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【迫真エッセイ】転職と苦悩の話⑤

荒れ狂った会社という世界を、虚勢というモメンタムで前進していた僕は、FIT&GAPを繰り返す中で得た教訓を、読書という後ろ盾をもって自分のものにして突き進んでいた。

回りくどい言い方をしたが簡単に言うと、色々あってノリノリだった

プロダクツの開発というものは要素が多い。部品ひとつにしても様々な工法があり、そこに無数のノウハウがある。またBtoC、つまり一般ユーザー向けの商品だったためデザインやUXの概念があったこともより設計を難しくしていた。

それなりに経験を積まなくてはリーダーは務まらない。そんな中、僕に新商品のプロジェクトリーダーをやってくれないかとご指名が入る。

それは同期の中で最速の就任を意味していた。


■満を持して

人は未知の世界へ自分の身を投げ入れるとき、得てして恐怖心を感じる。武者震いがする、とも言う。自分自身が初めて商品開発のリーダーになった時、自分でもびっくりするぐらい心は凪であった。

理由はひとつ。それなりの経験をしてきたからに他ならない。


入社以来、僕のモットーだった「虚勢」と「前向き」はいつもセットだった。つまり僕は与えられたほとんどのミッション(それは本来僕の仕事ではないものも含む)(ちなみに僕の仕事ではないことは後に気付く)を、虚勢を成立させるために受け入れてきた。

とあるプロジェクトで死ぬほど働いてひと段した翌日、トラブル真っただ中の隣のプロジェクトの会議議事録がメールボックスに届いた。「待ってたよ。こっちを手伝え。」という訳だ。

また休暇前日、23時に飲み屋で電話が掛かってきて「明日の8:30に新大阪に行って欲しい」と命令されたこともあった。それは話したこともないやつの失敗のリカバリー、つまり尻を拭くためだった。

とにかく僕は四の五の言わずものすごい濃度で仕事をこなし、おかげで同年代の誰よりも経験を積んでいた。
積んだだけではない。たくさんのリーダーと一緒に仕事をすることで、自分だったらこうするな。とか、このやり方は良いな。とか。たくさんの教師と反面教師に触れ合うことで、自分なりのロジックが自然と出来上がっていたことがデカかった。

そして、リーダー就任。

僕には既にやってみたいことがたくさんあった。
これまで自分だったらこうするかな、と思っていたことを、満を持して一気に解放したのである。


■飛ぶ鳥を落とす

今思えば多少・・・いや大いに自己中心的だったかもしれない。時代が時代ならパワハラフラグが立っていたかもしれない。
現状維持大好きなネガティブじじい達は会議で一刀両断した。自分の考えが絶対に正しいと譲らず、多くのメンバーを巻き込んでその方向に突き進んだ。

しかし、

奇跡的にというべきか、やはりと言うべきか、リーダーになってずっとやってみたかったことは、ことごとく嵌まった。結果が伴えばメンバーの目の色も変わってくる。

目の色が変わってくれれば僕も任せたくなる。メンバーたちは自信を持つ。このプロジェクトに関わっていることを誇りに思うようになる。全ては好転を始めていた。結果オーライである。


不思議なものだ。

プロジェクト始動時に反発が強かったメンバーほど頼りになってくる。もともとしっかりとした考えを持っているから反発出来るとも言える。腹落ちしてもらい、結果が伴い始めるととても心強い味方になってくれた。


振り返ると、僕の信念はいつ何時も迷いがなかった。それが良かったのかな、とも思う。

でもそれは10年ほど掛けて鬼のように経験を積んだ賜物だった。成功体験を経て、僕はこの因果関係をすっかり忘れてしまっていた。

後に僕は大きな過ちを犯す。

結果さえよければ人はついてくる。この成功体験に縛られて、確固たる信念も無いのに自分の主張を押し通し、ただただ敵を作っていくのである。




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成功は、どん底への入り口。続く。




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