール。それは、カットしたガレットデロワを、一番年の若い人が目隠しなどをして取り分け、配分すること。また、年の若い人から選んでいくルールも経験したことがあります。
今回は後者のルールで選んでもらいました。お菓子の中に入ったフェーブが当たった人が、王様に選ばれます。(フェーブの詳しい内容は後述)
ガレットデロワの起源
フランス語のEpiphanie(エピファニー)は、Epiphaneia ギリシア語「出現」から。「出現」という単語。いったい誰が現れたのだろうか。
それは、東方からの三博士のことを指す。民間伝承でしか名前は残されていないが、メルキオール、バルタザール、カスパールの3人がそれぞれ、「黄金」・「乳香」・「没薬」の3つの贈り物を携えてキリストの誕生を祝いに訪れる。そこで3人はキリストに従臣の誓いをたてたといわれる。このエピソードに基く祝祭日となっている。
ローマ時代からの風習
古代ローマではクリスマスは元々、太陽が光を取り戻す冬至に際にお祝いをしていた。それが「サトゥルヌス祭」である。それがキリスト教の布教と共にキリストの生誕の祝日へと変化していった経緯がある。ローマのお祭りではくじ引きで「博士」ならぬ権力者を選び、数時間だけ選ばれた者のいうことを何でも聞くというルールも存在した。現代のガレットデロワに通じるものが約2000年前から存在することは驚くべきこと。
ガトーデロワgâteau des roisとガレットデロワgalette des rois
フランス語は北のオイル語、南のオック語が合わさりできた言語だ。フランスは、南と北でざっくりと文化が分かれるように感じる。例に挙げるならば、北は乳製品のバター文化、南はオリーブオイルの文化であるなど、油分にも違いが出る。
そんな中、今回紹介したガレットデロワは北(主にロワール川以北)で食べられるエピファニーのお菓子。では南はどうなのか。南仏方面では、ガトーデロワと呼ばれるブリオッシュタイプのフリュイ・コンフィ(フルーツの砂糖漬け)が飾られたお菓子(パン)が食べられる。
また、日本ではパイタイプのアーモンドクリーム入りfrangipane(フランジパーヌ)が主に紹介される。フランスではフランパジーヌと共にブリオッシュタイプのガレットデロワも売られ、どちらが好きか良く聞かれたものである。
対して南はガトーデロワ。果物の生産量が多い南仏ではフリュイ・コンフィが名産品。果物を砂糖と共に煮詰め、水分を糖分に変えていく。この砂糖菓子をふんだんに使用して作るものがガトーデロワである。生地はブリオッシュタイプのものになっている。
前述したが、エピファニーは元々太陽の復活を祝うサトゥルヌスのお祭りが変化したもの。ローマの頃より太陽の形である丸形のお菓子が作られていた。それが時代と共に王の権威を表し、冠を象徴するものに変化したのだった。ブリオッシュタイプのガレットデロワには、クーロンヌ(冠)ブリオッシュと呼ばれるものもある。
フェーブfève
ガレットデロワの中に入れられる小さな陶器の人形のことである。
このフェーブが当たったものに王冠が与えられ、王様の称号が得られる。
元々フェーブとは、「そら豆」のこと。その形は胎児の形を表していたとも言われ、生命や繁栄の意味のあったとのこと。
陶器になったのは割と最近のこと。始めはそら豆であったフェーブも、時代と共に変化してきた。貴族たちは宝石を入れていたときもあるそうだ。
新年のお菓子として紹介したガレットデロワだが、文化的には新年を祝うというよりもキリスト教の祝日を祝うお菓子となる。しかし、ガレットデロワはフランスの1月を彩る伝統菓子。キリスト教徒などの宗教を問わず、みんなが待ち望むお菓子である。
伝統菓子を通して
生徒さんからこのような質問を受けました。「1月以外に行ったらこのお菓子は買えないですか?」という質問でした。
フランスでは1月のエピファニーのガレットデロワや4月のポワソンダブリルのパイ。季節の旬の果物を使ったタルトなど、「このお菓子が並ぶ季節だな」という季節感や楽しみがあります。
勿論日本でも栗やりんごなど、季節感を味わうお菓子もありますが、それと同時に1年中買うことのできるお菓子や、大量生産品のお菓子が多すぎる気がしてしまうのです。
好きなお菓子だからこそ大事にしたい。それがわたし自身の思いでもあります。
わたし個人の考えであり、歴史を調べて思うこと。それは、元々お菓子は食事のプラスアルファとして付くもの。精神的な喜びを補うものという認識でいます。
お菓子は見た目も華やかで甘く、とても魅力的なものです。お菓子が簡単に安く手に入る現代だからこそ、自分の食べる好きなお菓子のことにもっともっと興味を持って頂きたいと思います。
新年のお菓子の話はまた別に。
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